メカトロニクス7月号2012年

メカトロニクス7月号2012年 page 50/60

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50 MECHATRONICS 2012.7日本産業洗浄協議会専務理事 相模環境リサーチセンター 所長 小田切 力「第四次環境基本計画」~「安全」を基盤とした「低炭素」・「循環」・「自然共生」の統合~【第124回】環境省はこの....

50 MECHATRONICS 2012.7日本産業洗浄協議会専務理事 相模環境リサーチセンター 所長 小田切 力「第四次環境基本計画」~「安全」を基盤とした「低炭素」・「循環」・「自然共生」の統合~【第124回】環境省はこのほど報道発表を行い、「環境基本計画」について、“中央環境審議会の答申を踏まえ1)、第四次環境基本計画が2012年4月27日の閣議で閣議決定された”ことを紹介した2)。 環境基本計画の見直しは、その策定後過去に2回行われており、2回目の見直しで「第三次環境基本計画」が決定した経緯については、本シリーズの第52回として2006年に取り上げている3)。 今回は、この「第四次環境基本計画」の策定の経緯と、その内容を紹介する。■「環境基本計画」について(1)「環境基本法」による規定 「環境基本計画」は、「環境基本法」により以下のように規定されている注1)。注1)環境基本法“第2 章 環境の保全に関する基本的施策、第2節 環境基本計画、第15 条” “政府は、環境の保全に関する総合的かつ計画的な推進を図るため、環境の保全に関する基本的な計画(以下「環境基本計画」という)を定めなければならない。環境基本計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。①環境の保全に関する総合的かつ長期的な施策の大綱②前号にかかげるもののほか、環境の保全に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項 環境大臣は、中央環境審議会の意見を聴いて、環境基本計画の案を作成し、閣議の決定を求めなければならない。環境大臣は、前項の規定による閣議の決定があったときは、遅滞なく、環境基本計画を公表しなければならない。・・・内外の社会経済の変化に柔軟かつ適切に対応して、環境基本計画の見直しを行うこととし、見直しの時期は、5 年程度を目途とする。(以下略)”(2)過去の「環境基本計画」の策定と見直し これまでの環境基本計画の策定と見直しは以下のように行われてきた。・1993.11.19:環境基本法(1993年法律第91号)施行・1994.12.16:「(第一次)環境基本計画」を閣議決定・1996.7.5:「第一次環境基本計画」の第1回点検結果の閣議報告(以後、この点検は毎年行われている)・2000.12.22:「第二次環境基本計画」を閣議決定 (副題は“環境の世紀への道しるべ”)・2006.4.7:「第三次環境基本計画」を閣議決定(副題は“環境から拓く新たなゆたかさへの道”)■環境大臣から中央環境審議会への 見直しの諮問 2011 年3 月7 日に、環境大臣から中央環境審議会に対し「第三次環境基本計画」に関する諮問が行われ、これを受けて中央環境審議会総合政策部会において同日から審議を開始した。 同部会は、15 名の委員と、29 名の臨時委員で構成され、委員長は鈴木基之氏(放送大学教授・国際連合大学特別学術顧問)であった。 また、同部会には以下の7つの小委員会及び専門委員会が設置されている。①公害防止計画小委員会 環境基本法第17条第1項に基づく公害防止計画の策定指示及び同条第3 項に基づく公害防止計画の同意その他公害防止計画に関する事項に関する審議を行う。②環境研究・技術開発推進戦略専門委員会 環境研究及び環境技術開発を重点的に推進するための戦略の在り方に関する調査を行う。③環境基本計画点検小委員会 総合政策部会を補佐するため、環境基本計画の点検に関する事務のうち主として個別の分野の点検に関する審議を行う。④環境情報専門委員会 環境情報の長期的かつ総合的な基盤整備の基本的方針に関する調査を行う。⑤環境に配慮した事業活動の促進に関する小委員会 環境に配慮した事業活動を一層促進するための方策に関する審議を行う。⑥環境影響評価制度専門委員会 環境影響評価法の施行の状況及び今後の環境影響評価制度の在り方に関する調査を行う。