メカトロニクス12月号2012年

メカトロニクス12月号2012年 page 52/60

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52 MECHATRONICS 2012.12《第44回》2 設計から始めよう(その42)表2-20 シンク関数表2-19 複素数の計算式表2-18 複素数関数5.側射型照明装置(その26)(2)充実型側方照明( エッジライト) 方式(その27)⑯散....

52 MECHATRONICS 2012.12《第44回》2 設計から始めよう(その42)表2-20 シンク関数表2-19 複素数の計算式表2-18 複素数関数5.側射型照明装置(その26)(2)充実型側方照明( エッジライト) 方式(その27)⑯散乱・拡散シートⅳ 回折シート(その3) “運動力学”(既出表2-13 ~ 14)から“振動力学”(既出表2-5 ~ 16)へと歩み始めたこの街道は、“回折シート”を使用するにはまず機能を理解しなくてはいけないと思い定めた路である。路の途中には少なからず道標がある。だが「光線の強さを求めるには振動する光波の振幅を2 乗すればよい」と、数式も示さず論拠も示さずに高い目線から突き放すような論説を投げかけられては、不慣れな旅人には即座に納得しがたい壁を感じてしまう。人生論名言集をもじるまでもなく、「技術は数式がなければ強くなれない。優しくなければ理解できない」ではないか。振幅を2 乗すれば光波の強さがなぜ計算できるのか。疑問にはなんらの解説を頂けない。 そこで拓いたこの優しい小路(既出表2-10)。次なる道標は“波動光学”(表2-21)である。その波導光学の門前では、歩み寄った旅人を親切に歓待してくれている。典型的な振動波は周期関数になり、その波形には2 面性があると。位置z 軸(または距離x軸)で表される面と、時間t軸で示される面とである。時間を停止させてその瞬間に現れる形状は位置z 軸(または距離x軸)に沿った周期関数であり、またある場所で定点観測したときは波形が時間t軸に寄り添った表情となる。位置z 軸と時間t軸とを一緒に示した数式は煩雑な形をしているが、ベクトル量で書き換えると分かりやすくなる(表2-16)。 そしてこの道標“振動力学”や“波動力学”では振動波形を説明しながら、復元力F を積分した値が必要なエネルギーすなわち強度I であると説諭する。光波の振幅E を2 乗すれば光の強さが求められるという。積分して生じた係数(1/2)は消してよい、とも言い添えている。旅人は此処の道標にたどり着き、由来を知って漸く安堵の一服を見つけられた。 しかしまだ問題が残っている。波動の振幅E を単純に2 乗するだけでは、強度を観測できない。どうしたものであろうか。ここにて暫時思案の後、“複素関数”(表2-18、表2-19)を活用すれば、周期関数(三角関数、正弦関数)の挙動が簡略化された数式に変換できると絶好の案内が出てきた。複素関数は波動の2 面性を綺麗に分離して示してくれる。その甲斐あって、なんと光波の強さⅠが光の波長λや位相ψを因子として表されるというのだ。それも綺麗なグラフに描いて見せる。さらに数学教科書に記載されている積分公式一覧では然したる注意を払わなかった一行の数式が“シンク関数”(表2-20)と名付けられて、その分布図舞台で立派に活躍しているではないか。 単独の光波だけでも美しい容姿の分布図に加えて、別の光波が共演すると、予想以上の幻想的な干渉模様が出現する(表2-22)。この舞台で大いに演技している複素関数やシンク関数など(表2-18、表2-19、図2-185)は、もうこの幕見の頃には旅人も認知するようになった。平面波や球面波さらには発散球面波、収束球面波などの乱舞は見事に披露されて、シンク関数は多才な総監督でもあるようだ。シンク関数から派生した優秀な数式も、これ以降に顔見せる。 次なる幕開きは“回折光学”の場面になろう。そして待望の“回折光学素子としてのシート”への最美な階段も、心楽しく待たれる。“波動光学”への道程で堅苦しい思いをさせた数式は、いつしか格調高い口上せりふに感じられ、幕ごとの演技を十分に堪能させてくれる。 “幾何光学”しか知らなかった旅人は、別の演目をも堪能できて興奮止まれず心機一転、これから先のさまざまな路を歩みたくなる。難解と感じて縁遠かった最新の“回折光学素子”も披露されるので、親しい間柄になってくるであろう。〈 人生は強くなければ、生きてゆけない。しかし優しくなければ生きている価値がない 〉Raymond Thornton Chandler   (米、作家1889 ~ 1959)【参考文献】2-98)佐々木重雄「機械工学便覧・第一分冊」日本機械学会1953山田幸五郎「光学の知識」東京電機大学出版局1966信貴豊一郎「現代物理学への道標」内田老鶴圃1998小暮陽三「振動と波動」講談社2005河合滋「光学設計のための基礎知識」オプトロにクス社2006白石清「物理の基礎知識」講談社2007佐藤文隆・松下泰雄「波のしくみ」講談社2007潮秀樹「物理数学がわかる」技術評論社2010佐藤勇一「振動の捉え方」オーム社2010鍵本聡「三角関数・複素数がわかる」技術評論社20112 設計からはじめよう(その43)