メカトロニクス4月号2012年 page 51/60
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MECHATRONICS 2012.4 51経済の二酸化炭素排出量を劇的に削減する解決策を提供する存在として、化学工業界が不可欠な役割を果たすということだ」と述べている。 量という観点では、最も効果的な排出量削減用途は、建....
MECHATRONICS 2012.4 51経済の二酸化炭素排出量を劇的に削減する解決策を提供する存在として、化学工業界が不可欠な役割を果たすということだ」と述べている。 量という観点では、最も効果的な排出量削減用途は、建築用断熱材(発泡成形ポリスチレン、押出成形ポリスチレン、ポリウレタンなど)、農業用化学物質、照明、プラスチック包装材、船舶防汚塗料、合成繊維、自動車用プラスチック材料、低温洗剤、エンジン効率向上、プラスチック配管材料であることが判明した。 アラン・ペロワ(Alain Perroy、ICCA事務局長)は、「マッキンゼーの2030年に関するシナリオでは、生産における温室効果ガス排出量削減と、その製品を通じた削減の両方により、世界の温室効果ガス削減を促進するという意味で、化学工業界が相当な潜在能力をもつことが明らかになった。産業、政策担当者、他のステークホルダーが、排出量削減を促進する対策を講じ、化学製品を十分に活用すれば、2030年までに排出量削減と排出量の比率を『4対1』以上に引き上げられることも、この調査で示唆された」と述べている。 世界の化学工業界は、化学物質の製造工程の改善により、温室効果ガス削減の促進を目指している。化学工業界は、製造現場での大幅なエネルギー効率改善と温室効果ガス排出量削減を達成し、今後も改善を継続すると約束している。また、化学製品のバリューチェーン全体を通じ、化学製品による省エネルギーと正味排出量削減を実現する役割も担っている。 この調査では、ライフサイクル全体の二酸化炭素換算(CO2e)排出量分析により、炭素効率を改善する化学物質の使用が世界経済に与える影響を評価した。その中で、100種類以上の個別化学製品用途について分析を実施し、化学業界と結びついたすべての排出量と排出削減量を比較した。 分析では、化学工業界で関連性のある主な製品と分野すべてを対象とし、化学工業界と関連するCO2e排出量を表す部分が調査範囲に含まれている。化学工業界による製造に関連する排出量はすべて含めたのに対し、排出削減量については、主な用途による削減量のみを評価した。このため、別のライフサイクル分析を実施した場合、この調査で報告した数値を上回る排出削減量が求められる可能性がある。(2)「国内における化学製品のライフサイクル評価報 告書?温室効果ガス削減に向けた新たな視点?」日化協は、2011年8月に、温暖化対策における化学業界の貢献度を調査した報告書、「国内における化学製品のライフサイクル評価?温室効果ガス削減に向けた新たな視点?」を発表した2)。(2. 1)概要同報告書は、みずほ情報総研株式会社ならびに株式会社産業情報研究センターの支援を得て日化協がまとめたもので、日本国内において太陽光発電、LED電球、住宅用断熱材など化学製品を駆使した具体的な9品目の使用が、代替製品を使用した場合と比べてどれほど二酸化炭素の排出を削減するかを分析している。 これらの分析の結果、海水淡水化を除く8品目の化学製品について、製品自体の原料から製造、そして廃棄までにおける二酸化炭素排出量が約475万トンであるのに対し、完成品ベースのライフサイクル全体でおよそ1億1,200万トンの排出削減効果が期待できることがわかった(図1)。 なお、本報告書の発行にあたっては、地球温暖化問題に精通した大学教授・准教授4名で構成されるレビュー委員会による事前評価が行われている(委員長は平尾雅彦博士(東京大学工学系研究科化学システム工学専攻))。(2.2)日化協の今後の取り組み日化協では今後、地球温暖化対策というグローバルな課題に対し、製造時の二酸化炭素排出削減といった部分最適の議論ではなく、製品のライフサイクル評価に基づいた全体最適の視点から対策が行われるよう、本報告書をもとに提言を行っていく。また、今後とも、化学製品の製造時のみならず、ライフサイクル全体における化学技術・製品の活用による排出削減も推進し、社会全体の二酸化炭素の排出削減に貢献していく。(3)c-LCA(カーボンライフサイクル分析)手法の ガイドライン 日化協は、2011年8月に報道発表を行い、“地球温暖化の原因のひとつである温室効果ガスの排出削減における化学産業の貢献度について、広く一般社会への認知拡大および理解促進を図るため、c-LCA(カーボンライフサイクル分析)手法のガイドライン策定に着手した”と以下のように説明している。