ブックタイトル実装技術6月号2021年特別編集版

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概要

実装技術6月号2021年特別編集版

37非接触はんだ付け装置『S-WAVE』のIH高速熱流束制御による多様な省エネ実装実装プロセステクノロジー  2    発熱の仕組みと特徴1. 誘導加熱による端子加熱の仕組み(自己発熱) 図1-1の(1)にS-WAVEの磁気集中ヘッド先端部の概略図を示す。コイルに高周波交流電流を加えることで、コイル周辺に強磁界を作り出す。コイル外周に沿ってフェライトコア(以降コアと呼ぶ)を配置することで、コア内の磁束密度を高め、コアの一部を切欠いたところ(GAP)に端子を配置することで、端子内にはコアからの磁束を打ち消すように渦電流が生じる。端子素材が有するオーミック抵抗(R)に渦電流(I)が流れることでI2Rの損失が生まれ、ジュール熱となって端子が発熱するのが誘導加熱である。 つまり端子内に電流を誘起して「自己発熱」させているのであり、これがS-WAVEを使いこなすための核となる概念である。 図1-1の(2)にGAP内銅板の渦電流密度ベクトルの解析例を示す。これが銅板ではなく細い端子であっても、同様に高密度の渦電流が生じて発熱する。 図1-2はコアの下面に金属板を配置した場合である。下面への磁束を積極的に増やすコア形状にしているので、下面の金属板にも渦電流を誘起することができ、比較的小さな熱容量の端子であれば、はんだ付けが可能である。またこの仕組みは、スルーホール基板においてもランドやスルーホールを積極的に加熱するので、はんだ付け性を高めることにも寄与する。 GAP間およびGAP下面に配置された金属に誘起された渦電流は、周波数が高いほど金属の表面に偏る性質があり(表皮効果)、電流経路断面積が小さくなることで実効抵抗値が増加する。この特性を利用すれば、銅などの抵抗率の小さい金属に対しても十分な発熱電力が得られ、はんだ付けが可能になる。そのためS-WAVE301は、750kHz?1100kHzの高周波駆動に設定している。2. 磁気集中コアの効果 S-WAVE301 の特徴は、閉磁路のコアを活用し、IHとしては小さな150A以下の電流でワークを発熱させることである。その結果、加熱短時間の消費電力は240W以下に抑えられ、ユニットの小型化と無効損失の低減が実現し、効率の高いシステムに仕上がっている。これは運用時の省電力化をもたらすだけでなく、ユニット製造時の材料使用量とエネルギーロス低減にも寄与している。 また小さな電流は周辺磁界レベルを低減し、周辺装置への熱やノイズの影響を小さくするので、対策材料が不要になる。同時に人体への影響も抑えるので、より環境負荷が低く安全性の高い実装装置に仕上げられるのである。(株)スフィンクス・テクノロジーズ写真2 磁気集中ヘッドコイルコアGAP図1-1 GAP間金属面加熱磁束コア端子渦電流高電流密度高周波コイル電流(1)電流および磁束経路 (2)渦電流密度ベクトル図1-2 GAP下金属面加熱磁束コア渦電流高電流密度高周波コイル電流(1)電流および磁束経路 (2)渦電流密度ベクトル金属板