メカトロニクス1月号2012年

メカトロニクス1月号2012年 page 51/60

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MECHATRONICS 2012.1 51削減義務を負う国は、日欧など現在の世界全体の排出量の27%しかカバーしておらず、2050年には2割を下回る見込みである。いわゆる単純延長がなされれば、削減義務を負う国が固定化し全ての主要....

MECHATRONICS 2012.1 51削減義務を負う国は、日欧など現在の世界全体の排出量の27%しかカバーしておらず、2050年には2割を下回る見込みである。いわゆる単純延長がなされれば、削減義務を負う国が固定化し全ての主要排出国が参加するモメンタムが低下するため地球温暖化の防止に逆行する。 「コペンハーゲン合意」(カンクンCOP16 で正式決定)には、世界の排出量の8 割以上をカバーする国々が参加した。各国が取り組む削減目標・行動を国際的に約束(プレッジ)し、その達成度合いを国際社会が評価・検証(レビュー)する仕組み(ボトムアップ型のプレッジ・アンド・レビュー方式注1))こそ、国際枠組を構築する上で現実的かつ有効なアプローチであり、地球温暖化対策として極めて現実的で、即効性にも期待がもたれる(表1)。注1)参加各国が自発的に削減目標・行動計画を提出、誓約(pledge)し、目標達成に向けた取組みの状況を国際的に検証(review)する仕組み。 その際、先進国・途上国の削減努力の透明性および実効性を確保するため、適切なMRV(測定・報告・検証)の仕組み注2)を確立し、実践する必要がある。(注2)温室効果ガス排出削減の実施状況を測定(Measurement)、国際的に報告(Reporting)、その削減状況を検証(Verification)する仕組み。これにより各国の排出削減行動の透明性・正確性の確保が可能。COP16で採択されたカンクン合意において、先進国は、削減目標の達成状況について強化された指針に沿って排出削減量等を報告し、比較可能性の促進と信頼性の向上のために国際的な評価プロセスを行うこと、発展途上国は、国際的な支援を受けずに行った削減行動に関し一般的な指針に沿った国内でのMRVを経て、国際的な協議および分析(ICA:International Consultation and Analysis)を行うとともに、国際的な支援を受けた削減行動に関しては指針に沿って国際的なMRVを行うこととされている。3.地球規模の低炭素社会実現策3.1 BATの普及と革新的技術の開発・実用化 環境と経済を両立させつつ、2050 年世界半減目標の鍵を握るのは技術である。世界各国が経済発展を目指しながら、温室効果ガスを大幅に削減するためには、既存の低炭素型の技術、製品・サービスの普及、ならびに、温室効果ガス排出量の大幅削減を可能とする革新的技術の開発・実用化が不可欠である。 とりわけ日本をはじめ先進国は、既存の最先端の技術(BAT:Best Available Technologies)の不断の改善を図りながら、その最大限の普及に取り組む必要がある。同時に、意欲ある途上国への技術移転が円滑に実施される環境の整備が重要である。 日本の主要産業のエネルギー効率は世界最高水準を維持しており、わが国のBATが世界に普及した場合、2020年時点で世界のCO2排出削減量は約63億トンとの推計もある。この削減ポテンシャルの顕在化に向けて官民が協力していく必要がある。その際、エネルギー需要管理の観点から、省エネラベリング制度やエネルギー管理士制度、トップランナー方式など日本独自の省エネ制度を、日本企業の持つ低炭素技術とともに、途上国に展開していくことが望まれる。 併せて、ブレークスルーとなる革新的技術の開発を、長期的観点から着実に推進すべきである。こうした技術の中には、基礎研究から開発・実用化までに長い期間と巨額の費用を要し、一国で行うには限界があるものが多く、先進国のみならず、新興国等も含めた国際的な共同研究を行うことが望ましい。そこで、2050 年半減に必要な基盤的技術の開発のロードマップを国際的に共有し、連携を図りながら、産学官共同の研究開発を推進することが重要である。 以上の観点から、カンクン合意で設立が決定された技術メカニズム(技術執行委員会と気候技術センター・ネットワークで構成)は、排出削減や適応のたの技術の開発と移転を促進するものであり、早期の具体化を期待する。