メカトロニクス3月号2012年 page 50/60
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50 MECHATRONICS 2012.3日本産業洗浄協議会専務理事 相模環境リサーチセンター 所長 小田切 力「2011 年版ものづくり白書」?資源環境制約への対応が求められる我が国製造業?【第120回】 2011年度の「ものづくり白....
50 MECHATRONICS 2012.3日本産業洗浄協議会専務理事 相模環境リサーチセンター 所長 小田切 力「2011 年版ものづくり白書」?資源環境制約への対応が求められる我が国製造業?【第120回】 2011年度の「ものづくり白書」は、2011年10月25日に閣議決定され、国会提出を経て公表された。この公表日は従来の場合よりも約5ヶ月遅れたが、他の白書と同様、東日本大震災の影響がうかがい知れる。 同書の“はじめに”には、以下のような説明が加えられている。 “我が国製造業の状況をみると、2008年秋のいわゆるリーマンショックを契機とした世界同時不況に伴う生産の急速な減少も、2009年春以降持ち直しに転じ、2010年春には一部の業種では世界同時不況以前の状態に戻るところまできていた。その後、同年夏からの円高の急激な進行、レアアースの輸入量減少や資源価格の高騰などの資源制約に直面し、さらに2011年3月11日に発生した東日本大震災ではこれまでにない甚大な影響を及ぼした。 自動車製造でのサプライチェーンの途絶による長期にわたる生産停止が世界にも及び、また、原子力発電所事故で電力供給が不安定になることで、生産活動への影響のみならず、節電意識の醸成など国民生活にも変化をもたらすこととなった。 その後、同年夏には欧米を中心とした財政の先行き不安が顕著になることでさらに円高が進展するなど、我が国ものづくり産業は電力制約を加えて6重苦ともいわれる状況に直面し産業空洞化の懸念が一層現実に向かうという未曾有の危機に遭遇している。(以下略)” 今回は、本白書の中から、環境問題に触れたいくつかのトピックスの中からその一部を選んで紹介する(写真1)1、2)。■白書の構成(1)目次の構成 同白書は、全体として2部に分かれ、「第1部 ものづくり基盤技術の現状と課題」と「第2部 平成22年度においてものづくり基盤技術に関して講じた施策」から成り立っている。 その詳細目次は表1の如くである(表1)。■本白書で取りあげられた環境問題 本白書では、以下のような部分で、環境問題に関連する話題が紹介されている。(1)“環境制約への対応” 第1部、第2章、第3節に“2. 国内におけるものづくりの高度化”があり、その中の“(4)国内ものづくりの抱える課題”において、以下のように3つの課題の中で環境問題が“環境制約への対応”として取り上げられている。 ①ものづくりの人材の確保・育成 ②製品安全への対応 ③環境制約への対応(2)“主要製造業の課題と展望” 第1部には、その末尾に“第1部付論”として“主要製造業の課題と展望”が付されている。そこでは、26業種の製造業が取り上げられており、その中のいくつかには環境問題にふれた記述がある。(3)“環境性能の高い製品の普及促進等” 第2部、第3章に“第1節 産業集積の推進等”があり、その中の“2. 環境性能の高い製品の普及促進等”において、9項目の事例が紹介されている。 以下にこれら3事項を紹介する。■“環境制約への対応” 地球温暖化問題への対応は、我が国製造業にとっても喫緊かつ最重要の課題の一つとなっている。社会的な環境意識の高まりに伴い、企業は温室効果ガス排出量の抑制などの対応を進めている。 2009年12月と2011年1月の調査について環境制約への対応状況を比較すると、大企業、中小企業ともに環境制約への対応が進んでいることが分かる。特に中小企業では、「環境制約の現状を十分把握していない」という回答の割合が43.7%から32.1%へ減少するなど、各企業が現状の把握に努め、対応を急いでいる様子がうかがえる(図1)。■“主要製造業の課題と展望” 本書の“第1部付論 主要製造業の課題と展望 ”では、26業種の製造業が取り上げられている。特に環境問題にふれた記述を以下に紹介する。