ブックタイトル実装技術5月号2020年特別編集版
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実装技術5月号2020年特別編集版
16環境関連技術123 はじめに 今や環境問題は地球規模で対策が迫られる時代となってきた。今回は、世界規模で対応をせまれている環境問題を解説するにあたり、過去の環境問題を鳥瞰しつつ実装業界に環境問題が提起されたのは、どんなものがあったかを振り返ってみる。そして、その対策がどのように進展したかを解説してみる。最後に、これから新たな環境規制がもたらす産業界へのインパクトなどを予測してみたい。 環境規制の進展 日本で環境問題が提起されたのは、足尾銅山の鉱害問題から端を発した。解決のために国会で訴え、さらに自ら谷中村に移住して対応したのが田中正造である。最後は明治天皇に直訴までして対応した1)。 その後、高度成長期には大気汚染、水質汚染等で四日市喘息、水俣水銀、イタイイタイ病などと多くの公害が発生した。解決するために様々な手が打たれた。 実装業界における 環境規制の対応の始まり2) では、実装業界で環境規制に対して対応が始まったのは、何かというとオゾン層破壊物質の削減で実装業界にも対策が浮上した。その背景についてまず紹介したい。 1960年頃からフロンガスは冷蔵庫の冷媒や断熱発泡剤として先進国を中心に使用され、冷蔵庫の普及、さらにはエアコンの普及に伴って使用が拡大した背景がある。 このような状況の時に、1974 年、F. S. Rowland教授(カリフォルニア大学)らにより、フロンガスがオゾン層破壊の原因との論文を発表した。 この論文発表を契機にオゾン層破壊物質問題は、他の地球環境問題に先駆けて国際的に検討されるに至った。1985年には「オゾン層保護のためのウィーン条約」が採択され、1988年に発効された。 具体的な規制プランは条約に基づく議定書に委ねることになり、1987年に「モントリオール議定書」が採択され、1989年に発効した。 この締結にともなってフロンはオゾン層破壊物質でもあることから実装業界でも使用廃止が叫ばれ、エレクトロニクス業界ではいち早く対応することになった 電子回路基板に部品や半導体デバイスなどを実装した後に電子回路板をフロンやトリクレンで洗浄していた。早いところでは、1987 年にはセイコーエプソンで脱フロン関係の社内プロジェクトを立上げて対応した。 その後、多くのセットメーカーが追随する形でフロン削減活動が進展した。 実装業界で使用削減を進展し、まず、民生機器向けの電子回路板(電子回路基板に部品を搭載した基板)の「フロン洗浄」から「アルカリ洗浄」が検討された。 稼動開始後、洗浄のアルカリ廃液の処分問題が課題となり、その後、「アルカリ洗浄」から「水洗浄」の取り組みが検討された。 実装業界で並行して検討されたのは、洗浄方法のみならず、はんだ付けに使用されるフラックスは低残渣タイプの開発が検討されるに至った。 最終的には低残渣の無洗浄タイプのフラックスが開発されるのも相まって「無洗浄」へと進展し、民生機器のみならず産業機器にも展開された。 本誌の1992年9月号の表紙を飾ったのはノートパソコン用フレックスリジット配線板の洗浄を表わすために洗濯板とともに表示されている(写真1)。この号の特集は「フロン対策と実装」となっており、当時、洗浄問題が大きな課題であったことが分かる。3)新たな環境規制がもたらす産業界へのインパクト特定非営利活動法人 日本環境技術推進機構 / 青木 正光