メカトロニクス2月号2012年

メカトロニクス2月号2012年 page 50/60

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概要:
50 MECHATRONICS 2012.2日本産業洗浄協議会専務理事 相模環境リサーチセンター 所長 小田切 力低炭素社会の実現に向けた国際的な動き?「気候変動枠組条約締約国会議での議論の経緯」?【第119回】 先月号で触れた....

50 MECHATRONICS 2012.2日本産業洗浄協議会専務理事 相模環境リサーチセンター 所長 小田切 力低炭素社会の実現に向けた国際的な動き?「気候変動枠組条約締約国会議での議論の経緯」?【第119回】 先月号で触れた地球温暖化問題に関する国際会議については、この原稿を執筆中に、11月28日から第17回気候変動枠組条約締約国会議(COP17)と第7回京都議定書締約国会合(MOP7)とが、ダーバン(南アフリカ共和国)で開始された。その会議の合意事項が最終日の12月9日にまとまる予定であったが、10日においても依然として修正のくり返しが続き、会期が延長されるという異例の事態となっている。 その間の議論では、過去の経緯を踏まえて、各国が自国の経済、政治の実情に基づく発言を行っており、今回の会議討論を理解するには、過去の事実関係をもう一度思い出す必要がある。 最近の地球温暖化問題の議論では、“低炭素社会”あるいは“低炭素経済”をキーワードとして、一人一人のライフスタイルから始めて、社会的仕組みを改めることまでを考えるようになった。 今回は、“低炭素社会”というキーワードに焦点を合わせ各種議論、組織的活動のトピックスを紹介する。■“低炭素社会”が意味するもの(1)新しい時事用語としての紹介 地球温暖化問題の議論で、“低炭素社会”あるいは“低炭素経済”の言葉を数多く耳にし、かつ読むようになっているが、関係者でない者にはその意味を充分理解する機会がない。新しい言葉を理解するためには、時事用語の年鑑のような定期刊行物があれば、その出版物を過去にさかのぼって検索するのが一つの方法である。その場合には、一般的に広く使われ始めたときに掲載がはじまり、その使用が廃れたときには掲載が打ち切られる場合がある。 一番手近な年鑑(自由国民社発行「現代用語の基礎知識」)によると、以下のような解説が2009 年版にはじめて掲載され、現在まで(2011 年版まで)ほとんど同じ表現で継続している2)。・低炭素社会:二酸化炭素の排出が少ない社会のこと。2007 年5 月に政府が発表した「クールアース50」において、生活の豊かさの実感と二酸化炭素の排出削減が同時に達成できる社会の姿として提唱された。2008 年7 月には、低炭素社会への具体的な道筋を示した行動計画が閣議決定されている。→美しい星50(2)新しい言葉の誕生の経緯 “低炭素社会”という新しい言葉が生まれた経緯については、藤野純一氏(国立環境研究所地球環境研究センター)の解説が参考になる。以下はその抜粋である3、4)。①使用の経緯:イギリスは2003年のエネルギー白書において“低炭素経済(Low CarbonEconomy)”という言葉を使った。日本においては、2004 年4 月から5 年計画で、2050 年までの日本の温室効果ガス排出量の大幅削減を目指す「脱温暖化2050 プロジェクト」を開始した。2005年3月に主催した国際ワークショップで“低炭素社会(Low-Carbon Society)”という言葉を初めて公式に使い、2007 年頃から本格的に使い始めた。②定義:明確な定義は存在しないが、2006年に東京 で開催された「日英低炭素社会共同研究プロジェ クト」の第1回ワークショップで、以下のような定 義が提唱された。 a)社会のあらゆる階層が必要とする発展を保障し  ながら、持続可能な発展の原則に則った行動を  とる社会b)大気中の温室効果ガス濃度を、気候変動による  危機的な状態から回避するレベルに安定化させ  るための、公平な貢献を行う社会c)エネルギー効率をさらに高められることを実証  し、低炭素なエネルギー資源と製造技術を使う  社会d)温室効果ガス排出の少ない消費/行動様式をと  る社会■「環境白書」で取り上げられた “低炭素社会”について(1)「2007 年版環境白書」 “低炭素社会”とい言葉が「環境・循環型社会白書」に登場したのは、2007年版からである。