ブックタイトル実装技術5月号2018年特別編集版

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概要

実装技術5月号2018年特別編集版

18環境関連技術12   まえがき 近年、スマートフォンやタブレット端末が日常生活の中へ急速に普及すると同時に、AIやIoT、これらが大きく関わる自動運転といった言葉がニュース等でも頻繁に取り上げられるようになった。21 世紀は、より高度な情報化社会へと変わりつつあることを示している。 エレクトロニクス産業は、その核心を担っているといっても過言ではなく、今後もさらなる成長が見込まれる産業分野である。 たとえば、世界半導体市場統計(WSTS)によると、2018年の半導体市場は2017 年比で+7.0%(生産額ベース)の成長が予測されている。しかし、これはエレクトロニクス産業から発生する環境負荷が増大することも暗示している。 21 世紀において、地球温暖化はもっとも深刻な環境問題の一つである。COP21で採択されたパリ協定では、日本が温室効果ガス排出量を2030 年度までに26 %削減(2013年度比)することが示され、国内外問わずさらなる低炭素社会の構築が求められている。 エレクトロニクス産業においては、環境負荷低減に向けた取り組みとして、有害物質の使用量削減(あるいは代替物質の使用)と適正処理の推進、低炭素社会の構築に向けた省エネルギー化が重要な位置づけとなりつつある1)。 そこで本研究は、生産工程のエンド・オブ・パイプ技術である「廃水処理」に着目し、各工程で使用される有機化学物質の適正処理と廃水処理の省・創エネルギー化という観点から、現在広く普及している廃水処理技術である活性汚泥法に替わる処理方法として、メタン発酵法の適用可能性を評価した。   活性汚泥法と比較した   メタン発酵法の利点 活性汚泥法は、下水(生活廃水)や産業廃水に含まれる有機汚濁物質の処理にもっとも広く普及している処理方法である。好気(酸素が存在する)条件下において生育可能な微生物の代謝により、廃水中の有機物を二酸化炭素および水に分解する手法である。 活性汚泥法は良好な処理水質を得られるが、反応槽内への酸素供給を目的とした曝気を筆頭に、多大なエネルギーを消費している。 たとえば、下水処理場で消費されている電力は、年間70億kWh、日本国内の全エネルギー消費量のおよそ0.7%といわれている。これは、日本国内の原発1 基分の年間発電量に匹敵する数値である。また、下水処理場で消費されている電力のうち、およそ50 %が曝気に使用されていると計算されている。 加えて、活性汚泥法は、有機物分解に伴って発生する余剰汚泥(増殖した微生物菌体)の発生量が多いことも問題点と生産工程のエンド・オブ・パイプ技術“廃水処理” の省・創エネルギー化~有機化学物質を含むエレクトロニクス産業廃水への適用~国立研究開発法人 国立環境研究所 地域環境研究センター / 珠坪 一晃、 段下 剛志