メカトロニクス3月号2013年 page 52/60
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52 MECHATRONICS 2013.3《第47回》2 設計から始めよう(その45)表2 -31 ブレーズ回折格子の技術開発5.側射型照明装置(2)充実型側方照明(エッジライト)方式(その27)⑯散乱・拡散シートⅳ 回折シート(その6)....
52 MECHATRONICS 2013.3《第47回》2 設計から始めよう(その45)表2 -31 ブレーズ回折格子の技術開発5.側射型照明装置(2)充実型側方照明(エッジライト)方式(その27)⑯散乱・拡散シートⅳ 回折シート(その6) 回折格子diff raction gratingとは“光の回折を利用してスペクトルを得るために用いる光学素子。平面格子、凹面格子などがある”(JIS Z8120-I66)。また回折格子には、サーフェイスレリーフ格子(表面形成型)とボリュームホログラフィック格子(体積形成型)とがあり、さらにサーフェイスレリーフ格子の開口形成構造として振幅変調型と位相変調型とがある。それぞれの回折格子に対して光線が透過する方式と反射する方式とがある(既出表2-29)。 振幅変調型回折格子(既出表2-28)による正面透過光は回折しない。回折光は横方向へ偏角し、格子全幅Wに対する開口部の広さa(開口率a/W)が狭いので、入射光束に対する回折光束の割合である回折効率は数%にしかならずで、効率を高められない。この難点を改善したのが、透明基板の表面に細密な溝筋を形成したサーフェイスレリーフ回折格子surface reliefgratingの登場である。 回折格子の性能を表す式の一つは、John WilliamStrutt Rayleigh(1842~1919:英、物理学者)が1888年に発想した分光の回折次数mと刻線の総数Nとを因子とする波長分解能:λ/⊿λ=mN である。分解能を高めるため格子面の刻線総数Nを大きくすると、格子サイズが大きくなって装置に収納し難くなり、刻線の間隔を狭めると加工中の工作刃物の寿命が耐えられない。表面形成型回折格子の透明基板表面に鋸波状断面の溝筋を細密に加工したいのであるが、開発初期には適切な加工機がない。そこで平行平面板を少しずつずらしながら重ね合わせていく製作法をA.A.Michelsonは1898年に妙案しエシュロン格子で解決していった。1910年にはR.W.Woodが、ガラス基板に被膜した写真製版用銅板を超硬合金SiC(硬度9.2~9.5)の砕片(劈開角120°)で切削して現在の格子(エシュレット格子)の原型を確立させた。それから半世紀が経ち、第二次世界大戦後には高精度の刻線工作機(ルーリングエンジン)が開発されて、現代ではかなりの性能の回折格子(エシェル格子)が得られるようになってきた(表2-31)。 “エシュロン格子”とか“エシュレット格子”、“エシェル格子”などの用語が日本工業規格で定義されているが、一般には“ブレーズ格子blazed grating”(JIS Z8120-I68)と呼ばれている。echelonとはフランス語で“梯子の横木”の意味で、echelleは“梯子”に接尾語「小さいもの」を付けてecheletteの呼称になったという。また軍隊用語で陸軍歩兵の編隊列や戦闘航空機の巡航列など片側雁行の飛行形式をエシュロンともいうらしい。 さてブレーズ格子を製作する方法は切削による手法の他に、ホログラフィ干渉技法がある。2方向からレーザ光を照射してフォトレジストに干渉縞を記録した後、表面に反射膜を形成したもので、表面に形成された溝筋は正弦波状の断面形状になる。ピーク回折効率は鋸波状表面型よりも劣るが、機械加工法による格子よりも格子周期が正確で、迷光の発生が抑制でき、広い波長領域に亘り一定の効率が得られる。格子周期をさらに密に形成でき、0次回折光と±1次回折光のみが発生して二次以上の回折光が発生しない特徴があり、分解能を向上できる。さらに、この正弦波状の断面形状は特殊な加工法で鋸波状断面形状にも整形できる。断面の鋸歯形状は、矩形断面の溝筋を写真腐食技法で1~2回の加工を重複させて形成でき、回折効率が十分に満足できるようになる (表2-31)。 透過式回折格子は、入射光を複数回折次の順位に分割するためのレーザ用分光器として汎用され、長波長の分析に適するとされている。分光器などの装置に配置するとき、反射型回折格子の場合より、角度設定は厳密でなくとも良い。そして、透過型回折格子は高次の回折効率を高くするために(光のスループットを維持する)格子周期dを疎にする。逆に、周期dを密にした格子は、回折角が大きくなり、装置を小型化できる(表2-32)。角度が過大になると基板の裏面で全反射が起こり、光が基板から透過し難くなるときは、裏面に反射防止膜を付すことがある。 反射式ブレーズド回折格子は回折角が大きくなり、