ブックタイトル実装技術4月号2020年特別編集版

ページ
31/40

このページは 実装技術4月号2020年特別編集版 の電子ブックに掲載されている31ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

概要

実装技術4月号2020年特別編集版

は、潮流や天候に応じて最適な運行コースを最適化しています。このためには、気象衛星とGPS の情報が大きな役割を果たします。 船舶の運行速度を遅くすることは、費用に大きな燃費向上の手段になります。船舶の燃費は速度の3 乗に比例します。巡航速度を半分に落とせば、燃費は1/8にもなります。 新造船では、プレジャー船や小型漁船などでは電動化の動きがあります。スウェーデンの環境活動家、グレタ・トゥーンベリさんが使用した太陽光発電のヨットは一躍有名になりました(図4)。 大型船では電動化の代わりに帆船化する研究がされています。もともと、長い間、船の動力は風力で、その帆船を最新のエレクトロニクス技術で最適制御して、補助動力に使うものです。日本では2014 年から東京大学が発案して、海洋開発研究所が国内企業の協力を受けて、「ウインドチャレンジャー計画」進めています(図5)。帆を効率良く利用することにより、燃料を半減することができるといわれています。また、この帆のコントロールを利用することにより、船の安定性も向上し、燃費の向上につながります。さらに、大きな帆に太陽光発電パネルを貼ると同時に水素燃料を使った燃料電池発電を併用すれば、純再生可能エネルギー船も可能です。 自動車や航空機に比べ、大型船ではバッテリの重量や容積にも余裕があります。 エンジンと船体の高能率化、衛星情報を使っての最適制御、LED照明による省エネ化などの改良とともに、小型船の電動化、大型船の風力/電力化など、船舶の主エネ化も着実に進んでいます。3?? ??????の????ス???? 航空機は、これまで主に経済的理由で燃費の向上が図られてきました。しかし、地球温暖化が問題になり、CO2排出規制の強化があらゆる産業で進められてきました。 航空機に関しても例外でなく、2010 年の国際民間航空機関(ICAO)総会で、①2050年までの間、燃料効率を毎年2%向上させる、②2020 年以降、温室効果ガスの排出を増加させないことが議決されました。 この目標は航空機ばかりでなく船舶でも、同じ目標を追っています。この目標を達成することは単なる改良では不可能です。たとえば、2010 年から2050 年まで毎年2 %の効率向上をすると、2050 年には2010 年の2.2倍以上の燃料効率となります。実際、年に「2 %の燃費改善」は2050年にCO2排出量を半減するために導き出された値です。 そこで、まず簡単な手法として考えられるのが、燃料にバイオ燃料を添加してCO2発生量を抑える方法です。実際にはバイオマス燃料を使っても、バイオマス燃料の作り方が問題で、バイオマス燃料を使ってもかえってCO2 発生量が増えるとの議論あります。これは電力を石炭火力発電所で作ると、電動自動車の方がCO2発生量が多くなるのと同じ問題です。 しかし、ともかく現在の規格では、バイオマス燃料のCO2 発生はないとなっています。実際、アメリカでは、ガソリンに10%のバイオエタノールを加えることがされています。 ジェットエンジンの燃料に関しては、世界的な規格団体ATSMが策定するATSM 規格で規格(ASTM D7566)が決められていて、バイオマス燃料などの点火は認められていませんでした。しかし、ICAO 総会以降、この規格や取り扱いを変えて、バイオ燃料の添加が認められるようになりました。 日本の航空会社でも日本航空(JAL)は丸紅やJXTGエネルギーなどと組んで廃プラを使って代替燃料を製造する実証実験を開始します。また、全日空(ANA)ではミドリムシの専門企業、ユーグレナが作るミドリムシを原料とするバイオ燃料を10%程度添加する計画をもっています。 このような取り組みは、現在のジェットエンジンの構造を大きく変えることなく化石燃料の使用を減らしたり、再利用することができます。しかし、現在のジェットエンジンを使う以上、これらの手法は改善ではあっても、革新的手段とはなっていません。そこで、次の世代として、航空機の電動化の試みが進んでいます。???? 電???????? ヘリコプターの電動化はUberが火をつけたeVTOLがブーム状態になっていますが、飛行機の電動下の研究も進んでいます(図6)。 代表的な電動飛行機は、太陽光パネルを大きな翼全体に貼り付けたNASA(アメリカ航空中局)の実験機、ヘリオスです(図7)。しかしそれ以外にも世界一周飛行をしたHB-SI(ソーラー・インパルス2)が有名です(図8)。前田真一の最新実装技術 あれこれ塾図5 Wind Challenger(ウインドウチャレンジャーHP)図4 グレタさんの乗った電動ヨット(ロイター)図6 eVTOL(Uber)図7 ヘリオス(NASA)図8 HB-SI ソーラーインパルス(Omega HP)49