ブックタイトル実装技術7月号2021年特別編集版

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概要

実装技術7月号2021年特別編集版

45部に出るので、両層は透明でなければならない。一方で、上部電極と保護絶縁層は、必ずしも透明である必然性はない。製造のプロセスフローは図2のようになる。主要なプロセスといえば、スクリーン印刷と、乾燥焼成だけで、量が少なければ、印刷機と熱オーブンだけで、極めて簡素なものである。しかし、この厚膜印刷と熱処理のプロセスを繰り返すだけで、さまざまなEL 発光デバイスを作ることができる。 下部電極を印刷形成する代わりに、市販のITOフィルムを使えば、工程はさらに簡素になる(図3、図4)。市販のITOフィルムと呼んでいるのは、少し厚めのPETフィルムに、スパッタリングなどで、薄いITOの皮膜を形成したもので、透明であると同時に、表面には導電性がある。市販のITOフィルムを下部電極として使えば、プロセスはさらに簡略化される。ただし、ITO薄膜のパタン加工には、特殊なプロセス技術が必要なので、むしろ、ITO層には手を加えずに残し、上部電極の方にパタン加工を施こすことで、フレキシブルなEL 発光体を作ることができる。この場合、上部電極が透明である必要性はない。フレキシブルEL発光体モジュールとしては、この後外形加工などの付加プロセスを行い、最終的に電源に繋いで、完成となる。ちなみに、電源としては、交流が使われる。 図5に示したのは、PETフィルム上に形成した無機EL発光体の実施例である。この構成は、印刷に使うスクリーン版が使えるのであれば、いくらでも大きなフレキシブル発光体シートを作ることができる。A2、B2ぐらいのサイズであれば、RTRでの量産も十分可能である。一方、市販されている無機EL 発光体インクに使われている発光体の粒径分布はかなり幅が広く、0.2~0.3mmぐらいの不均一な点が、出てしまう。それでも、現実的な製造コストを考えると、メートルクラスの大型面状発光体としては十分使えるであろう。 下部電極としてITOフィルムを使用した場合に懸念されるのは、耐屈曲性である。さすがに、180°曲げを行えば、ITO層にクラックを生じ、やがて断線に至るが、図6に示されているように、半径10mm程度の曲率をとってやれば、百万回クラスの屈曲や摺動に、十分耐える能力を持っている。3. フレキシブルディスプレイへの道 上に説明した無機フレキシブルELでは、下面から光を発するので、基材となるベースシートと、下部電極は透明であることが必要条件であった。しかし、今後の用途展開を考えると、上面から光を発する構成も必要になって来ることが予想される。それでも、現在利用可能な厚膜印刷技術、インク材料を駆使すれば、十分実現可能な範囲にあるといえる。ただし、図7に示されているように、上部電極や絶縁保護層は透明で、かつ均一であることが必要である。 さらに一歩進んで、フレキシブルなELディスプレイを厚膜印刷プロセスで作るとなると、どうであろうか。ディスプレイ図5 フレキシブルな印刷ELの面状発光体図6 繰り返し摺動が可能なフレキシブルEL面状発光体 図7 厚膜印刷で不透明基材の上に形成するフレキシブル無機EL素子