メカトロニクス1月号2013年

メカトロニクス1月号2013年 page 52/60

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52 MECHATRONICS 2013.1《第45回》2 設計から始めよう(その43)表2‐23 ギリシャ文字と技術一般での使用例5.側射型照明装置(2)充実型側方照明(エッジライト)方式(その27)⑯散乱・拡散シートⅳ 回折シート(そ....

52 MECHATRONICS 2013.1《第45回》2 設計から始めよう(その43)表2‐23 ギリシャ文字と技術一般での使用例5.側射型照明装置(2)充実型側方照明(エッジライト)方式(その27)⑯散乱・拡散シートⅳ 回折シート(その4) 2009年7月に皆既日食が見られたが、金環日食ともなると25年ぶり、今年2012年5月21日7時半頃に世紀のダイヤモンドリングが、西日本から東日本の太平洋側で観測された。新緑の木々の隙間から漏れる日差しが映し出した三日月状の光(部分日食)は、太陽の移動と共にやがて地面に多くの金色の環を敷き詰めていった。太陽の映像が木の葉を通して針孔写真のように投影されたのだ。その映像は淡く、しかし非常に美しかった。無限遠に在る太陽は私たちの地球に平行光線を注いでいるので葉影は鮮明に映るはずだが、映像がぼけて見えるのは光が回折しているからだろう。木枝に近い光は鋭く葉の影を鮮明に映すが、遠ざかるにつれて光線は太く変化していた。回折シートの技術や機能を理解しようと努めていた矢先に経験した自然現象であったから、深甚な感銘を受けてしまった。次の金環日食は2030年6月に北海道でのみ見られるという。 さて前回に続いて、光の回折現象つまり光線束が干渉する作用を理解してゆく過程から入る。まず、「単一の開口による回折光学の基礎を暫く学習してゆこう」と言いながら参考書を紐解き始めたが、難解な数式が羅列されていて、容易には馴染めない。それでは他の書物ではいかがなものであろうかと、手元に引き寄せて見ても同様な感触を受ける。もっとも困窮したのは数式における係数や変数に、日常では慣れていないギリシャ文字が多用され、そして各書物ごとに皆異なる使い方をしていることだ(表2-23)。その論説では、都合で記号・符号を途中で急に変更しているのに出くわすと、戸惑うこと頻り。幾何光学に関する書物は同類の光学技術分野だが、数式の記号類が比較的に共通して使用されている。それに対して回折光学の論説者は、ご自身が馴染んでいる記号類を用いているようだ。 科学者は理論を構築し、教師はその活用を伝える。私たち技術者は現状に適合させ、具現化させなくてはならない。そのため諸書を整理し整頓して理解に意欲を注いでみた。 木漏れ日の光が木の葉を投影しながら太陽の映像を地面に映し出しているように、遮蔽物(開口面X0,Y0)の近辺を通過した光線は、回折しながら距離zだけ離れた投影面(観測面x,y)に向かい、明るさの分布が変化してゆく。光強度分布が変化してゆく領域は観測距離zに沿って近接領域、フレネル領域(近方領域)、フラウンホーファー領域(遠方領域)および無限遠領域に区分されるが、フレネル領域とフラウンホーファー領域と大別するのが一般のようだ(表2-24)。開口面(X0,Y0)から観測面(x,y)へ通過する光路は観測距離zを斜めに走るので、その伝搬距離r(光路長)は三平方の定理によりx、yおよびzの二乗で表され、二項級数に展開できる。その展開された各項の量は指数的に縮小してゆくが、級数には加算と減算が繰り返され波打ちながら真の値に次第に近づく。この二項級数を使って回折距離rに基づく回折領域の境界を決めるのであるが、計算の都合で用いる項数はなるべく少なくして整えたい。 回折距離rを区分けする計算には諸説あるようだが、二項級数の第3項目と第4項目との間で伝搬距離rを定義したのが近接領域やフレネル領域の境界で、第2項目と第3項目との間で定義したのがフレネル領域やフラウンホーファー領域の境界である。このフレネル領域とフラウンホーファー領域との境界は、項目次数の採り方次第で領域の境界は複雑な数式になりがちだが、領域境界式:z観測距離=D開口2/λ波長 が最も簡明に表された形である。ちなみに書物に記述はなかった大胆な試みとして、開口Dから放出される0次回折光と1次回折光との隣同士を交叉させた距離zを計算してみると、偶然にもこの数式と一致している。なお第1項目でしか展開しないときは無限遠の場合で、伝搬距離rは観測距離zで表され定数扱いとなる。 領域境界式に例えば開口D=1.5~3μmおよび波長λ≒0.6μmの数値を代入すると、境界までの観測距離はz=3.75~15μmと算出され、極めて短距離であるのが分かる。従って回折光学素子や干渉計など実用機器の検討に回折現象を活用するときは、フラウンホーファー領域だけを考慮してよい。 次に単一の開口を透過した光線は、どのような姿に回折されるのかを概観してみた(表2-25)。ナイフエッジの場合や、大きさのない開口として点光源の場合、隙間であるスリットの場合、その縦方向と横方向に寸法制限がある隙間として矩形開口の場合、丸い形をした円形開口の場合について、それぞれ回折光の挙動を一覧させてみた。点光源における回折は平面波になり、スリットでは縦(横)縞模様の干渉縞に、矩形開口ではその矩形の辺長さに応じた四角形群の模様になる。そして円形開口では同心円模様である。その解法に、シンク関数sinc(x)や矩形関数rect(x/a,y/b)、円形関数circ((x2+y2)1/2/a)などを活用する手法は面白い。