その頃は、京都議定書が発効して2 年経過し注1)、温室効果ガスの排出削減についての議論が高まって、地球を守るために“低炭素社会”を作り上げることが必要であると、“低炭素社会”が時代のキーワードとして多用される環境が生まれていた。注1)京都議定書は、1997 年12 月に採択され、1995 年2 月に発効した。 本節以降、各年度の低炭素社会にまつわるトピックスを紹介するが、特に*)印を付したものは、環境白書に記載されていない重要事項である。 「2007 年版環境・循環型社会白書」は、“第1 部 総説”が2 部構成となっており、その一つ“総説1 進行する地球温暖化と対策技術”の末尾に“むすび 低炭素社会を目指して”を付け加えて、政府が新たに提案した「美しい星50(クール・アース50、Cool Earth50)」を紹介している(本件は2007 年5 月25 日の提案であり、本来は2008 年版の白書で紹介されるものであるが、急遽追加された模様)5)。① 2006年6月13?16日:日英共同研究脱温暖化 プロジェクト「持続可能な発展につながる低炭素 社会ビジョンの構築」公開国際シンポジウム及び の第1 回ワークショップ② 2007 年2 月15 日:「2050 日本低炭素社会シナ リオ」*) 日本低炭素社会プロジェクトチームは、環境省地球環境研究総合推進費による戦略的研究プロジェクト「脱温暖化2050 プロジェクト」の成果として、「2050 日本低炭素社会シナリオ:温室効果ガス70 %削減可能性検討」を発表6)。③ 2007 年5 月25 日:安倍内閣総理大臣は「クール アース50」を提唱 「クールアース50(Cool Earth 50)は「美しい星50」とも呼ばれ、「21 世紀環境立国戦略」の中核になるものとして、「低炭素社会」の実現と結びつけて提唱され、以下の3 つの柱からなる。【提案①:世界全体の排出量削減のための長期戦略の提唱】 ・「世界全体の排出量を現状から2005 年までに半  減」という長期目標を世界共通目標として提案。 ・その達成のため、「革新的技術の開発」と「低炭素  社会づくり」という長期ビジョンを提示。【提案②:2013 年以降の国際的枠組み構築に向けた「3原則の提唱】【提案③:京都議定書の目標達成に向けた国民運動の展開】(2)「2008 年版環境白書」 「2008 年版環境白書」では、“低炭素社会”が新しいキーワードとして大きく取り上げられた。 すなわち、“第1 部 総説”の中の二つの総説の一つは“総説1 低炭素社会の構築に向け転換期を迎えた世界と我が国の取組”としてまとめられている。この白書の対象期間(2007年4月?2008年3月)では、以下のような低炭素社会に関連するトピックスが紹介されている7)。①2007年6月1日:「21世紀環境立国戦略」閣議決定② 2008 年3 月25 日:「第2 次循環型社会形成推進 基本計画」閣議決定③ 2008 年3 月28 日:「改定京都議定書目標達成計 画」閣議決定(3)「2009 年版環境白書」 環境白書における“低炭素社会”の説明は、2008年版では白書全体をとりまとめを行うような位置づけであったが、2009 年版白書以降は、地球温暖化問題の現状と具体的な施策をまとめる一章の表題として使用されるようになった。 「2009 年版環境・循環型社会白書」8)における“第2 部 各分野の施策等に関する報告”で、地球温暖化問題は“第1 章 低炭素社会の構築”として、以下のような構成で解説されるようになった注2)。注2)単一下線の部分は、2011 年版で追加された個所、二重下線の部分は、2009 年版のみに記されている個所を示す。・第1 章 低炭素社会の構築 第1 節 地球温暖化問題の現状  1 問題の概要  2 地球温暖化の現状と今後の見通し  3 日本の温室効果ガスの排出状況   (確定値)  4 フロン等の現状<写真>COP17の会場周辺の光景1)