(1)鉄鋼産業・温室効果ガスの削減に向けた対応 “我が国鉄鋼産業は、京都議定書目標達成計画の一環として、自主行動計画を策定し、2008 年度から2012年度の5年平均の鉄鋼生産工程におけるエネルギー使用量を、基準年の1990年度に対し、10%削減する目標を掲げている。2009年度のエネルギー消費量は、これまでの省エネ努力に加え、急激な活動水準の落ち込みも重なり、1990年度比17.2%減となり2008年度に引き続き目標を上回った。しかしながら、足下の粗鋼生産量はリーマン・ショック前の水準に回復しつつあるため、今後とも、省エネに対する取り組みの強化等を行うとともに、必要に応じて京都メカニズムクレジットを活用することにより、目標達成を目指すこととしている。 また、我が国が目指す低炭素社会を実現するため、我が国鉄鋼業は「Cool Earth- エネルギー革新技術計画」の中にも選定されている革新的製鉄プロセス技術開発を着実に推し進めている。(2)化学産業・化学製品のライフサイクル評価について 2011年7月、(一般社団法人)日本化学工業協会では「温室効果ガス削減に向けた新たな視点」と題し、国内における化学製品のライフサイクル評価(carbon? LifeCycle Analysis(c?LCA)についての報告書を発表した3) 本報告書は、具体的な化学製品を例に、日本国内における原料採掘から使用・廃棄までのライフサイクル全体から発生するCO2を定量的に評価し、再生可能エネルギー(太陽光発電、風力発電)、軽量化による燃費向上(自動車、航空機)、省エネルギー(LED、住宅用断熱材、ホール素子、配管材料、海水淡水化)の9つの事例で、化学産業の貢献度合いを取りまとめたもの。 低CO2製品の普及がCO2排出量削減において大きな役割を果たすことが明確に示すとともに、環境に優しい低CO2 社会実現には、ものづくりにおけるCO2削減といった部分最適の議論だけではなく、製品のライフサイク全体を俯瞰した、広い視野が重要であることを訴えている。(3)セメント産業・ 地球温暖化対策技術普及等推進事業について 経済産業省では、我が国の優れた低炭素技術・製品を活かし、途上国との具体的な排出削減プロジェクトの発掘とその形成、温室効果ガス排出削減量や測定<写真1>「2011年版ものづくり白書」の表紙1)<表1>「2011年版ものづくり白書」の構成2011 年版ものづくり白書経済産業省・厚生労働省・文部科学省編第1部 ものづくり基盤技術の現状と課題第1章 内外経済が変化する中での我が国製造業の動向 第1節 我が国製造業の動向 第2節 ものづくり労働者の雇用・労働の現状第2章 我が国ものづくり産業が直面する課題と展望 第1節 国際的な構造変化に直面する我が国製造業 第2節 東日本大震災後の我が国製造業の動向 第3節 我が国ものづくり基盤の維持・強化 第4節 グローバル市場の付加価値獲得を 目指す我が国製造業第3章 我が国ものづくり産業の将来を担う人材の育成 第1節 ものづくり産業の将来を担う人材の育成の 現状と課題 第2節 ものづくり産業の将来を担う人材の育成等を 支援・促進する施策第4章 ものづくりの基盤を支える教育・研究開発 第1節 ものづくり人材育成における大学(工学系)、 高等専門学校、専門高校、専修学校の役割 第2節 ものづくり人材を育む教育・文化の基盤 第3節 産業力強化のための研究開発の推進 第1部付論 主要製造業の課題と展望(27業種)第2部 平成22年度においてものづくり基盤技術の振興に関して講じた施策第1章 ものづくり基盤技術の研究開発に関する事項 第1節 ものづくり基盤技術に関する研究開発の推進等 第2節 ものづくり事業者と大学等の連携第2章 ものづくり労働者の確保等に関する事項 第1節 失業の予防その他雇用の安定 第2節 職業能力の開発及び向上 第3節 ものづくりに関する能力の適正な評価、労働条 件の確保・改善第3章 ものづくり基盤産業の育成に関する事項 第1節 産業集積の推進等 第2節 中小企業の育成第4章 ものづくり基盤技術に係る学習の振興に関する事項 第1節 学校教育におけるものづくり教育の充実 第2節 ものづくりに係る生涯学習の振興第5章 その他ものづくり基盤技術の振興に関し必要な事項 第1節 国際協力 第2節 情報通信技術の活用 第3節 ものづくり日本大賞 附属資料 平成23年度においてものづくり基盤技術の 振興に関して講じようとする施策