メカトロニクス11月号2012年

メカトロニクス11月号2012年 page 65/72

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MECHATRONICS 2012.11 65日本政府の提案では、グリーン経済に関する9つの主要分野について、我が国の東日本大震災の経験を踏まえた以下の9つの提案が行われた3)。①防災: ポスト「兵庫行動枠組」を策定し、防災を....

MECHATRONICS 2012.11 65日本政府の提案では、グリーン経済に関する9つの主要分野について、我が国の東日本大震災の経験を踏まえた以下の9つの提案が行われた3)。①防災: ポスト「兵庫行動枠組」を策定し、防災を開発政策へ と統合、東日本大震災等の災害で得られた知見・教 訓を国際社会で共有する。②エネルギー: 大胆なエネルギーシフトに向けて省エネルギー、再 生可能エネルギー、クリーンエネルギーを推進する。③食料安全保障:食料増産に向けた農業分野への投資拡大、責任ある 農業投資の前進、集約化・効率化など、持続可能な農 業を通じた食料安全保障を実現する。④水: 「橋本行動計画」に代わる総合的な水資源管理に関 する目標について検討を開始する。⑤環境未来都市: 経済・社会・環境価値を創造し続ける「環境未来都市」 のモデルを世界に提供する。⑥持続可能な開発のための教育: 持続可能な開発のための教育に係る取組の促進・共 有を行い、持続可能な市民の育成に取り組む。⑦全球地球観測システム(GEOSS): 地球規模課題に適切に対処するために、GEOSSを 通じた地球観測体制ネットワークを一層強化する。注7)全球地球観測システム:Global Earth Observation Systemof Systems(GEOSS)⑧技術革新とグリーン・イノベーション: 技術革新とグリーン・イノベーションの重要性を再 認識し、成長段階に応じた取組を開始する。⑨生物多様性: 愛知目標の重要性を再認識し、そのための国際的取 り組みへの参加を促進し、愛知目標の実現に向けた 取り組みを強化する。(2)ゼロドラフト これらの提言を踏まえて、リオ+ 20事務局は2012年1月に成果文書の素案(ゼロドラフト)を発表した4)。 本会議のエグゼクティブ・コーディネーターを務めたエリザベス・トンプソン(Elizabeth Thompson)は、ゼロドラフト作成の過程を以下のように記している5)。 “それらの文書の要点を抽出・把握する、加盟国の提案を忠実にフォローする、すべての重要な要素をテキストに盛り込む、これまでの多国間協定に抵触したり、いかなる地理的・政治的グループの感情も害したりしない言葉を選ぶ、さらに実際の機能性を上回ることなく、これらすべての目的を果たすのに最適な文書の長さを決定するなど、素案の作成は途方もない仕事でした。” ゼロドラフトをめぐって、途上国はODAのコミットメントの強化や技術移転の重要性を主張し、EUはグリーン経済のロードマップの作成、UNEPの専門機関化を主張し、米国は非政府の団体の役割の重要性を強調した。 日本は、持続可能な開発のためには、先進国と途上国の二分法を見直すことや、グリーン経済への移行が不可欠であるあること、組織の改編の是非の議論だけでなく、現行の制度的取り組みの具体的な改善方策について合意し行動につなげることが重要であること、人間の安全保障を追加することを主張した。(3)成果文書の概要 事前の事務レベルの交渉により、成果文書「我々の求める未来」(全283パラグラフ、49ページ)は19日昼に実質合意され、首脳及び閣僚級による3日間の議論を経て22日夜に採択された6)。 成果文書の目次は<表1>の通りであり、以下にその概要を紹介する。①総論・持続可能な開発に向けた政治的コミットメントを再確認。貧困撲滅は世界が直面する最大の挑戦。ミレニアム開発目標(MDGs)注8)の達成が重要。持続可能な開発において人間が中心であることを認識。すべてのリオ原則及び過去のコミットメントを再確認。(注8)ミレニアム開発目標:Millenium Development Goals、MDGs・過去20年間の経済成長・多様化等により得られた機会を捉える必要を認識。持続可能な開発の追求に関与する主体及びステークホールダーの多様化を認識。・国連総会における人間の安全保障の議論に留意。・GDPを補完する指標に関して、国連に対し、作業計画の立ち上げを要請。②グリーン経済・異なるアプローチを確認し、持続可能な開発を達成する上でグリーン経済は重要なツールと認識。・グリーン経済の実施がそれを追求する国による共通の取り組みと認識。・グリーン経済のツールボックスおよびベスト・プラクティスを各国と共有。・技術・イノベーションの重要性を確認。③制度的枠組み・経済社会理事会注9)を経済、社会、環境分野における主要な組織として強化。持続可能な開発委員会(CSD)に代わり、第68回国連総会の開始(2013年9月)までに第1回ハイレベル政治フォーラムを開催する。注9)経済社会理事会:Economic and Social Council・国連環境計画(UNEP)強化・格上げ:普遍的メンバーシップ、資金強化、国連フォーラム内での調整能力を強化する。具体的内容については第67回国連総会(2012年9月~)で決議を採択。④行動的枠組みとフォローアップ・食料、水、エネルギー、海洋、気候変動、生物多様性、教育を始めとする26の分野別の取組について合意。・持続可能な都市については、3Rs(Reduce、Reuse、Recycle)、防災、資源効率性など経済、社会、環境の面で価値を有する都市づくりの重要性に合意。