⑦環境と金融に関する専門委員会 環境金融の現状と課題及びその促進策について調査を行う。■「第三次環境基本計画」見直しの作業 「第三次環境基本計画」の見直しの趣旨については、同部会で以下のように説明されている5)。(1)見直しの趣旨①見直しの契機 2006年4月に策定された「第三次環境基本計画」には、内外の社会経済の変化や施策の進捗状況に柔軟かつ適切に対応して、5年程度が経過した時点を目途に計画内容の見直しを行うこととされている。また、2012 年には持続可能な開発に関する国連会議(Rio+20)の開催が予定されており、これを視野に入れた検討が必要になっている。②「第三次環境基本計画」の主な成果と環境問題の状況 「第三次環境基本計画」の策定以降、第二次循環型社会形成推進基本計画や21世紀環境立国戦略の策定、生物多様性基本法の成立、地球温暖化対策基本法案の国会提出など、環境行政は一定の進展が見られた。 しかし、新興国における経済成長や世界人口の増大の中で、地球温暖化、廃棄物問題、生物多様性の損失等の世界規模の環境問題が深刻化するとともに、かつて日本が経験したような深刻な公害被害が生じかねないような環境汚染が顕在化している地域も増えている。また、国内においても温室効果ガスの排出量のさらなる削減、生物多様性の保全、安全・安心な生活の実現など、各分野において引き続き課題の解決に向けて取り組んでいく必要がある。 さらに、生物多様性条約のCOP10における愛知目標や名古屋議定書の採択といった進展がある一方で、気候変動対策の次期国際枠組みについての議論など、環境問題への取り組みにおいて国家間に複雑な利害関係が見られている。③内外の社会経済の状況 我が国は高齢化率が20%を超え、さらなる少子高齢化が進展するとともに、人口も減少に転じている。また、国および地方の長期債務残高は800兆円を超え、厳しい財政状況が続いている。 他方で、資源制約や環境制約を念頭においた経済の持続性確保のための取り組みが広がりを見せるとともに、環境が新成長戦略において経済成長分野として位置付けられるなど、環境と経済が密接に関連していることが強く認識されるようになっている。 また、国際社会においては、新興国において目覚ましい経済成長が起きる一方、世界人口の増大とともに水・食料の確保の問題、貧富の格差の増大、資源配分の不均衡、公害被害が生じかねないような環境汚染等が不安定な社会経済の状況を生み出している。このような中、環境保全を経済発展のための成長要因と捉える動きや、「豊かさ」を多様な価値観で捉えようとする動きも見られている。④第三次環境基本計画を見直すにあたっての課題 このような環境や社会経済の状況および過去4 年間の点検における施策の進捗状況に関する指摘・提言をふまえ、第三次環境基本計画については、・ 価値観の多様化が進む中で、持続可能な社会の姿をさらに深く掘り下げる必要があるのではないか。・ 環境問題と、経済をはじめとするその他の政策領域の統合が深く進展している状況を反映させる必要があるのではないか。・ 公害を克服した我が国の経験や技術を活用した国際貢献とともに環境問題への取り組みにおける国家間の複雑な利害関係を見据えた国際戦略を改めて構築する必要があるのではないか。・ 連携促進のための条件整備の推進、情報公開、人材育成など、多様な主体の参加と協働のための施策を一層充実させる必要があるのではないか。・ 地球温暖化が生物多様性に与える影響や循環型社会の形成と生物多様性の保全との関係など、分野間の相互の影響を考慮するとともに、環境基本計画と個別分野の計画との関係を整理する必要があるのではないか。などの点が課題として指摘された。(2)計画見直しの基本的方向 以上を踏まえ、現行の第三次環境基本計画を、今日の環境問題および内外の社会経済の状況により即したものにするため、次のような点に留意して新たな環境基本計画の策定のための検討を開始する。①持続可能な社会の姿 環境問題がグローバルな課題であることを踏まえつつ、わが国が目指す持続可能な社会は、低炭素社会、循環型社会、自然共生社会、安全・安心社会を統合的にとらえたものとすべきではないか。 また、社会経済の状況の変化や新たな知見や技術等を反映して目指す持続可能な社会の姿が変わりうる点を踏まえて、目指す社会への移行の過程を提示すべきではないか。 さらに、持続可能な社会を実現する上では、環境な<写真1>2006年に出版された「第三次環境基本計画」の表紙4)