3.2 資金面・技術面での二国間・多国間協力の推進(1)CDM(クリーン開発メカニズム)を補完する  二国間オフセット・メカニズムの推進現行のCDMは、途上国側の要望が強い省エネ技術がプロジェクトの対象として認められにくいなど、途上国のニーズに即した温暖化対策を支援する上で、様々な障害がある。加えて、審査に膨大な時間を要するなどの問題もあり、CDM を通じた先進国から途上国への技術移転は、期待通りに進んでいない。 この点、二国間協議のもとで途上国側のニーズを十分勘案しながら省エネ・低炭素化プロジェクトを形成し、技術移転の結果として実現した排出削減の一部をわが国の貢献分として評価する二国間オフセット・メカニズムは、CDM を補完し得る仕組みとして有効である。 同メカニズムと、省エネ基準の設定等の途上国における政策策定・制度設計、さらにはJICA(国際協力機構)やJBIC(国際協力銀行)などのファイナンス支援策などをパッケージ化することにより、さらなる実効性の向上が期待される。 同メカニズムについては現在、アジア諸国を中心に、プロジェクトの組成に向けたフィージビリティ・スタディ(事業可能性検証)事業や二国間交渉が着実に進展している。今後、インドネシアにおける気候変動プログラムローンの成果なども踏まえ、現地企業のニーズを勘案したツーステップローン注3)実施など通じて、わが国企業の技術・ノウハウ移転を促進していくことが重要である。注3)貸し付け相手国の開発金融機関を通じた二段階借款。(2)実効ある資金支援(ア)わが国は、気候変動対策を積極的に進める途上国等に対する支援として、官民合わせて150 億ドルの短期支援を表明し、既に97億ドルの支援を実施している(2011 年3 月末現在)。排出削減などの気候変動対策に取り組む途上国、ならびに気候変動の影響に対して脆弱な途上国を支援する観点から、今後とも、官民協力して、できる限りの協力を行っていくべきである。 その際、とりわけ多国間ベースの資金協力は、「日本の顔が見えない」、「納税者への説明責任を果たしていない」などの指摘が後を絶たないことにも考慮し、日本政府は、その意義や効果などを国民に明確に説明していく必要がある。(イ)多国間資金支援の枠組については、カンクン合意で「緑の気候基金」(GCF:Green Climate Fund)の具体化が決定され、現在、制度設計に向けた議論が行われている。GCF は、排出削減に取り組む途上国や気候変動に脆弱な途上国が必要な資金を確保する上で、今後、重要な役割を果たすことが期待されている。 具体的な制度設計にあたっては、GCF による支援が受取国の環境改善に果たした効果を客観的に評価できるとともに、GCF を触媒に先進国からの投融資が促されるような仕組みとなることが重要である。そのためにも、温室効果ガス削減量を定量化し、透明性を確保するためのMRV と資金援助とを一体化した仕みを、技術を有する産業界の意見も踏まえ検討すべきである。(以下略)5.終わりに 経団連は、わが国がこれまで多様な分野で培ってきた世界最高水準の低炭素技術を土台とし、2050年の世界の温室効果ガスの半減に日本の産業界が技術で中核的役割を果たすことを目標に、「低炭素社会実行計画」を今後とも推進していく。 同計画の下で、①企業活動におけるBAT の最大限導入、②消費者に対する世界最高水準の製品・サービスの開発・実用化、③海外への技術・ノウハウの移転、④革新的技術の開発を通じて、地球規模の低炭素社会の構築に主体的かつ積極的に取り組む決意である。(2011.11.13記)<参考資料>1)日本経団連:「地球温暖化防止に向け真に実効ある国際枠組を求める? COP16に対する期待?」(2010 年11 月16 日)2)Nippon Keidanren:「THE BEST WAY FORWARD - AProposal to Help Prevent Global Warming」経済広報センター(2007.12)3)経団連の関連ホームページ・【政策提言・調査報告】の欄http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/・【((財)経済広報センター:地球温暖化対策と産業界の取り組み】の欄 http://www.kkc.or.jp/ondanka/thought/page2-1.html <図1>トップダウン型とボトムアップ型の比較1)