ブックタイトル実装技術12月号2019年特別編集版

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概要

実装技術12月号2019年特別編集版

46 海洋研究開発機構(以下、JAMSTEC)について、これまで海底探査の手法、熱水鉱床やその近くの生物、鉱物資源、マイクロプラスチック問題、台風、地震などを取り上げてきた。今月は、地球環境に関係した問題や、その漁業に関する研究を紹介してJAMSTEC 関係の紹介を終わりとする。1. 大気中の酸化鉄粒子による大気加熱効果 地球の温暖化では、CO2やメタンが注目されているが、酸化鉄粒子も要注意である。酸化鉄粒子は、砂漠のような乾燥地域から大気中に巻き上げられ、太陽光を吸収して大気を暖めるが、製鉄工程などから排出される人為起源の黒色酸化鉄も大気加熱効果をもつ。しかし、これら酸化鉄粒子の大気中濃度について、これまでどの国のどのような発生源がどれだけの大気加熱効果をもたらすかの定量的な評価が十分になされていない。JAMSTECでは、独自に開発してきた全球大気化学輸送モデルを用いることにより、地球全体における人為起源の黒色酸化鉄粒子濃度を算出し、大気汚染の影響を強く受けた地域で得られた観測データを再現した。さらに、大気中のエネルギー収支を計算する放射伝達モデルを用いることにより、人為起源の黒色酸化鉄粒子が大気を加熱する効果は、東アジアなど鉄鋼業が急速に発展してきている地域で卓越していることを明らかにした。この研究成果により、人為起源の黒色酸化鉄粒子は、新興国の急速な経済成長による重工業でのエネルギー消費に伴い、温暖化の一因として重要になる可能性が示唆された北京など中国沿岸部での大気汚染は良く知られているが、ウルムチやウランバートルなど内陸部での大気汚染による影響が顕著に見られる(図1)。アルツハイマー病など健康被害と黒色酸化鉄の関連性も懸念されている。海洋へ供給される鉄は、食物連鎖を通して海洋生態系へ影響を与えている。温暖化だけでなく、このように海洋生態系や人への健康被害の観点からも、酸化鉄粒子の実態を解明することが重要であり、酸化鉄に対する排気浄化装置の適切な設置など、有効な対策を講じる必要がある(詳細については、http://www.jamstec.go.jp/iccp/j/topics/20180605/)。2. 大気汚染の影響で鉄粒子は海水へ溶けやすくなる 鉄は海洋の植物プランクトンにとって必要な栄養素である。しかし、植物プランクトンが利用可能な溶存鉄は、多くの海域で著しく少ないことが知られている。鉄が不足する海域では、大気中のエアロゾルにより供給される溶存鉄が重要と考えられていた。溶存鉄とは水に溶けた状態の鉄のことで、海水中では有機錯体の状態で安定に存在すると考えられている。自然起源のエアロゾル(砂漠からの粉塵など)には、生命を維持するのに必要なミネラルの「鉄」がわずかながら(3.5%程度)含まれている。さらにその中にはわずかに「溶存鉄」(1%程度)が含まれているのが観測されている。一方、化石燃料の燃焼などの人為的なエアロゾルは、高い鉄溶解率を示しミネラルの鉄を含むが、なぜ人為起源鉄のエアロゾルが高い鉄溶解率を示すのか、その原因が明らかではなかった。 JAMSTECでは、独自に開発した全球大気化学輸送モデルを中心とした4種類の数値モデル結果と複数の観測データを統計的に解析し、モデル再現性の比較などを行うことで、鉄溶存率に関する謎の解明を試みた。シリーズ・さまざまな研究所を巡る(第12回)海洋研究開発機構(その5)厚木エレクトロニクス / 加藤 俊夫図1 ????????の??????化????????????????熱??る????(????????AMS????C??????????????????????し??)