ブックタイトル実装技術5月号2021年特別編集版
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実装技術5月号2021年特別編集版
361. はじめに 現在のデジタル化は、情報技術(IT:Informationtechnology)から情報コミュニケーション技術(ICT:Information Communication Technology)に移行し、デジタル・トランスフォーメーション(DX)に進化してきている中、我々の暮らしを、より安心・安全なものにするために、といった構造物(建物、ビル、橋、道路)から自動車、鉄道、船舶、飛行といった人工物(Artifact)の健全性や防災というキーワードが重視されている。 こうした状況の中で、本連載「デジタル式音響コム型アコースティック・エミッション(Acoustic Emission、以下AEと略す)センサの開発とそのインフラへの適用について」の第1回ではAE の人工物・インフラへの適用と非破壊検査についてについて述べた。 また、AEについて触れる前に、その全体像を見てくため。非破壊試験の概略を見た。つまり、AEは非破壊試験法の一つの方法であり、非破壊検査におけるAE の位置付けとその意義が理解されたかと思う。 そこで、本稿では、AEについての基礎を理解していただくために、 AE および音とはなにか、 また、AE、音に関連する単位、そしてAE 計測の概要について紹介する。2. AEおよび音とはなにか?1. AEとは AEとは、Acoustic Emission(アコースティック・エミッション)の略で、直訳すると、音響放射のこと、すなわち、外力によって固体の物体が変形あるいは破壊に至る際に発生する音(弾性波)の放出、放射のことである。身近なAE現象のいくつかを例に上げて見よう。 例えば、図1に示すように、そば屋やラーメン屋などで「割箸」を割るときに生じるバリッという音、「たくわん」を食べるときのポリ!ポリ!という音、「お茶碗」を落としたときのパリンという音。また、「地震」が来て柱がミシミシいう音、はたまたその地震そのものもスケールの大きいAE現象ともいえる。 つまり、このような割箸、茶碗、たくわん、柱、地面といった物体がある外力などによって変形あるいは破壊に至るときに発生する音(音波)をアコースティック・エミッション(以下AEと略す)という。 このような音を弾性波(※ 1)といったり、圧力波といったりする。 このような音を弾性波(elastic wave)、あるいは圧力波(pressure wave)という。ところで、弾性波とは、弾性体(物体に力を加えると変形をおこし、その力を取り除くと元の形に戻り変形が残らない物質)内を伝わる波である。 弾性波には図2に示すように縦波(longitudinal wave)と横波(transverse wave)とがある。前者は粒子の振動(弾性媒質の変位方向)が波の進行方向に平行で、体積の疎密変化に伴う体積弾性によって生ずる疎密波で、地震などではP波という。後者は粒子の振動が波の進行方向に直角で、デジタル式音響コム型アコースティック・エミッション(AE)センサの開発とそのインフラへの適用について第2回 AEおよび音とはなにか、AE計測の概要について(株)武藤技術研究所 / 武藤 一夫図1 アコースティック・エミッション(AE)現象の身近な代表的な事例1)割箸たくわん茶碗地震