ブックタイトル実装技術12月号2018年

ページ
55/68

このページは 実装技術12月号2018年 の電子ブックに掲載されている55ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

概要

実装技術12月号2018年

て、水耕栽培をする「完全制御型」の植物工場とガラスハウスのような自然の太陽光と土壌を使い、この自然環境に人工的な環境制御を加えて植物を育てる植物工場では、現状では、目的やメリットが多少異なります。 また、国や地域によって自然環境が異なるため、やはり地域ごとに食物工場にも向き、不向きがあります。 これは、一般の工場でも、生産するものや物流、人的資源などから港の側とか、内陸部とか、立地条件が異なるのと同じです。 「完全制御型」は、水耕栽培と人工照明を組み合わせた方式が主になります。 照明としては、ナトリウムランプ、蛍光灯やLED 照明が主となります。 蛍光灯照明は、多くの色成分をもっていますが、どちらかというと植物が必要とする赤成分が低いのが問題です。 LEDは赤は強いのですが、赤、黄、緑、青などスペクトルが狭いので、植物の種類によってLEDを使い分ける必要があります(図6)。近年は省エネの流れでLED 照明が多くなり、白色など照明用LEDの開発の進んできています(図7)。 水耕栽培の「完全制御型」では肥料や光源を自由にコントロールできるので、植物に含まれるカリウムやナトリウムなどの組成を変化させることができます。 たとえば腎疾患の人のため、カリウムの含有量が少ない野菜を作ることも可能です。このほか、成分をコントロールして、「トクホの野菜」なども作れる可能性があります。 また、閉鎖された環境で育てるため、農業害虫や病害を分けられ、無農薬農業が実現できます。さらに「泥」がないため、簡単な洗浄で食用に供され、小売店やレストランなどの作業効率の向上が図れます。 ガラスハウスなどによる自然の土や太陽光を利用する食物工場は、農業生産物の生産性を向上させることができます。 オランダなど、中欧や北欧では曇天や霧が多く日照時間が不足しがちです。 また、比較的寒冷で、植物の育成に適した日数が少なくなっています。 このような条件でハウスを使い、人工照明の補助や暖房を使うことにより植物の生産性を向上できます。 さらに暖房で発生するCO2でハウス内のCO2濃度を高めることにより、植物の生産速度が向上します。日本でも「カゴメ」のトマト工場では、温度とCO2 のコントロールで生産性の向上を実現しています(図8)。前田真一の最新実装技術 あれこれ塾図5 ガラスハウス農業(カゴメ(株)HP)図4 ビニールハウス図8 カゴメのトマト生産工場(カゴメ(株)HP)図7 白色LDE の発光スペクトル(LED 照明推進協議会)図6 蛍光灯とLED の発光スペクトル1)53