ブックタイトル実装技術6月号2021年特別編集版
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実装技術6月号2021年特別編集版
ます(図6)。 メタマテリアルによるアンテナは、このような波長による共振とはまったく別の原理で動作します。アンテナとして構造をもつ伝送線路パターンにメタマテリアル構造(図7)を構築すると、特定の周波数に対して、一般の右手領域から左手領域に変化します。この周波数がアンテナ構造の共振周波数になります(図8)。 このメタマテリアルを使ったアンテナの周波数は波長ではなく、メタマテリアルを作る構造の大きさによって決まります。このため、構造を小さく作れば、波長よりずっと低い周波数で共振させることができます。 アンテナアレーの小型化や、小さな機器へのアンテナ組み込みなど、多くのアンテナをアレーで配置するなど、アンテナの小型化にはメリットがあります。 しかし、メタマテリアルを使ったアンテナには欠点もあります。メタマテリアルでは、微細なL、C回路素子を伝送線路に作り込みますが、当然、L、C 素子による損失が発生します。同様に負の誘電率を持つ微細な金属ワイヤーに電磁波を通してメタマテリアルを作る手法でも、界面での損失が生じます。 メタマテリアル・アンテナは、小型化ができますが、アンテナ自体の損失が大きくなり、アンテナ効率が悪くなります。メタマテリアル・アンテナでは、損失を小さく抑えながら、どれだけ小型化ができるかが開発の要点になります。 次に、メタマテリアルのフィルタへの応用ですが、メタマテリアルを使うことにより、これまで一般に使われてきた L、C、R フィルタとは異なる特性を持つフィルタが作れます。共振周波数の設定や特性、動作原理について、いろいろな発表がなされています。4. 電磁波の「光」的性質 メタマテリアルによって電磁波通信の世界に「光学」的な考えが導入されました。 「光学」の考え方、つまりミリ波や高周波帯に「鏡」や「レンズ」の技術を適用するアプローチです。 同じ電磁波といってもミリ波を始めとする無線通信領域の電磁波と、「光学」で扱う光の領域では、周波数(波長)に大きな違いがあります(図9)。このため、光学領域で普通に使われている「鏡」や「レンズ」は無線通信領域ではあまり使われてはいません。 たとえばマイクロ波で使われるパラボナアンテナは大きなパラボナを反射機(ミラー)として、受信アンテナに電波を収束して受信感度を高めています(図10)。地上波テレビの受信アンテナとして使われている「八木・宇田アンテナ」も後ろにある最も長いアンテナは反射器になっています(図11)。しかし、波長が長いミリ波を含めたマイクロ波では反射器は大きく、効率が悪いため、その有効性は低いものです。 メタマテリアルを利用することにより、効率の良い「レンズ」や「ミラー」が作れるようになります。 ミラーを使うと、ミリ波を反射することができます。 レンズを使うとミリ波を集束させることができます。前田真一の最新実装技術 あれこれ塾図5 右手系と左手系図6 アンテナ長と波長図11 八木・宇田アンテナ図10 パラボナアンテナ( 那覇空港測候所HP)図8 右手系領域と左手系領域図7 伝送線路にLとCを配置する図9 電磁波の波長と特性63