ブックタイトルメカトロニクス7月号2013年
- ページ
- 52/60
このページは メカトロニクス7月号2013年 の電子ブックに掲載されている52ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。
このページは メカトロニクス7月号2013年 の電子ブックに掲載されている52ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。
メカトロニクス7月号2013年
52 MECHATRONICS 2013.7《第51回》2 設計から始めよう(その49)表2-44 レンズ拡散板LSD(Light Shaping Diff users)の概要 2-108)図2-189 LSDの使用効果図2-190 半値幅の採り方による光束の配光曲線の変化5.側射型照明装置(2)充実型側方照明(エッジライト)方式⑯散乱・拡散シートⅳ 回折シート(その10) 液晶表示装置のバックライトを構成する部材のほとんどは日本の技術で開発されてきた。光源からの光線束を均等に配分する導光板を中心にして、反射シートや偏角シート、拡散シートなど繊細な思考により長期の年月を経て育成されてきた。ここに最後に来て回折シートが外国生まれとして登場し、日本で大変な努力によって認知されてきた。それは1985年に設立されたPhysical Optics Corporation(米国カリホルニア)がLSD:Light Shaping Diff userと呼称して製品を開発し、程なく日本のNABA社(現・オプチカルソリューションズ)がレンズ拡散板と名付けて商品の育成に熱心な努力をされたものである。表面に微細な凹凸が形成されたシートは、単なるすりガラスをプラスチックシート材料に変身させたものとしか認識されなかった時期である。 レンズ拡散板の商品概要でこの特徴が紹介されている(表2-44)。これによると、製法はもとより機能や作用効果は只者ではない。しかし、レンズ拡散板の良質な特徴は皮相的に眺めるだけでは容易には納得できない。シートの表面に形成された微細な凹凸は一つ一つが光線束を回折させる開口に相当し(既出表2-25)、隣接する開口が互いに干渉しあって(既出表2-26)、本来の射出方向とは異なる方向へ光線束を偏角する(既出表2-27)と技術論的に理解してゆくのである。その視点に立てば、この微細凹凸はホログラフィ製法でシートの表面に形成されている “surfacerelief holographic grating”なのである(既出表2-28)。技術開発の初期には体積型ホログラムで研究し始めたが、効率を高めるために表面形成型ホログラムに研究方針を替えていったという。 LEDの真直ぐな光線をレンズ拡散板LSDに当ててみると、LSD固有の拡散角に応じて透過光線が拡散する(図2-189)。固有拡散角が広いLSDを使用すると正面の照度は当然ながら低くなる(図2-190)から、使用目的に合わせてLSDの種類を選択するのが好い。 シートが単なる平行板の場合であれば、無駄な方向にそのまま放出される0次光線もあろう。しかしレンズ拡散板の表面には微細な凹凸が形成されている。約5nmのサイズと説明され、開口間隔は光線の波長に対応して1~2倍が適切であろう(既出表2-27)。粗い開口では回折角は小さく、微細な開口間隔では回折光は大きく偏角する。その開口形状は、凸レンズと凹レンズとが連続交替して正弦波振幅格子を成している(図2-191)。正弦波振幅格子は、照射光線が直進する0次光線のほかに、1次回折光線しか放出しない。つまり2次光線より以上の偏角が大きい回折光線は発現しない。1次回折光線は回折法線(既出表2-33)に対する回折角が小さいので、照射光線は確実にシートの正面から放出し、照射効率が高くなる。 ここで正弦波振幅格子(既出表2-28)であっても開口間隔つまり振幅周期が一定であれば、1次回折角が揃いすぎて放出光線束に単色が並んだ虹色に染まるであろう。しかしこのレンズ拡散板の振幅周期はランダムに形成されている(図2-191)ので、多様な角度の回折光が入り混じり、放出光線束が十分に混合し、色収差(既出表2-42)が発生しない。照射光線束がそのままの白色光で放出し続ける。まさしく利口な機能である。 製品を開発したPOC社はLSDの多様な用途を紹介している(図2-192)。屈折レンズに回折格子を複合した素子を回折レンズと呼ぶ(既出図2-43)と同様に、LSDを積層したシートはまさしく“回折シート”と称される。拡散角が縦方向と横方向とが異なるLSDも存在するのも重宝だ。スクリーンへの適用では、縦横方向への拡散角を適切に選択することによって看視者に最も必要な視域が与えられ、最高に明るい画像を堪能できる。単なる拡散スクリーンでは横方向に対して縦方向へ広がりすぎて無駄な映写となるであろう。同様な原理で液晶表示装置のバックライト構成部材にLSDを併用すると、画面の輝度を均等化するとともに、必要な輝度を向上できる。 用途に対して最適な拡散角γのLSDを選択するには、照射光線束に応じて所定の放出角βを想定して求める。実用計算式は β=(α2+γ2)1/2。開口間隔がランダムなLSDであるから、この数式が成り立つ(図2-193)。若し単一な回折格子であれば、回折方程式(既出表2-39)により sinβ=sinα±sinγ になり、照射光線の広い角度領域には活用できない。総括すると、LSDを有効に活用するには使用目的を正しく設定することである(図2-194)。【参考文献】2-108) 「一般的なホログラムの特性」physical Optics corporation,Holonix Corporation 1995、 高橋邦明「ビーム整形デフューザー」㈱ナバ(現・㈱オプティカルソリューソンズ)19982-109) 「レンズ拡散板を使ったLED照明ムラ解消技術」Luminit LLC 2007、㈱オプティカルソリューションズ2011、「集光とムラの解消を同時に実現」㈱オプティカルソリューソンズ20112-110) 「Optical Solutions For OEM Application」Physical Optics Corporation、㈱オプティカルソリューソンズ20012-111) 「レンズ拡散板LSDの概要」㈱オプティカルソリューションズ20112-112)カタログ「ホログラフィクディフューザ」エドモンドオプティクス20012、その他2 設計からはじめよう(その50)