メカトロニクス4月号2012年 page 50/60
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50 MECHATRONICS 2012.4日本産業洗浄協議会専務理事 相模環境リサーチセンター 所長 小田切 力ライフサイクル・アセスメント?日本化学工業協会の報告書?【第121回】 企業が事業活動を行うにあたって環境問題をど....
50 MECHATRONICS 2012.4日本産業洗浄協議会専務理事 相模環境リサーチセンター 所長 小田切 力ライフサイクル・アセスメント?日本化学工業協会の報告書?【第121回】 企業が事業活動を行うにあたって環境問題をどのように配慮するかは、現在、必須の重要事項として取りあげられている。その適切な評価のための手段として、「環境基本計画」では、環境パフォーマンス評価、環境会計、ライフサイクル・アセスメント、環境貢献緑地評価システム(SEGES)などに触れた説明が記されている1)。 ライフサイクル・アセスメントとは、同書での解説を中心として、その他の補足的な表現を加えると以下のように説明される。・“ライフサイクル・アセスメント:(LCA:Life Cycle Assessment、適切な日本語訳がないが、“ライフサイクル評価”とも呼ばれている。)ある製品について、製品の原材料採取から、製造、流通、使用、廃棄にいたるまでの製品の一生涯(ライフサイクル)で、環境に与える影響を分析、総合評価する手法をいう。製品の環境分析を定量的・総合的に行う点に特徴がある。” 最近、一般社団法人日本化学工業協会(以下、“日化協”と略)が、化学製品のライフサイクル評価に関する各種の報告書を発表しているので、今回はその内容を紹介する(写真1)1、2)。■「ライフサイクル評価」について 環境負荷評価は、以前は、製品の使用や廃棄に伴う有害物質の排出の有無、処理の容易性等一定のプロセスだけを評価範囲としたものが多かったが、このような評価では、全体としては環境への負荷の低減には寄与しない製品が生産されてしまう可能性がある。 そこで製品の原料採取、製造、流通の段階も含めて環境への負荷を評価することにより、経済社会活動そのものを環境への負荷の少ないものに変革しようとする手法が考えられた。(1)環境基本法 1993年に制定された環境基本法では、ライフサイクル評価に関連して「環境への負荷の低減に資する製品等の利用の促進」が以下のように規定されている。・第24条(環境への負荷の低減に資する製品等の利用の促進):国は、事業者に対し、物の製造、加工又は販売その他の事業活動に際して、あらかじめ、その事業活動に係る製品その他の物が使用され又は廃棄されることによる環境への負荷について事業者が自ら評価することにより、その物に係る環境への負荷の低減について適正に配慮することができるように技術的支援等を行うため、必要な措置を講ずるものとする。 国は、再生資源その他の環境への負荷の低減に資する原材料、製品、役務等の利用が促進されるように、必要な措置を講ずるものとする。(2)ISOの規定 国際標準化機構(ISO)では、ライフサイクル評価について国際標準化を行っており、“環境マネジメント=ライフサイクルアセスメント=原則及び枠組み”が、ISO14040 として1997 年に発表された。その後、ISO の見直し作業が行われ、ライフサイクルアセスメント関係の規格は以下のように分類されている。・ISO14040:環境マネジメント=ライフサイクルア セスメント=原則及び枠組み・ISO14041:〃 = 〃 = 目的及び調査範囲の設定並 びにインベントリ分析・ISO14042:〃 = 〃 = ライフサイクル影響評価・ISO14043:〃 = 〃 = ライフサイクル解釈・ISO14044:〃 = 〃 = 要求事項及び指針・ISO/TR14047:〃 = 〃 = ISO14042の適用の例・ISO/TR14048:〃 = 〃 = データ記述書式・ISO/TR14049:〃 = 〃 = 目的及び調査範囲の設 定並びにインベントリ分析のJIS Q 14041に関する適用事例注:ISOの環境に関する規格は、番号が14,000台であり、ライフサイクルアセスメント以外の規格は以下のように構成されている。<環境マネジメントシステム>・ISO14001:環境マネジメントシステム?要求事項及び利用の手引 き?・ISO14004:環境マネジメントシステム?原則、システム及び支援 技法の一般指針?<環境パフォーマンス評価(EPE)の規格>・ISO14031:環境マネジメント ?環境パフォーマンス評価一般指針?・ISO/TRI14032:環境マネジメント ?環境パフォーマンス評価の 実施例?<環境ラベル規格>・ISO14021:環境ラベル及び宣言 ?一般原則?・ISO14021:環境ラベル及び宣言 ?自己宣言による環境主張(タイ プⅡ環境ラベル表示)?・ISO14024:環境ラベル及び宣言 ?タイプⅠ環境ラベル表示原則 及び手続き?・ISO/TR14025:環境ラベル及び宣言 ?タイプⅢ環境宣言(3)ライフサイクル評価に関する関係組織のURL ライフサイクル評価に関する関係組織のURLでは、次のようなものが参考になる。・環境省(総合環境政策局環境経済課製品対策係) http://www.env.go.jp/policy/lifecycle/ lifecycle.html・経済産業省(産業技術環境局 環境政策課 環境調和 産業推進室 ) http://www.meti.go.jp/policy/ eco_business/sonota/policy1-03.html・日本LCA 学会 http://ilcaj.sntt.or.jp/・社団法人日本産業環境管理協会 http://www.jemai.or.jp/CACHE/ lca_index.cfm■一般社団法人日本化学工業協会の動き 日化協は、2009年から2011年にかけて、ライフサイクル評価に基づく温室効果ガス削減に関する各種報告書を発表している。以下にその概要を同協会のホームページに基づいて紹介する。(1)「化学産業が可能にする低炭素化対策の 定量的ライフサイクル評価」 日化協は、国際化学工業協会協議会(ICCA)と共同で、化学工業界の炭素収支のライフサイクル分析結果を発表した(2009 年7 月)。この発表は、ローマで開催された「エネルギーと気候に関する主要経済国フォーラム」に関連して行われたもので、「Innovations for Greenhouse GasReductions=A life cycle quantification ofcarbon abatement solutions enabled bythechemical industry 」と題されている(写真2)4)。(1. 1)概要 この分析では、化学工業界により直接・間接に排出される温室効果ガス(GHG)1単位につき、化学工業界から他の業界と消費者に提供される製品・技術を通じ、2単位以上の排出量削減が可能になると結論している。また、産業界、ステークホルダー、政策担当者による一定の対策を想定した場合、2030年までに、GHG排出削減量と排出量の比率が「4対1」以上に上昇することも分かった。 世界の化学工業界が化学製品のライフサイクルを通じて温室効果ガス排出量に与える影響と、化学製品が用途にもたらす効果を調べるこの調査では、国際的経営コンサルティング会社であるマッキンゼー社(McKinsey & Company)が、第三者による分析とプロジェクト全体の管理を担当した。また、ヨーロッパ有数の第三者環境調査・コンサルティング機関であるエコインスティテュート(Oko Institut)が、分析の審査を実施し、計算値を確認した。 化学工業界は、このような自主的計画に乗り出した世界初の業界である。ICCA 会長を務めるクリスティオン・ジュルカン(Christian Jourquin、ソルベイ社CEO) は、「この調査で明らかになったのは、化学製品のバリューチェーン全体で省エネルギーと正味排出量削減を可能にする製品を製造することにより、世界<写真1> 同報告書の表紙2)<写真2> 同書の表紙4):