メカトロニクス11月号2012年

メカトロニクス11月号2012年 page 66/72

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66 MECHATRONICS 2012.11《第43回》2 設計から始めよう(その41)表2-11 科学における最も美しい方程式表2-12 ベクトルとスカラー表2-10 回折光学に関連する技術5.側射型照明装置(その25)(2)充実型側方照明(....

66 MECHATRONICS 2012.11《第43回》2 設計から始めよう(その41)表2-11 科学における最も美しい方程式表2-12 ベクトルとスカラー表2-10 回折光学に関連する技術5.側射型照明装置(その25)(2)充実型側方照明( エッジライト) 方式(その26)⑯散乱・拡散シートⅳ 回折シート(その2) “レンズ拡散板LSD”を照明源に装着すると光線は所定の範囲に拡散し、しかも拡散範囲には隅々まで十分な光量を配分させる。一般の散乱板では中央付近で照度が強く、周辺が弱い傾向があるが、このレンズ拡散板は性能が違うようだ。いったいどのような仕組みで、このような優れた機能を発揮するのであろうか。 製品現物を素早く採用したい気がはやるならば、実装実験しながらその謎を解き、照明構成部を設計してゆく手っ取り早い試行錯誤の手段もあるであろう。しかし光学素子は光学理論で存立しているのだから、技術の基礎知識も持ち合わせずに採用するのは、技術者としてどうも心もとない。このような場合、立ち止まって物理光学を学習する好機としよう。 一般の物性は振動数で記録されるが、光の特性は波長λ ( 可視光: 380 ~ 780n m ) で表現されるのが普通だ。敢えて光速c ( ≒3× 108m/s) の数値から、周波数f(39 ~ 79PHz)を求めると、超高周波だと判る。 この電磁波を操作するために、“回折光学素子”は光線の屈折機能と回折機能とを複合して具備している。素材面の傾斜角を調整して、光波の位相ψを揃えるように作用させるのが、光線の屈折機能であるならば、回折機能は、素材面の粗密度を整形して、光線を回折させ干渉させて発現させる。光の強度は主として光波の振幅E を因子として2 乗して算出している。特に光線の偏角に対応して強度を求める回折効率ηには、シンク関数という数式を用いて特別な工夫を凝らされている。 こうした光の強さを算出する特別な数式の由来をたどり、納得する程度まで探求すると、回折光学から波動光学へ、そして振動力学を経て運動力学にまでさかのぼり、技術の歴史を回顧するようになってしまった(表2-10)。なんと400 年前のGalireo Galilei(伊、物理・天文・哲学者1564 ~ 1642)が斜面の物体落下実験から発見した落下の方程式:  (落下距離)= 1/2 ×(重力加速度)× ( 時間)2に示唆を受けて、Sir Isaac Newton(英、哲学・数学・神学者1643 ~ 1727)が導出した運動の3法則にたどり着くのであった。探求の道すがら道程の辻々では、Leonhard Euler(スイス, 数・物理・天文学者1707 ~ 1783)の公式など(表2-11)の恩恵を受けたり、William Rowan Hamilton(英、数学・物理学者1805 ~ 1865)に導入されたベクトル・スカラー(表2-12)の知恵も頂く。波動光学の研究開発は豊かな物理数学の路でもある。 化学技術者は五感で類推する。電気技術者は頭脳で思考する。建築技術者は体躯で表現する。機械技術者の私は、どうも実物に触り重量や形状、その剛性を実感しないと納得しない性分がある。そのためであろうか、機械振動の分野から解きほぐすようになる。 この小道を歩み始めるには、Jean Le Rondd'Alembert( 仏、哲学・数学・物理学者1717 ~1783)の運動方程式(表2-13)を出発し、JeanBaptiste Joseph Fourier( 仏、数学・物理学者1768 ~ 1830) の変換法(表2-14)に助けられながら、機械振動の形態(表2-15)を景観し、振動力学(表2-16)に立ち寄り、振動波の強さは振幅の2乗で求められることが漸く理解し始めた。やがて波動力学(表2-17)に歩み寄れば、次に波動光学が門前にせまり得る。回折光学を理解する路程は意外に曲折があり、優しい案内板( 参考書) があっても道中では見落としがち。簡略された参考書や羅列され詳細に過ぎる数式は、目に留まるが、急ぐ旅人には難解だ。 旅程を終えてこの道中で記録した資料を整理したが、勉強するには余りありそうになる(表2-10 ~表2-17)。一つ一つの数式を連結しながら熟読すると、物性の不思議を解明し、光の本質を追求してきた400年前からの先人が、労苦の結晶を後人に残してくれた親切さが実感できるようになった。 “拡散板の特性”という目先の目標を単に理解したいために歩き始めたに過ぎなかったが、光学技術の真髄を学習できる最良の小路に感じられてきた。またとは無い貴重な機会である。そして学習の成果は未来に続くであろう。最近では回折光学がレンズ光学にも開発採用されるようになってきている。 レンズ拡散板の特徴を習得するまで、後もう一歩だ。 次回にThomas Young(英、物理学者1773 ~1829)の干渉実験)でも花火見物すれば、回折光学がより深く楽しみ理解できるようになるだろう。皆と共に歩もう。〈 数学や物理というのは、神様のやっているチェスを横から眺めて、そこにどんなルールがあるのか、どんな美しい法則があるのか、探していくことだ 〉       Richard Phillips Feynman(1918 ~ 1988 米・物理学者)【参考文献】2-97) 佐々木重雄「機械工学便覧・第一分冊」日本機械学会1953応用物理学会「回折光学素子入門」オプトロにクス社1997信貴豊一郎「現代物理学への道標」内田老鶴圃1998小暮陽三「振動と波動」講談社2005竹内淳「高校数学でわかるシュレディンガー方程式」講談社2005河合滋「光学設計のための基礎知識」オプトロにクス社2006白石清「物理の基礎知識」講談社2007佐藤文隆・松下泰雄「波のしくみ」講談社2007伊東正人「量子力学がわかる」技術評論社2010潮秀樹「物理数学がわかる」技術評論社2010佐藤勇一「振動の捉え方」オーム社2010鍵本聡「三角関数・複素数がわかる」技術評論社2011前川覚「振動・波動論」京都大学全学共通科目2012(電子版)2 設計からはじめよう(その42)