ブックタイトルメカトロニクス8月号2013年
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メカトロニクス8月号2013年
10 MECHATRONICS 2013.8 御社の概要についてお聞かせ下さい沢田:当社は2010 年7月13日に設立し、今年で4 年目を迎えます。設立当初より、東京都立産業技術研究センター(多摩テクノプラザ)内にあるラボの一室を借りて事業を行っており、社員はまだ私一人ですが近々採用募集の準備を進めようと考えています。またこのラボは、同センターが推進する事業の一つで、企業がもっている技術を製品/事業化するために、必要な研究/実験/試験を行えるレンタルスペース「製品開発支援ラボ」になっています。 事業内容としては、電気を接続するために必要なコネクタなどの設計/製造/販売を行っています。具体的に説明しますと、例えば真空中で使用できるコネクタや高温の中で使用できるコネクタなどは世にほとんど出回っていませんが、そういう状況の中で「電圧はこれくらいの電圧で、何極で真空中にもちこみたい」といったお客様からのニーズにより、真空/高温環境などの特殊用途に対応したコネクタなどの電気接続部品を特注で設計/開発しています。私自身、前職で特注品のコネクタを設計/開発する仕事に就いており、もう少し製品開発に特化した仕事を行いたいということから、独立を決め当社を起業した経緯があるので、研究開発型の企業を目指しています。 また当社は、ファブレスの形態を取っており、協力会社は組み立てまで行ってもらえる2 社が中心になっています。そして、業界での豊富な経験に基づく提案力/設計から評価まで短時間で行う行動力/問題因子を明確にする分析力といった特徴を活かし、今までに開発した実績としては、鉄道車両搭載のコネクタ/家庭用電力メータ内部のコネクタ/ GIS、遮断機などに使用される大電流コネクタ/理化学機器、分析装置、半導体製造装置などに使用される特殊コネクタなどの電気接続部品といったものが挙げられます。 さらに、当社のコア技術となる水銀不使用の新しい構造による次世代タイプのロータリコネクタ(回転型コネクタ)を開発し、現在はその改良に取り組んでいます。また、このロータリコネクタは、東京都中小企業振興公社の「平成23年度新製品・新技術開発助成事業」の対象製品に認定されています。 電気を接続するために必要なコネクタなどの設計/製造/販売を行っている株式会社ヒサワ技研。東京都立産業技術研究センターが推進する事業の一つ「製品開発支援ラボ」を利用し、水銀不使用の新構造ロータリコネクタを開発した同社の概要と技術、製品などについて、代表取締役沢田 博史 氏にお話しを伺った。株式会社ヒサワ技研代表取締役沢田 博史 氏環境保全に貢献する水銀不使用のロータリコネクタ~真空/高温環境など特殊環境に対応~ 御社のコア技術となる水銀不使用のロ ータリコネクタについてお聞かせ下さい沢田:まずは、ロータリコネクタの概要からご説明させて頂きます。ロータリコネクタは、固定部と回転部間の電気接続を行うための製品で、半導体製造設備など産業機械に幅広く使用されています。 ロータリコネクタの開発において、「固定部と回転部の境界線をどうするか」ということが一つのポイントになっています。従来の技術では、カーボンブラシ/板バネ/ワイヤー式といった擦らして電気を通す摺動式(スリップリング)と、水銀を使用して電気を通す水銀式の2パターンがありました(図1)。水銀式の方が接触抵抗が低く、通電面が磨耗しないといった利点があるのですが、水銀を使用するということから環境面での問題を抱えています。 近年では、水銀汚染防止に向けた国際的な取り組みが強化されており、その柱の一つとなる「水銀条約」は、今年の10月9日から11日まで熊本市と水俣市で条約の採択/署名のための外交会議が開催されます。それにともない、特にめっき関連の装置メーカーやその装置を使用する末端のセットメーカーなどでは、水銀の使用を無くすための取り組みなどが急速に進められている状況です。 当社のロータリコネクタは、そういった環境問題に対応するため、水銀を使用しない新たな構造を採用した製品になっています。構造としては、「ローラ集電子」と呼ばれるものを回転軸の周りに少し撓ませて配置し、回転軸が回るとローラ集電子が遊星運動を行い、それにより常に安定した電気が流れる回転接続構造になっています(写真1)。ただ、この構造自体はそれほどめずらしくはなくて、結構すぐに考えつくものなのですが、実際に常に安定した電気が流れるような形にするところが非常に難しく、苦労したところでもあります。すでに、20 年ほど前からこのような構造にすれば電気が通せるというような特許がいくつか出願されていまし回転軸回転軸ローラ集電子ローラ集電子固定側固定側カーボンブラシ式板バネ式摺動式(スリップリング) 水銀式ワイヤー式水銀回転軸(導電部材)固定側(導電部材)図1 ロータリコネクタの従来技術写真1 開発したロータリコネクタの構造