ブックタイトル実装技術9月号2019年特別編集版
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実装技術9月号2019年特別編集版
381. はじめに 本誌の2019年3月号に掲載した前編において、「フレキシブル基板に厚膜印刷回路技術が融合して、新たな機能を作り出していること」を紹介したが、これは「厚膜印刷回路が従来タイプの銅箔を導体とするプリント基板に置き換わっていくこと」を意味しているわけではない。プリント基板の主流としては、今後も銅箔を導体とするプリント基板が主流であり続けるものと考えられる。ただし、ウエラブル・エレクトロニクスが必要とする伸縮性回路などは、銅箔を使う回路で実現することが難しく、必然的に厚膜印刷回路が使われることになる。ウエラブル・エレクトロニクスは、今後高い成長率で市場が拡大するものと予測されており、結果として、厚膜印刷法によるフレキシブル基板の比率は高くなってくるものと予測される。 いっぽうで、銅箔を導体とするフレキシブル基板の技術も確実に向上しており、特に、回路の高密度化と高多層化の進捗には目覚ましいものがある。そこで、まず銅箔導体のフレキシブル基板の最近の加工技術の進歩についてまとめておくことにする。2. 従来タイプフレキシブル基板の高密度化 フレキシブル基板といっても、用途によって、形態や回路密度は様々であるが、最近の主要な用途といえば、スマートフォンを中心としたモバイル機器の占める割合が極めて大きい。最近のモバイル機器多機能化は止まるところを知らず、フレキシブル基板の高密度化の主要要因となっている。このため、モバイル機器に使われるフレキシブル基板の主体は両面回路となっている。ただし、回路の微細化は進んでおり、回路ピッチ100ミクロンの回路は大量生産で作られるようになっている。この程度の回路密度であれば、従来のサブトラクティブ(エッチング)プロセスの改良程度で対応できる。ところが、回路の多層化(リジッド・フレックス化)はそれほど進んでいないようである。これは、多層リジッド・フレックスの価格はなかなか下がらず、機器メーカーにとって、十分なコストパフォーマンスが得られないためと考えられる(多くの多層リジッド・フレックスの配線機能は、複数の片面、両面フレキシブル基板で置き換えることができる)。 いっぽう、ディスプレイパネルの配線材料であるテープ回路(いわゆるCOF 回路)の高密度化、両面回路化は進んでいる。これまで、この用途に使われるテープ回路のピッチは25~30ミクロンであったが、次世代のディスプレイパネルでは、20ミクロン未満のピッチが要求される。しかも、回路は両面ビアホール構成である。これくらいの回路密度になると、サブトラクティブ法で高い歩留まりを得るのは難しい。そこで、テープ回路メーカーは、セミアディティブ法にレーザドリリングを組み合わせたプロセスを開発してきている(図1)。 セミアディティブ法は、メーカーによってかなり違いがあるが、基本的なプロセスは同図に示したような形になる。出発材料はポリイミドフィルムである。まず、これにビアホールを開ける(同図(2))。穴径は30ミクロン未満になるので、現実に使えるプロセスは、 レーザということになる。それも、エキシマレーザ、YAGレーザ、ファイバーレーザぐらいに限られる。これらのレーザは、それぞれ微細孔加工能力、加工速度、加工コストが異なっているので、目的に応じて、適切なもの選ぶことになる。レーザ加工装置でキーになるのがレンズ系であるが、最近ではガルバノミラーを装備するケースが多くなっている。ガルバノミラーは、きわめて精密な加工が必要になるので、製作できる設備メーカーは限られてしまう。 微細な孔が開けられると、次は無電解銅めっきである。まず、シード層として、ニッケルの薄い層を化学めっきにより形成する。厚さは0.1ミクロン未満である(同図(3))。以前は無電解めっきで形成するシード層の安定した接着強度を得るのが難しかったが、この数年で、サブストレートの表面処理や、めっき液の組成について大きな進歩があり、多様なサブストレート材料にたいして、安定した接着強度が得られるようになっている。 次に、シード層表面にめっきレジストを塗布した上で、回路これからのフレキシブル基板技術配線基板からエレクトロニクスへ(後編)DKNリサーチLLC / 沼倉 研史