ブックタイトル実装技術1月号2021年特別編集版

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概要

実装技術1月号2021年特別編集版

541. はじめに 大電力を扱うパワーデバイスは、電力変換の中枢となる半導体チップの発熱が著しい。SiC製チップの場合、実用最高温度は250 ℃を超えるとされる。 このため、半導体チップの多大な発熱を、どれだけ効率的に外部に逃がせるかという点が製品寿命に直結するため、熱抵抗は極めて重要となる。 熱抵抗は、温度の伝えにくさを表す値で、単位時間あたりの発熱量あたりの温度上昇量を意味し、単位は「K/W」となる。一般的な熱抵抗測定方法は、均質材料の評価を想定しており、評価対象物の片面を加熱し、反対面の温度や熱流を測定して、対象物全体の熱抵抗を求めている。 しかしながら、パワーデバイスの場合は、発熱源はチップとなるため、面での加熱は実態に即さない。パワーデバイスの熱抵抗を測定する際には、チップ自体を加熱源とすることが望ましい。 この要求に応える熱抵抗測定方法が2通り挙げられる。JPCA熱抵抗測定法とJEDEC過渡熱抵抗測定法である。両測定法の概要を説明すると共に、同一のサンプルに対して両測定法を行った結果に対する比較および考察を述べる。2. JPCA熱抵抗測定法1. JPCA熱抵抗測定方法および測定装置 JPCA-TMC-HR02T-2017「自動車電装用及びパワーデバイス用高放熱性電子回路基板試験方法」に記述される測定方法である。 JPCA-TMC-LED02T-2010「高輝度LED 用電子回路基板試験方法」をベースとし、LED用放熱性基板用の測定方法を、パワーデバイス用放熱性基板に適用できるように改訂した内容である。本稿ではJPCA 熱抵抗測定法と呼ぶ。測定原理の概要を図1に示す。 JPCA 熱抵抗測定法では、LED 用基板ないしパワーデバイス用基板の運用を模して、基板上にヒータチップを設置し、電力を供給することで発熱させ、加熱源とする。基板表面にはヒータチップの設置および給電回路のための銅箔パターンを設ける。 ヒータチップは測温抵抗体であり、発熱中の抵抗値を測定することで、チップ固有の温度特性に基づき、実際のチップ温度を求めることが出来る。 発生した熱はチップが設置されたサンプルに伝導し、従ってチップの温度は下がる。この際、サンプルの熱抵抗が高ければ(放熱性が悪ければ)、チップ温度の低下幅は小さくなり、サンプルの熱抵抗が低ければ(放熱性が良ければ)、チップ温度の低下幅は大きくなる。チップ温度が常に約80℃となるように供給電力を調整する。 チップ温度約80 ℃(353K)を、チップ温度が約80℃となるために要した供給電力量(W)で除することによって、サンプルの熱抵抗を算出する。サンプルの熱伝導状況が定常状態に至るまで1 時間程放置した後の測定結果を用いる。サンプルに定常的な熱を与えるという点で、定常法的な熱抵抗測定法といえる。 JPCA熱抵抗測定法のユニークな点は、図1に示すように、面方向の熱抵抗と、厚み方向の熱抵抗を区別する点である。電子回路基板の放熱性能は、構成材料の熱抵抗値だけでは表現できず、表面からの対流や放射にも影響され、更に実装構造の状態にも大きく依存する。パワーデバイスの熱抵抗測定法?JPCA熱抵抗測定法とJEDEC過渡熱抵抗測定法の比較?(株)ケミトックス / 住田 智希、 須藤 正喜図1  JPCA熱抵抗測定法の概要