メカトロニクス4月号2013年

メカトロニクス4月号2013年 page 52/60

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52 MECHATRONICS 2013.4《第48回》2 設計から始めよう(その46)図2‐187 ホログラム干渉縞の発現表2‐34 回折格子(位相変調式体積形成型)5.側射型照明装置(2)充実型側方照明(エッジライト)方式⑯散乱・拡散シ....

52 MECHATRONICS 2013.4《第48回》2 設計から始めよう(その46)図2‐187 ホログラム干渉縞の発現表2‐34 回折格子(位相変調式体積形成型)5.側射型照明装置(2)充実型側方照明(エッジライト)方式⑯散乱・拡散シートⅳ 回折シート(その7) 前回まで振幅変調型格子(既出表2‐28)から位相変調型格子(既出表2‐32、表2‐33)へと説明してきたが、今回は位相変調式体積形成型格子(表2-34)を論及する。この3つの形式を説明した表を並べて見ると、回折格子の全容が明確に認識できる。光路差を実現するために、格子には濃淡あるいは厚薄を設けたり、鋸波状の断面形状に形成したり、屈折率の差異を分布している。 体積変調式回折格子は、いわゆるホログラフィ光学技術を用いて作製する。透明感光素材に2つの光束(参照光束と位相物体光)を照射して、干渉縞を素材内部に屈折率差異として分布させるため、光束を感光素材の表裏両面から照射した場合は、素材の表裏面にほぼ平行に層状の干渉縞が形成され、反射型ホログラムが作製できる。また光束を感光素材の片面側から照射した場合は、素材の表裏面にほぼ直角方向に干渉縞が形成され、透過型ホログラムになる(図2-187)。 回折格子を作製するには素材内部に規則性のある干渉縞を形成させなくてはならないので、照射する2つの光束は同等の波長と所定の強さを有するべきである。コヒーレント(coherent)光と呼ばれ、レーザ光を重ねて干渉現象を起こし、干渉縞を発現する場面である。 ホログラフィの干渉縞は一般に写真撮影による映像解像力より遥かに細密である。複写用感光フィルムの5~15倍の解像力がある超微粒子の感光材料が用いられる。 記録した感光素材を現像処理すると露光された銀粒子は黒化する。定着処理で未露光の銀粒子は除去されて、干渉縞の明暗に対応した濃淡が、振幅型ホログラムとして記録される。黒化した銀粒子が照明光の一部を吸収するので、この形式のホログラムは再生像が暗い。 露光により黒化した銀粒子を漂白処理すれば透明に戻り、未露光部の銀粒子との屈折率の差異が残る。干渉縞の明暗に対応する位相型ホログラムとして記録され、明るい再生像が確保できる。干渉縞は素材内部に屈折率の差異が正弦波状の分布として保存されるので、照射光束そのものである0次回折光線と±1次回折光束しか発生しないで、回折効率は最高になる(表2-34)。 透過型ホログラムにおいて未露光部分の素材を現像処理で溶解すると干渉縞部分に凹凸が残り、良質なブレーズ回折格子(既出表2-33)になる。マスター品として多数の複製replicaもできる。ホログラムは縞間隔が精確でかつ細密であるから、刻線工作機(ルーリングエンジン)などで機械的に工作した作品よりも高品質な格子に製作できる。 体積形成型回折格子は、基板内に多数の隔壁が形成された構造であるから、多層膜干渉素子の一種であろう。その一対の隔壁膜に注目してみると、入射光線が隔壁の間隙で多重反射して、間隙距離に対応した波長の光線が干渉して放出される現象として理解できる(表2-35)。 多重干渉のうち間隙干渉では、2枚の反射隔壁に固定された綱紐が自由に振動する現象に似ている。無限自由度振動(既出表2-15)の一種であり、弦楽器の弦糸や太鼓の皮膜など周囲が固定されて横振動する状態は目に見えるし、吹奏楽器では内部の気柱が長さに応じて縦振動し、さまざまな音色を出す。振動材を固定している間隔距離Lに比較してその振動波長λは当然ながら非常に短いので、同調する干渉次数m(=L/λ)が多様に存在する。波長λに反比例するので、干渉波が発生する間隔は一定ではない。1次干渉波は隔壁間隔に相当し、2次干渉波はその半分、3次、4次・・・と高次になるにしたがって共鳴の間隔が狭くなる(表2-35)。 また他方の、薄膜干渉では干渉次数mが小さい。そして多層膜の構造は時として自然界で美しく不思議な模様を発見させられる。昆虫の羽の玉虫色やモルファ蝶のきらきら輝く羽、孔雀が大きく広げた羽根の彩り、あわびの貝殻のいわゆる真珠色など、無染色でありながら光線の干渉で発色する構造色である。