ブックタイトル実装技術5月号2021年特別編集版
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実装技術5月号2021年特別編集版
これあれ塾前田真一の最新実装技術連 載第122回 メタマテリアル1. メタマテリアル 最近、5G通信やさらなる次世代通信で、「メタマテリアル」が注目され始めています。 「メタマテリアル」とはあまり聞き慣れない言葉ですが、2000 年にアメリカのDr.R.Smithが発表した言葉で、まだ20 年の歴史しかない、新しい研究分野です。 メタ (meta-) はギリシャ語の「meta」から来た接頭語で、の「超越した」とか「高次」を意味します。 「メタボ」「メタ小説」「メタフィクション」「メタ知識」「メタ認知」などいろいろな言葉に「メタ」か付けられた造語がたくさんあります。 「メタマテリアル」も一般の物質を超えた「性質」をもつ「超物質」の意味で名付けられました。 具体的には、この「性質」は「電磁的な性質」を指します。 電磁波的な性質や検討は「光」から「ミリ波」「マイクロ波」果ては「伝送線路」の領域まで及びます。 これら全ての領域で「メタマテリアル」の影響が及びます。 1968 年にロシアの Dr. ヴェセラゴが物質の誘電率と透磁率が「マイナスの値」になった場合、どのような現象が起きるのかを、考察しました。 もちろん、こんな物質は存在しないので、純粋に理論的な立場からの考察です。 しかし、2000 年にアメリカのDr. R.SmithがDr. ヴェセラゴが考察した現象を実証実験で実現させました。 具体的には、電磁波が大気(真空)からある加工を施した人工的な物質に伝搬する時、屈折率 n が「負」の値を取った現象を確認しました。この現象を発生させる物質を「メタマテリアル」と名付けました。 これは、大袈裟にいえば、これまでの相対性理論を覆す発表で、世界的なセンセーションを引き起こしました。 そして、その後、多くの研究者が追試験を行い、「誘電率」「透磁率」が「負」の値をもつ現象が確認されました。 光を含めた電磁波が異なる物質間を伝搬するときの屈折率 n は2つの物質間の比誘電率(ε)と比透磁率(μ)で決まります。 n=√ε×√μ 誘電体では一般に非磁性体であり比透磁率μは「1」です。 つまり、電磁波の屈折率 n はほぼ比誘電率 ε だけで決まり n=√ε となります。 これは、よくご存知の誘電率 ε の物質内での電磁波(光)の伝搬速度 σ は真空中の電磁波の伝搬速度 c とすると、 σ = c/√ε 式の変型した式です。 この伝搬速度の違いが空気(真空)と物質の界面で屈折を発生させるわけです(図1)。 通常の誘電体物質では比誘電率は1より大きいので、屈折率は「1」以上の値となります。 電磁波を伝搬しない 金や銀をはじめとする、金属などは比誘電率がマイナスの値を取るものもあります。しかし、これらの物質は、電磁波を反射させたり、熱にエネルギー変換したりして、物質内部には電磁波は透過しません(図2)。 真空以外の誘電体間での電磁波の伝搬では、屈折率は両者の誘電率比になるので、屈図1 屈折図2 金属と電磁波図3 屈折率52