メカトロニクス10月号2012年

メカトロニクス10月号2012年 page 52/60

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52 MECHATRONICS 2012.10《第42回》2 設計から始めよう(その40)図2-180 光整形拡散板2-95)5.側射型照明装置(その24)(2)充実型側方照明( エッジライト) 方式(その25)⑯散乱・拡散シートⅳ 回折シート(そ....

52 MECHATRONICS 2012.10《第42回》2 設計から始めよう(その40)図2-180 光整形拡散板2-95)5.側射型照明装置(その24)(2)充実型側方照明( エッジライト) 方式(その25)⑯散乱・拡散シートⅳ 回折シート(その1) 米国で30 年前に技術開発されたLSD:LightShaping Diff user は日本での地道な商品開発により“レンズ拡散板LSD”として照明光学分野に漸く需要が高まるようになった(図2-180)。 サーフェイスレリーフホログラムを原版として樹脂面に複製加工したもので、ホログラム(回折)と光学レンズ(屈折)とを複合してその相互された機能を発揮する。主な特徴として、①自由な拡散角度の設計が可能、②円形/楕円形/軸外し状に光を整形し拡散する、③ 90%以上の高透過率で、均一な照度分布を実現し、そして波長の依存性なく、白色光に対しても色ずれが無い、などが挙げられる。こうして種々に適用事例が紹介されている。 さて試用するのであるが、その前にその光学原理を理解しておくのが好い。基本原理を習得し商品の特質を認識してこそ確実に活用できるものである。このLSD の表面は「ランダム構造約5 μmのマイクロ凹レンズアレー」と説明されている。その光学素子は光波長レベルの微細な構造で、単なる光屈折作用とは異なるらしい。説明書によれば「サーフェスレリーフホログラム」という文言も記述されている。まさしく“回折光学素子”の一種だと認識した。そして“光干渉“を改めて学習することにしよう。このとき、昔のカメラ(一眼レフカメラ)の機構を想起した。撮影レンズから摂取した映像を確認するための焦点板に苦心の技術が施されているではないか。 第二次大戦後(1950 年代)に平和を迎えた日本の多くの中小企業は、こぞってカメラ産業に従事し発展して言った。それは日本人の職人技能が優れたばかりではなく、戦中にナチスドイツ(国家社会主義ドイツ労働者党1933 ~ 1945)のユダヤ人撲滅政策による虐待行為に痛みつけられてきた米国の人々が、その反動として日本を支援してくれたからでもあった。やがて勃発した朝鮮戦争(1950 ~ 1953 休止)の最前線で取材していたDavid Douglas Duncan(1916 生まれ、米Life 社専属カメラマン)が日本製レンズの優秀さに惚れ込んで絶賛したり、1953 年にJoseph Ehrenreich(米国ユダヤ人・写真家・商社)が日本光学工業に35mm フィルムカメラの製造を進言した経緯も良好に影響したのだった。 特に、カメラ技術の先進国で熟成していた二重像合致式レンジファインダー式35mmカメラに対抗して、日本の産業は合焦時にパララックス現象が発生しない一眼レフレックス35mm カメラに将来の発展を祈願したのだった。当初の照準像の暗さ合焦機能の欠陥は、たゆまぬ改良の努力により1970 年代に入ると、ようやくその優れた固有性能を発揮できる技術を確立していった。当時の思い出として、一事が万事の諺がいうように米国側への好印象は一般に広まり、全く異なる用途の機種であったが、日本の光学技術者だという肩書きだけの私にさえ、製品仕様の協議席で何の疑念も含まず好意を示してくれるようになっていた。 さて一眼レフカメラは、美しく明るい照射像を得るためにフォーカススクリーンに粒状性を向上させたマット面を採用し、視野を確保するためにフレネルレンズを配置し、さらにそのフレネル溝を30 μ m に微細化する。従来の砂ずりマットのファインダーに比べて1.7 倍にも明るくした。 フォーカススクリーンのマット面は微細な凹凸形状により映像光線を拡散して観察できる(図2-182)。より明るく見やすくするには、均質で細密な凹凸形状が望まれる。しかし一定の細かさに達すると、ピント合わせがしにくくなるのも事実であった。 焦点合わせに正確さと容易さを求めるには、レンズの前後移動量μに対してピント像の変化δを大きくするとよい。これは撮影レンズの開口を広げる(FNO を小さくする)と合焦精度が上がる。しかしフォーカススクリーンのマット面の偏角機能ψが追いつかなくなる。撮影レンズを絞る(FNO を大きくする)と視界が暗くなる。マット面の偏角機能ψを高めようとすれば、粒状組織構造が粗くなり、視認性が劣化し検出精度は達成できない(図2-183)。要求性能とマット面の実現品質とは相反するものらしい。 1980 年代になると、レーザ光線を用いてナノメータ水準の微細な工作精度で均質最適な形状を制御できるような技術が次第に開発されてきた。明るくかつ良好なボケ味を演出して合焦しやすいマット面が製品化された。使用者自身が任意に交換し、レフレックスカメラに採用できる時代になってきた(図2-184)。 現在これらの技術はさらに改良され、フィルムカメラ時代からデジタル一眼レフ時代に経緯しても存分に生かされている。まさに温故知新で、未来を拓く!〈 海が見えた 海が見える   五年ぶりに見る 尾道の海は なつかしい 〉               林芙美子/ 放浪記【参考文献】2-95) Physical Optics Corp. 「Optical Solutions ForOEM Applications」カタログ2001オプティカルソリューションズ(株)「照明ムラを解消するレンズ機能拡散板」OplusE/2010-12「人の感性に応える「高品位照明」に商機!」BigLife21/2011-3オプティカルソリューションズ(株)「レンズ拡散板を使ったLED 照明ムラ解消技術」技術情報協会2011-62-96) 山崎康雄「焦点調節機構 」カメラ技術ハンドブック、写真工業出版社1979、 「マイクロ加工技術特集・微小成形」日経メカニカル1985-6-17 2 設計からはじめよう(その41)