・防災については、兵庫行動枠組みの重要性、防災政策の主流化、すべての関係者が連携することの重要性等に合意。⑤SDGs・持続可能な開発目標(SDGs)注10):政府間交渉プロセスの立ち上げに合意。SDGsは2015年以降の国連開発アジェンダに整合的なものとして統合すべきことに合意。注10)持続可能な開発目標:Sustainable Development Goals、SDGs⑥実施手段・(資金)国連総会の下に政府間プロセスを立ち上げ、「持続可能な開発ファイナンシング戦略」に関する報告書を作成。2014年までに政府間委員会による作業を終え、報告書を国連総会において検討する。・(技術)関連する国連機関に対し、環境に配慮した技術の開発、移転等を促進するメカニズムの選択肢を特定するよう要請。■「リオ+20」に対する評価 「リオ+20」の成果、問題点については、現在いろいろな議論がなされている。その一例を以下に紹介する。(1)武内和彦(国連大学副学長)7) “「リオ+20」のテーマは2つある。貧困削減の文脈におけるグリーン経済の役割と、持続可能な開発の制度的枠組みをどうするかである。後者については、気候変動枠組み条約の交渉がなかなか合意に至らないなど国連機関がちゃんと機能しているのかという問題意識がある。もっと強力なイニシアチブが必要だと一部の国は世界環境機関(WEO)の創設を主張している。” “歴史的にみれば、72年の国連人間環境会議(スウェーデン・ストックホルム)が、世界が地球環境問題を深刻に受け止め始めた契機だ。92年のリオの地球サミットで、気候変動枠組み条約と生物多様性条約、砂漠化防止条約の3条約が生まれた。2002年には南アフリカのヨハネスブルクで「持続可能な開発に関する世界首脳会議(リオ+10)」が開かれ、環境問題などの改善を点検した。このときの結論は、一言で言えば「必ずしもうまくいっていないが、希望をもって努力を継続しよう」だった。それから10年がたって再び節目の年を迎えた。” “一方、コフィ・アナン前国連事務総長が2000年に提唱した「ミレニアム開発目標」も15年の目標年が迫っている。1日1ドル未満で生活する人口を半減させるなどの貧困や飢餓を減らす数値目標の達成にどこまで近づいているのか、「リオ+20」で確認することになろう。ブラジル政府の強い意志もあってリオが再び、世界の問題を考える場所に選ばれた。” “途上国が参加できるうまい枠組みができていない。地球環境を守るのは大切なことだが、途上国の福利の向上も欠かせない。途上国の人々の生活が悪くなるようではだめだ。経済成長が環境悪化をもたらしたり、逆に環境保全が成長を阻害したりという、従来の環境と経済の関係をデカップリング(切り離す)ことが大切だ。そのためにグリーン経済の必要性が指摘されている。”(2)CNNニュース 同会議は環境と経済成長の両立を目指す宣言を採択して閉幕したが、環境団体からは「壮大な失敗」と批判する声が上がっている。 会議は22日、「我々が望む未来」と題した53ページに及ぶ宣言を採択して閉幕。潘基文(パン・ギムン)国連事務総長は「リオ+20は根本原則を確認し、新たな方向を指し示した」と評価する声明を出した。 しかし、国際環境保護団体グリーンピースのクミ・ナイドゥ事務局長は、「会議は始まる前から終わっていた」「提案された約束や目標はひとつずつ削られていった」と手厳しく批判。「リオ+20は壮大な失敗に終わった」「唯一の収穫は、もっともな怒りの感情だ。その怒りを行動に移さなければ」と述べた。        (3)加藤三郎(環境文明研究所長) 同氏は、「リオ+20」会合の結果と課題について、「グリーン経済」を巡る先進国と途上国との間の違いが埋められなかったことについて分析を行っており、近く特別セミナーを予定している8)。               (2012.9.16記)<参考資料>1)UNEPのホームページ2)外務省のホームページ:「国連持続可能な開発会議(リオ+20) (概要と評価)」(2012.6.24) http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/kankyo/rio_p20/ gaiyo2.html3)日本国政府:「国連持続可能な開発会議(リオ+20)成果文書へのインプット」(2011.10) The Government of Japan:「Input to the Rio+10 Outcome Document」(2011.10)4)United Nations:「Zero draft of the outcome document- The Future We Want」(2012.1.10)、国際連合、環境省仮訳:「成果文書ゼロドラフト - 我々が望む未来」5)エリザベス・トンプソン:“リオの革命” :「Our Planet」公益財団法人地球友の会、(2012.Vol.2、通巻27号、p6-76)United Nations「: The future we want (Draftresolutionsubmitted by the President of the General Assembly)」( 6 6 s e s s i o n , A g e n d a i t em 19 - S u s t ai n a b l edevelopment)(24 july 2012)7)日本経済新聞ホームページ:「地球サミットの総決算“リオ+20”  2つのテーマ - 国連大学の武内氏に聞く(2012.1.18)8)加藤三郎:「(リオ+20特別セミナー)リオ+20会合の結果と課題 -「 グリーン経済」を巡って」(2012年10月17日、東京ビッグサイト“「2012洗浄総合展」併催事業”