ブックタイトルメカトロニクス6月号2013年

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概要

メカトロニクス6月号2013年

MECHATRONICS 2013.6 13所 在 地:U R L:事業内容:愛知県豊橋市http://www.dsptec.co.jpシミュレータ関連製品の開発/設計、販売など。ディエスピーテクノロジ株式会社・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・しかし、線形による制御では限界が見えてきていたので、制御自体これからどうするのかというような停滞期になっている状況でした。そういった中、JSOLが開発した電気機器の設計/開発のためのシミュレーションソフトウエア『JMAG』が注目を集め、モータモデル自体がこの製品を使用したモデルに置き換わろうとしていた時でもありました。 私自身、こういった電磁界解析の研究にも携わっており、またJSOLともお付き合いがあって、同社が主催するユーザー会では講演を依頼されるなどよく出席していました。JMAGが、色々な良い条件で解析できるということで、モータ制御の方はどういったことをやっていけばいいのかということを探している段階でもありました。そのような時に、ディエスピーテクノロジ(以下、DSP 社)さんがこのユーザー会のカンファレンスに出展しており、JMAGでつくったモデルが簡易的にDSP社製のリアルタイムシミュレータで起動させることができることを知りました。それにより、これは何か面白いことができるかもしれないと思い、私の方から一緒にやりませんかというお願いをしたのが、共同研究の始まりになります。 最初の1 年ほどは、バーチャルモータを使わせて頂きながら色々と勉強するとともに、バーチャルモータを上手くつくるためのノウハウを蓄積していき、2 年目以降は次のステップで制御のモデルとして使用していきました。つまり何をやろうとしたかというと、本物のモータとバーチャルモータがあって、この2つのモータがまったく同じ特性であれば仮想的にバーチャルモータを制御して、その結果を本物のモータに反映して動かせば、本物のモータから何の信号も得ないで制御ができるようになるのではということを思いついて、その研究を行い始めたのです。 ちょうどその頃、モータの問題点が小型化やパワーを出すことから、騒音や振動を抑えるというニーズに移り変わってきており、PMモータのような永久磁石のモータが振動を起こす原因として、トルクリップルが挙げられていました。しかし、このトルクリップルを検出するのも難しいし、計算で得るのも難しいとされていました。ところが、本物のモータと同じようなバーチャルモータを使用すれば、計算した値なども反映できますし、値さえ検出してしまえばそれを制御することもできます。そのようなことで、バーチャルモータを一種のセンサとして使用し、本物のモータを動かす研究を行っていきました(写真1、2)。また、最近注目を集めているレアアースを使用しないSRモータにおけるトルクリップルの低減にも繋げることができました。 本物のモータではなく、バーチャルモータをコントローラに入れることで、今までできなかった制御ができるようになったということが、今回の共同開発となる「PMモータおよびSRモータのトルクリップルを低減できるコントローラ」の大まかな概要になります。 本開発のハードウエアとなるリアルタイ ムシミュレータについてお聞かせ下さい藤井:赤津准教授とお会いしたばかりの頃のモデルは、まだまだご要望に沿うことができるレベルではなく、徐々に改善していくことで今回の開発に繋げることができました。その改善したモデルが、リアルタイムシミュレータ『LT-RTSim-II』になります(写真3)。 この製品は、MathWorks社のMATLAB/Simulinkで作成したシミュレーションモデルをステップサイズに基づいた実時間(リアルタイム)で動作させることができるリアルタイムシミュレータです。現在、各種要素技術と連携し、Full Electric Vehicle のリアルタイムシミュレーションを可能にします(写真4)。特徴としては、①シミュレーションのステップサイズは最高100KHz(10μsec)(ただし、モデルサイズに依存する)、②CPUはPentium M 1.8GHzを使用、③サイズ:(W)431×(D)370×(H)149mm、④電源:AC100V/ 250W、⑤μsecの周期で動作するシミュレーションへの対応はアクセラレータを使用して可能である、⑥リアルタイムシミュレータのCPUとアクセラレータのマルチCPU 構成によるリアルタイムシミュレーションが可能であり、マルチCPU 構成時シミュレーションのモニタリングも可能である、⑦アクセラレータの専用ブロックライブラリ『DT-1020EX LIB』(オプション)を提供している(写真5)、⑧ LT-RTSim-IIには、次の様な入力/出力を行うハードウエアを用意しており、それらの入力/出力ハードウエアは、Simulinkモデルで動作するブロックライブラリを提供している、1)A/D変換・D/A変換、DI/O(TTL・オープンコレクタ・フォトカプラ)、UP/ DOWNカウンタ、CAN、2)PWMボード(FPGA)、バーチャルモータボード(FPGA)、3)レゾルバ変換器、レゾルバ模擬信号発生器、インバータインタフェースユニット、4)アクセラレータ(FPGA&SH-4A)、A/D&D/Aユニット(アクセラレータ直結)、などが挙げられます。 現状での問題点と今後の展開などにつ いてお聞かせ下さい藤井:今回の共同研究もそうですが、赤津准教授が考えられていることは、時期的に10年くらい先を見据えたことをやっているので、そういった考えを如何に早く世に普及させるかが重要なポイントとになってきます。赤津准教授からは、色々と新しいアイデアを頂いていますので、当社としてもそれをどんどん吸収して、新しい制御の標準に貢献できるようなシステムを構築していきたいと考えています。 また、今回開発したシステムについてもユーザーインタフェースの問題や、システム自体が大きいので省スペースでも使用できるような小型化のニーズを赤津准教授から頂いております。現状では、実験室レベルで使用していますが、製品化されればユーザーとしては自社で開発している製品の試験に使用します。例えば、それが自動車なら今の大きさでは自動車に積めませんので、まとめてコンパクトにした組み込み型のコントローラの研究開発を昨年の8月から開始しています。それに伴い、経済産業省の方に補助金の申請なども行っている状況で、今年の10月頃をメドに提供できるような流れで進めています。さらに、組み込み型コントローラの先の研究開発として、制御用のIC の中にコントローラを入れてしまいワンチップにすることで、さらに使いやすいものにしていきたいと考えています。ここまでいくと、試作品ではなく、ユーザーが使用する製品になっていくと思います。 それから、現状では自動車関連分野に力を入れていますが、今後はロボット関連分野や精密加工関連分野、そして先端医療関連分野など、モータを使う様々な分野に幅広く事業展開していきたいと考えています。赤津:現状日本は国際競争になっていて、日本のモータなどは追いやられる傾向にあります。そこで何をやらなくてはいけないかというと、高品質な製品を低価格で実現させることが課題となっています。そういった時に、今回開発したような付加価値をもっているコントローラなどを世に広めていくことにより、課題をクリアするような優れたモータが世に出てくることが必要だと思いますし、そういったことをやっていかないと国際競争には勝っていけないと思います。 そういったことからも、DSP 社にはどんどん新たなことにチャレンジしながら頑張って頂きたいと思っています。本日はお忙しい中ありがとうございました。写真3 リアルタイムシミュレータ『LT-RTSim-II』写真4 『LT-RTSim-II』と要素技術写真5 『DT-1020EX LIB』アクセラレータで使用可能なブロックライブラリ