ブックタイトル実装技術5月号2018年特別編集版

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概要

実装技術5月号2018年特別編集版

19生産工程のエンド・オブ・パイプ技術 “廃水処理” の省・創エネルギー化 ~有機化学物質を含むエレクトロニクス産業廃水への適用~環境関連技術して挙げられる。余剰汚泥は国内の産業廃棄物発生量の約40%を占めるといわれており、その処分には1t あたり15,000 円程度の費用を要する。 近年は余剰汚泥の有効利用(たとえば肥料、燃料、建築用材料として)が積極的に推進されているが、そのためにも熱処理など、追加的にエネルギーを投入する場合もある。したがって、最優先すべき点は、余剰汚泥の発生量を抑制することである。 いっぽう、メタン発酵法は嫌気(酸素が存在しない)条件下において生育可能な微生物の代謝によって有機物を分解する手法である。 活性汚泥法との最大の違いは、酸素供給のための曝気が不要であること、有機物がメタンおよび二酸化炭素に分解されることから、得られたメタンをエネルギーとして利用可能なことである。 嫌気性微生物の増殖収率は、好気性微生物と比べて低く、産業廃棄物である余剰汚泥の発生量を抑制できるという特徴も有する。 以上の通り、メタン発酵法は廃水処理の省・創エネルギー化(および低コスト化)を実現できる可能性を秘めているといえる。 メタン発酵法は、嫌気性微生物による分解が容易に進行することが知られている有機物(糖や酢酸)を豊富に含む食品系産業から発生する廃水の処理に対して導入が進んでおり、国内では250~300 基程度の実プラントが稼働中である。 いっぽう、エレクトロニクス産業のように、難分解性の有機化学物質を主体とする廃水に対しての技術適用性に関する知見は、現状、まだ不十分である。 メタン発酵処理の適用廃水種の拡大に向けた研究開発は、当該(水環境保全)分野において重要な課題となっている。1. 実験方法 本研究では、メタン発酵法の中で、メタン発酵微生物を含む1~2mmの粒子状に集積した生物膜(グラニュール汚泥。図1中の写真)を利用するUp-fl ow Anaerobic SludgeBlanket( UASB)法と呼ばれる処理方式を採用し、模擬エレクトロニクス産業廃水の処理試験を実施した。 廃水処理試験に用いた実験室規模(反応槽内径φ52mm、高さ700mm、水容積2?)の装置を図1に示した。 UASB法は、装置下部から廃水を上昇流条件で供給し、装置内に保持されているグラニュール汚泥(メタン発酵微生物)と接触することで有機物が分解され、処理水が得られる。 流入廃水による上昇流と分解によって生成したバイオガスによる撹拌が生じることでグラニュール汚泥の形成が促進される。発生したバイオガスは、装置上部で廃水と分離され系外に排出される。 模擬エレクトロニクス産業廃水に含まれる有機化学物質は、文献2)を参考に、液晶製造に使用されている物質である水酸化テトラメチルアンモニウム([CH3]4N+OH-:TMAH)、モノエタノールアミン(H2NCH2CH2OH:MEA)およびイソプロピルアルコール(CH3CH[OH]CH3:IPA)とした。 これらの有機化学物質に加え、酵母エキスや微生物の生育に必要な無機塩類などを加えた模擬廃水を水道水で作成し、連続的な廃水処理試験を実施した。 模擬廃水の有機物濃度はCOD(Chemical Oxygen Demand:化学的酸素要求量)基準で、廃水1?あたり1,500mgに設定した(CODは、有機物濃度を酸化するために要した「酸素量」で間接的に表す指標である。 あらゆる有機物の濃度をCODという1つの指標で表現できるため、当該分野において広く使用されており、水質汚濁防止法に基づく排水基準においてもCODが用いられている)。 たとえば、1?の2.38 % TMAHのCODは、完全酸化の反応式のうち、酸素のモル質量から約50gCOD/?と計算することができる。 装置に投入したグラニュール汚泥は、あらかじめTMAHおよびIPAで十分に馴致(有機化学物質の分解に寄与する微生物が十分に生育していることを意味する)しており、MEAに対しても1週間程度で馴致すること確認した。国立研究開発法人 国立環境研究所 地域環境研究センター図1 廃水処理試験に用いた装置の概要