ブックタイトル実装技術9月号2019年特別編集版

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概要

実装技術9月号2019年特別編集版

321. はじめに 世界における電子機器の生産は2019年以降もディスプレイ、電子デバイス、ソリューションサービスを軸に成長が続くと予測されている。なかでも、IoT 化にともなう情報の高速処理への対応や自動車の電装化の拡大が成長を牽引するものと考える。そして、それらのニーズを具現化する中でその中心的な機能を担っている電子回路基板ならびにそれを製造する実装工程に求められる役割が高度化してきている。具体的には、ソリューションサービスで扱われる大容量データがデータセンターを構成する電子回路基板に保存され、そのなかに企業や個人の機密情報が蓄積されていく。あるいは、自動車の自動運転の進歩にともない人命を保証する最重要保安部品として電子回路基板が組み込まれることになる。これらの社会的ニーズの変化を背景に、人々の豊かさに加えて安全と安心を支える制御機器の製造メーカの工場として実装工程の品質革新~異次元の良品生産~に取り組んだ。2. 草津工場の概要 オムロン(株)は2019 年で創業86年を迎えた。健康機器のイメージが強いと思うが、制御機器事業は売上高構成比で約45%を占める中核事業になっており、そのなかで滋賀県草津市にある草津工場はPLC、サーボドライブや画像などのコントローラを生産する主力工場である。 草津工場の生産工程は電子部品をプリント配線板にはんだ付けを行う基板実装工程と実装後の電子回路基板や部品をケースに組み込む製品組立工程の2つのプロセスで構成される。制御機器はその事業特性として多種多様な顧客ニーズに応える多品種少量生産が進んでおり、草津工場が担当する商品の品目数は4,800 品目にもおよんでいる。またその中で月産品目の85%が20 台以下であり、これに対応すべく基板実装工程では1日の段取り替え頻度が200 回以上にのぼる超多品種少量生産を行っている。ここ数年、IoT化が進んだ工場として紹介いただくことも多いが、1980年代に始まった生産革新プログラムONPS(Omron NewProduction System)を改善活動の基盤として取り組んでおり、IE(Industrial Engineering)とIoTを融合させて更なる高効率な生産を追求している。このような背景のもとに我々はIoTを活用した生産性改善に取り組み始めた。その事例を次項に紹介する 1)。3. IoTを活用した表面実装プロセスの生産性改善で価値創造 当社の制御機器の各工場では多品種少量生産を支援する製造実行システムMES(Manufacturing ExecutionSystem)を導入している。生産性改善においてはMES の製造ロットオーダー毎にラインの着手、完了のデータから得られる実績工数を基準工数と比較することで生産性を見える化して改善活動を推進している。しかし、オーダー単位の実績工数からはライン内のどこにムダが発生しているのかまではつかめないため、直接時間観察法DTS(Direct TimeStudy)を使って実際のムダを抽出する必要がある。さらに実装工程の製造オーダー順序において品種の組み合せが変わることで段取り替えに必要となる作業項目や工数が目まぐるしく変動するために、標準作業内のロスを定量的に把握する調査やその分析に膨大な時間がかかり、改善活動が停滞する要因になっていた。このような生産性改善の課題に対してIoTの活用が有効であった。具体的には、実装ラインを構成する各装置から基板1 枚毎の着手・完了時刻やエラーイベントの情報を吸い上げて、それらを線状につなげてビジュアル化することで作業や実装プログラムの起因で発生する細かな停滞が視覚的にとらえられピンポイントで原因調査ができるようになった(図1)。このしくみを活用することで見えなくなっていたムダを抽出する時間が6分の1 程度に短縮され、改善開始から9か月間で生産性を30%向上させることができた。IoTを活用した多品種少量生産における実装品質革新の取り組み ~異次元の良品生産~オムロン(株)インダストリアルオートメーションビジネスカンパニー / 水島 謙二