(3. 1)背景 世界の化学工業協会の団体であるICCA(国際化学工業協会協議会)は、日化協が中心となって、2009年に「温室効果ガス削減に向けた新たな視点/化学産業が可能にする低炭素化対策の定量的ライフサイクル評価」と題する報告書を作成・公表した。その中で、原料の採掘から製造・利用・廃棄に至る化学製品の利用によって削減されるCO2量を評価するc-LCAという論理的で実証的な評価法を紹介し、グローバルなCO2削減に化学産業が大きく貢献していることを明らかにしている。 こうしたc-LCAという評価法の概念に関するグローバルな普及活動に引き続き、日化協では、2010年より、日本国内における具体的な最終製品の使用によるCO2排出削減量の定量化に取り組んだ。 その結果、2011年7月、化学産業界によるCO2削減への貢献を報告書としてまとめた。具体的には再生可能エネルギー、軽量化・低燃費化、省エネルギー分野において、太陽電池、炭素繊維複合材料、LED照明、住宅用断熱材など9つの事例のc-LCA評価を実施し、結果を公表しています。(3.2)ガイドライン策定の取り組み c-LCAのように製品のライフサイクル全体を考慮した評価法は、二酸化炭素の排出削減効果を社会に示す指針として業界内外で注目され始め、社会からの理解も得られつつある。そうしたc-LCA評価に関する社会の理解と信頼をさらに高めるべく、日化協では評価方法の整理、統一化に向け検討を開始した。具体的には、日化協に設置したLCAワーキンググループが中心となり、CO2削減貢献の定義、比較対象製品・技術の選定ルール、CO2排出削減貢献量の定量評価方法、使用データの信頼性・透明性確保の方法などを検討することにより、年内にも評価方法のガイドラインを策定する。 日化協では策定するガイドラインを基に会員各社への利用を呼びかけ、業界としての評価方法の普及に努めてゆきます。また本ガイドラインを有効活用し、先に公表した9事例に加えて対象製品を拡大してc-LCA評価を進めることにより、日本発信いよる国際貢献事例及び素材ベースの事例評価等c-LCA評価事例のさらなる拡充を図っていく。(2012.2.19記)<参考資料>1)環境省編集:「環境基本計画=環境から拓く新たなゆたか さへの道=(平成18年閣議決定第3次計画」(株)ぎょうせ い(2006.7)2)一般社団法人日本化学工業協会:「温室効果ガス削減に向 けた新たな視点?国内におけるライフサイクル評価? carbon-Life Cycle Analysis( c-LCA)- ある一定の条件 を設定した上で算出したケーススタディ」(2011.7) http://www.nikkakyo.org/upload/ 3110_4537_price.pdf3)石谷久、赤井誠監修:「ISO 14040/JIS Q 14040 ライ フサイクルアセスメント=原則及び枠組み=」(社)産業環 境管理協会(1998.8)4)ICCA:「Innovations for Greenhouse Gas Reductions=A life cycle quantification of carbon abatement solutions enabled by the chemical industry 」(2009.7) http://www.icca-chem.org日本化学工業協会監訳:「温室効果ガス削減に向けた新たな 視点=化学産業が可能にする低炭素化対策の定量的ライ フサイクル評価=」(2010.5改訂)5) 大浜庄司:「図解でわかるISO 14001のすべて」 日本 実業出版社(2005.10)- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -(備考)本連載の第1 ?61回は、若干のデータを追加し、追記、索引を付して下記単行本にまとめられています。(執筆者連絡先:メールアドレス odagiri@ai.ayu.ne.jp、ファックス 046-247-0616)・小田切 力著「ものづくりと地球環境Ⅲ」化学工業日報社刊、A5 版、総521ページ、(2009.6.30)、定価3,360 円・小田切 力著「ものづくりと地球環境Ⅱ」化学工業日報社刊、A5 版、総487ページ、(2007.12.7)、定価3,360 円・小田切 力著「ものづくりとの普及地球環境」化学工業日報社刊、A5 版、総494ページ、(2004.8.24)、定価3,360 円- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -<図1>環境制約への対応状況1)