ブックタイトル実装技術6月号2021年特別編集版
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実装技術6月号2021年特別編集版
561. はじめに 前回は、厚膜印刷回路技術を使って製作する機能部品の中から、現在最大の用途になっているメンブレンスイッチについて紹介した。 メンブレンスイッチの基本構成は、40年以上前に実用化され、その後、主要用途として、電子レンジのタッチパネル、パーソナルコンピュータのキーボードなど、成長市場で採用されたために、順調な立ち上がりを果たすことができた。 その後、現在に至るまで、新しい機能が加わり続け、用途も事務機、家庭電化製品、白物家電、産業機器、医療ヘルスケア機器などの分野で、スイッチングデバイスとして、圧倒的なシェアを維持している。 その開発実用化経緯をレビューしてみると、新しい電子材料を活用して、新しい電子デバイスを開発し、商品化されるまでの過程を作り上げるヒントになるであろう、 今回からは、厚膜印刷技術を使って形成するオプティカル(光学)デバイスについて紹介することにしたい。この30年間で、さまざまな光学デバイスが開発、実用化されてきており、その多くが、最終的にフレキシブルであることを目指している。2. オプティカルデバイスの分類 近年エレクトロニクス技術に光が関与するデバイスが著しく増えている。人は、電気や電気信号を直接感知することは難しい。 しかし、電気を光に変換すれば、人は、光から信号やエネルギーを感じ取ることができる。人間の目は、高い情報密度の光信号を感じ取ることができる。人間は外部情報の大部分を視覚によって(つまり光信号)得ている。 その究極のデバイスが、液晶を始めとするフラットディスプレイで、現在でも新しいディスプレイデバイスが開発されてきている。 新しいデバイスにおいては、厚膜印刷プロセスの寄与が大きくなってきており、製造工程の主要な部分を、厚膜印刷が担うことも珍しくない。 フレキシブルな光学デバイスは、大きくふたつのカテゴリーに分類される。 最初のカテゴリーは、電気を光に変換するもので、LED のように、デバイスが光を発するものと、液晶ディスプレイのように、素子自身は発光せずに、他の光源により、照らし出されるものとがある。 もう一つのカテゴリーは、光を電気に変換するもので、これもまとまったエネルギーを扱うものと、情報伝達の手段として扱うものに分けられる。前者の例としてあげられるのが、太陽電池であり、後者の例としては、光センサやイメージセンサなどがあげられる。3. 透明導電体回路 これらの光デバイスを設計製作する上で、重要になってくるのが、透明な電極、つまり光を通す基材と導体である。 これまで、液晶ディスプレイの透明電極としては、透明なガラス基材の上に、ITO(インジウム錫酸化物)薄膜を形成し、これを回路形成する工法が広く使われてきている。 しかしながら、ITO薄膜は、フレキシビリティが低く、今後需要が急増すると考えられる曲げられるディスプレイなどで安定して性能を発揮できるか不安がある。 ここで使われているインジウムは、レアアースの一つであり、国際情勢によって安定供給に不安があり、市場価格の変動幅が大きくなる傾向にある。 また、ITOは、主にスパッタリンングなどで、ガラスやプラスチックフィルムの上に薄膜形成されるが、その加工費がなかなか下がらない。わかりやすい厚膜印刷回路入門~初歩から最新技術まで~第10回 オプト回路(その1)オプティカル回路DKNリサーチ / 沼倉 研史