ブックタイトル実装技術12月号2017年
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実装技術12月号2017年
278古都にふさわしい京都駅 現在の「京都駅ビル」は京都駅舎としては4代目となるそうだ。初代は1877(明治10)年2月に建設された赤?瓦のモダンな建物であったそうで、駅舎の完成祝賀会には明治天皇も行幸され、その完成を祝った。完成した駅は、「七条ステンション」と呼ばれ、利用者に親しまれていた。 その後、利用者の増大に伴い1914(大正3)年8月、大正天皇の京都での即位式に合わせて、総檜造り二階建てのルネサンス式建築様式の駅舎が2代目駅舎として建設された。 この駅舎は残念なことに1950(昭和25)年11月に駅内にあるホテルの食堂関係の従業員のアイロンの不始末により、失火により消失した。同年11月28日の第9回の衆議院の運輸委員会で、当時の国鉄総裁が次のように答弁している。 「特に火災事故につきましては、ほとんど全部の建物が木造であります関係で、この火災の防止には並たいていでない注意をいたしておる次第でございますが、たとい鉄道職員の過失でなかつたとは言いながら、長く国民に親しまれて参りまして、相当年月は経ておりますが、また親しみをもつて十分お使い願えると思つておりました京都駅が焼失いたしましたことは、まことに遺憾この上もないことでありまして、我々といたしましては、とりあえず全くの仮のバラツクで仕事を早速、始めておりますが、これは仮復旧というような手段をとりませんで、できることならば予算を御承認いただきまして、早速本復旧にかかりたい、そうして名実ともに新しい日本、また旧都であるところの京都という所にふさわしい設備の駅を設けて、再び国民各位にかわいがつていただきたい、さようにいたしたい、かように存じておる次第であります」 この答弁によって急遽、1951(昭和26)年3月に新しい京都駅が着工し、翌年5月、鉄筋コンクリート造り2階建て(一部8階建て)の近代的な駅舎が3代目駅舎として完成した。 その後、新幹線や地下鉄の開業に伴う改良などで一部手直しのみで使われていたが、21世紀に向けて、国際文化観光都市の玄関口の駅舎としてはやや古さも目立つようになり、1980年代から駅舎の建て替えを望む声があがっていた。 特に京都には海外からも注目されている古都でもある。京都で国際会議を開催すると海外からの出席者数が増える、というのもうなずける。それほど魅力のある古都である。それには相応しい駅舎が望まれるのも無理もないことである。 そして、平安建都1200年事業の一環として1997年6月に新しく生まれ変わった京都駅ビルが4代目駅舎として完成し、同年9月11日にグランドオープンした。 京都駅ビルの設計は、建築家・原廣司氏によるもので、古いものと新しいものとが混在する京都らしく、モダンで斬新なデザインの建物になっている。京都駅に着いて改札口を出ると大きなスペースの中にモダンな屋根裏に目がいってしまう。それ程、圧倒される。海外の来訪者を含めて多くの観光客が撮影のためにシャッタを切っている。 そして京都駅の1階からエスカレーターで4階の室町小路広場に行くと大階段があり、この階段は11階を経て大空広場まで続き、幅27m、長さ90m、標高差34m(JR京都伊勢丹の4階から11階の高さ)、総階段数は、171段にもなる。 大空広場は、屋上が緑化されており、ここは「環境に配慮した都市の生活空間の創出と情報発信の場」として位置付けられ、竹林に囲まれた芝生空間を中心に京都と結びついた歳時記を草花や植栽で演出し、京都の四季の変化や地域の祭り・行事に加え、駅ビルのシーズン企画と連携して話題性のあるメッセージを発信する場としても活かされている。 竹林の周囲を歩いていると小鳥の鳴き声も聞こえ、見事な演出である。新幹線を降りて、この大空広場にくるとホットするとともに京都市内を見渡すこともできる場所でもある。 大きなお寺が前方に見えるが、これは西本願寺(龍谷山本願寺)と東本願寺(真宗本廟)である。世界最大級の木造建築でもある。屋根部分がぽっこりとビルや町家から出ている感じで見える。■木造建築の比較----------------------------------------------------------項 目 西本願寺 御影堂 東本願寺 御影堂正面の長さ 76m 62m側面の長さ 58m 48m高 さ 38m 29m瓦の数 175,000枚 115,000枚堂内の柱 90本 227本畳 数 444枚 927枚---------------------------------------------------------- 両本願寺の境内には阿弥陀堂、御影堂、唐門、書院、飛雲閣などの多くが国宝に、経蔵や手水舎などは重要文化財に、それぞれ指定されている。この大きなお寺も周囲のビルや家で埋め尽くされた感じで、可哀そうにも見えてくる。しかし、現地に訪れると広い空間に大きな木造建築が鎮座している。 そして、もう一つ目にとまるのが「京都タワー」である。1964年に京都中央郵便局の跡地に建てたタワーである。市内の町家の瓦葺きを「波」に見立て、海のない京都の街を照らす「灯台」をイメージしたのが「京都タワー」である。京都市街で一番高く、地上100メートルにある展望室からは東山三十六峰に囲まれた古都京都の市街地が360度見渡せるのを謳い文句にしている。 単なる鉄骨による無骨なタワーでは、古都の京都の表玄関には相応しくないとして、白い円筒状の優雅なデザインが採用され、それなりの配慮はしてあると言う。2014年の開業50周年に向けたエレベータ改修工事や外壁の塗り直しを実施しているもののタワーが駅前に陣とっている感じを受けてしまう。 なぜ、こんなタワーを古都の京都の駅前に建てたのかと思ってしまいがちである。そんな印象を受けながら右前方の「京都タワー」を見ながら 京都駅ビルの大階段を降りていった。くだりでも歩いて降りるのは結構、大変である。この大階段も活用されていることを知る。 文化面のみならずスポーツ面では、毎年、2月に一気に駆け上がる心臓破りのレースが、大階段で開催され、多くの参加者が集い、「京都駅ビル大階段駆け上がり大会」として京都駅ビルの風物詩となっているという。 4代目駅舎の京都駅は立派な設備を活かしながら、様々な行事を継続して開催し、2017年9月11日に京都駅ビルは開業20周年を迎えた。海外からの訪問者が増えるにつれ、京都駅ビルにはホテルや劇場も併設されているので、果たす役割は大きいものと思う。 1代目駅舎が37年間、2代目が36年間、3代目が45年間、それぞれ使用された。4代目は2050年代までは使用され、大きく貢献するに違いないと思って、帰りの新幹線に乗車して京都を後にした。49