ブックタイトルメカトロニクス8月号2013年

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概要

メカトロニクス8月号2013年

50 MECHATRONICS 2013.8日本産業洗浄協議会専務理事 相模環境リサーチセンター 所長 小田切 力東アジアにおけるモノづくりと環境のマネジメント~高桑教授によるJSPS アジア研究教育拠点事業(2)~【第137回】 財団法人日本学術振興会は、アジア研究教育拠点事業(JSPS Asian CORE Program)の一環として、2008年度から5ヵ年の計画で“東アジアにおけるモノづくりと環境のマネジメント(Manufacturing andEnvironmental Management in East Asia)”と銘打ったプロジェクトを取り上げた。本プロジェクトは、名古屋大学の高桑宗右ヱ門教授の指導の下に5年前に開始され、本年の3月末に終了した1)。前回は、本プロジェクトの概要を紹介したが、今回はそのプロジェクトの成果として発行された2冊の研究報告書を紹介する9,10)。 同書の執筆者は、各セミナーで発表を行ったメンバーであり、各種専門分野の大学教授が多数を占めているが、モノづくりと環境に関係する民間企業および関連団体に所属する者も参加しており、2冊で総勢41名となり、その多彩な顔ぶれが同書の内容の幅広さを示している。なお、これらの出版物に対する東アジア地区での関心は高く、既に中国語版が中国で、英語版がベトナムで出版されている9,10)。■「東アジアのモノづくりマネジメント」について (1)出版の狙い 出版物「東アジアのモノづくりマネジメント」の狙いは、編者の高桑教授の言葉によると以下の通りである。 “経済成長の著しい東アジアにおいて、製造企業におけるモノづくりを支えるために、日本並びに中国において、長年培われてきた経営管理および技術管理について、理論と実践の両面から論述するものである。従来、世界の工場と呼ばれていた東アジア地域は、いまや巨大な消費地となってきており、アジアワイドのサプライチェーンを構築することが喫緊の課題となってきた。 そのためには、原材料採取から生産、流通、販売、廃棄・リサイクルに至るライフサイクル全体を考慮する必要がある。他方、いくつかの深刻な問題も顕在化してきた。経済活動の活発化によるエネルギー・環境問題への取組みもますます重要になってきており、こうした問題に対しても、国際的な協調が不可欠である。”(2)目次構成 同書の目次構成を以下に紹介する。・第1章 東アジアにおける生産と技術のマネジメント 1.はじめに 2.生産に対する技術のマネジメント 3.グローバル生産における技術経営を取り巻く   諸問題・第2章 グローバルロジスティクスと東アジア諸国の経済状況 1.ガイドラインロジスティクス 2.東アジア諸国の経済状況と経済共同体構想 3.中国における外資企業の実情・第3章 生産と技術の経済学 1.技術進歩と経済成長 2.日本経済の生産性・第4章 経営・ビジネスとイノベーション 1.経営理念の形成 2.イノベーション 3.ビジネス創出とビジネスモデル設計・第5章 生産マネジメントと経済性管理 1.生産管理の進化と発展 ~トヨタ生産方式と   リーン生産方式 2.全員参加の全社的・総合的マネジメント技術の   TOMとTPM 3.マーケティング・第6章 企業情報システム 1.情報システムの発展 2.産業や社会への影響 3.企業ITマネジメント 4.ITガバナンス 5.企業IT戦略マネジメント・第7章 ナレッジと知財のマネジメント 1.ナレッジ・マネジメント 2.知財マネジメント・第8章 生産と環境 1.ものづくり現場の化学物質管理 2.環境経営(3)各章の概要 編者の高桑教授は、各章の概要について、“はじめに”に解説されているので、その一部を以下に紹介するが、全体の内容について、高桑教授は“はじめに”でこう説明している。 “本書の内容は大きく2つの部分で構成されている。前半では、東アジアにおける経済とグローバルロジスティクスについて、包括的に論述し、続いて、イノベーション、技術、経営理念、ビジネスモデルなどについて、経済学ならびに経営学の観点から論述する。 後半では、生産と技術のマネジメントの各論について、特に生産マネジメント、TQM、マーケティング、IT(情報技術)、ナレッジと知財のマネジメントについて論述する。そして、生産と地球環境、環境経営について述べる。”・第1章 東アジアにおける生産と技術のマネジメント 東アジア域内における経済的な結びつきがますます深まってきており、アジアワイドで調達・生産・・流通を含めたグローバルなサプライチェーンの構築に対する必要性が高まってきた。第1章では、経済と貿易の状況を概観したうえで、生産と技術の産業界マネジメントについて論述し、モノづくりの技術経営を取り巻く問題について考察する。・第2章 グローバルロジスティクスと東アジア諸国の経済状況 第2章では、はじめに資源やエネルギーの開発・調達について概観したうえで、国際輸送、特に海上輸送やコンテナ物流の現状について述べる。次に、マクロ経済学的な視点から東アジア諸国の経済状況について現状を分析する。ここでは中国、日本、韓国を中心とした1980年以降のデータを使い、GDPや国際収支等の経済指数のへんせんについて考察を進める。・第3章 生産と技術の経済学 第3章では、はじめに、技術進歩と経済成長との関係について、経済学の理論的側面から議論を行う。日本経済の80-90年代の生産性変化を理解するために、生産性変化の要因分解分析を行う。そこで、生産関数を用いて効率性要因、技術進歩要因、規模効果要因などに分解する方法について述べる。・第4章 経営・ビジネスとイノベーション 第4章では、さまざまな国籍、民族の多様な文化の中で育った従業員に対し、企業活動の考え方を明確に示すため、経営理念や経営倫理の役割が高まってきていることから、経営理念や経営倫理、そこから具体化する経営戦略などの定義や役割について述べる。イノベーションを単に発明発見に限定して捉えるのではなく、『経済システムにおいて新たな価値を創造する活動』、つまり経営を維持、発展させるための活動の革新と広義に定義し、それらに関わる方法論について述べる。さらに、「ビジネスモデル」という概念を「持続的な収益構造」であると定義し、顧客価値の提供・顧客層の選択・事業領域の選択・コスト構造の明確化・企業間ネットワークの構築・競争戦略の立案・技術と市場の仲介といった主要な機能があることを指摘する。 そして、社会経済的な制度設計においてもビジネスモデル的思考を発展させた「経済モデル」概念が重要であると提言する。・第5章 生産マネジメントと経済性管理 第5章では、リーン生産の誕生と発展の系譜について紹介し、その基本理念と5つの基本原則、リーン生産方式と伝統的生産方式との比較を論じたうえで、リーン生産方式の技術体系の概要を述べ、その主要な手法を紹介する。 次に、TQMとTPMは、ともに日本的マネジメントで育んできた方法論であり、両者が相互補完的で、アジア諸国の企業でも適用可能で有効な方法論として構成するとともに、統合可能であることを述べる。さらに、マーケティングコンセプト、戦略市場計画におけるマーケティングの位置づけについて紹介する。そして、グローバルマーケティングを考える際に有用な概念である国民性とマーケティング戦略の関係についていくつかの実証研究の結果を紹介する。・第6章 企業情報システム 今日の高度情報社会では、IT(情報技術)およびこれにより構築される情報システムは、産業ならびに社会に対して多大な影響を及ぼしている。第6章では、このことを念頭に置いて、企業における情報システムについて述べる。・第7章 ナレッジと知財のマネジメント 第7章では、はじめにナレッジ・マネジメントの代表的アプローチである組織的知識創造理論を概説し、次いで、知的財産(知財)のマネジメントについて、技術情報などの権利化を含め、東アジアの企業の動向をふまえつつ考察する。・第8章 生産と環境 企業の環境問題への対応は、地球規模の環境問題が話題になっている現在、ますます複雑になり、多様化している。現代は、モノづくり現場をかかえる企業は、最終製品の安全性と環境負荷を保証中の影響を厳しく管理することが求められる。 第8章の中では、「ものづくり現場の化学物質管理」を特に取りあげ、国際的な話題の経緯と新しい動きを紹介する。また「環境経営」では、特にマテリアルフローコスト会計注1)について述べる。(注1)マテリアルフローコスト会計:Material Flow Cost Accounting、MFCA。製造プロセスにおける資源やエネルギーのロスに着目して、そのロスに投入した材料費、加工費、設備償却費などを“負の製品のコスト”として、総合的にコスト評価を行なう原価計算、分析の手法。■「モノづくりと環境のマネジメント」について(1)出版の狙い 出版物「モノづくりと環境のマネジメント」の狙いは、編者の高桑教授の言葉によると以下の通りである。