ブックタイトル実装技術12月号2017年

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概要

実装技術12月号2017年

26はんだ洗浄の今を探る ?はんだの進化と洗浄?半導体実装ゼストロンジャパン(株) 洗浄対応はんだでは洗浄剤に対して残渣成分が溶解・分散できることが前提条件となってくるので、使用できる材料は限られており設計は制限される。いっぽうで無洗浄はんだはその制約がないため、より多くの選択肢が持てることとなる。市場から要求される高機能性を得るために、2 章で述べた金属組成も含め、様々な手法を用いて多くの優れたソルダペーストは開発されてきた。はんだ接合の分野においてはマウンタやリフローなどのハード面が進展したことも、無洗浄化の発展を大きく補助している。 しかし、近年はEVをはじめとする車載関係、燃料電池などの新世代電源、高感度センサの制御基板など、信頼性確立のために残渣フリーが求められる分野が多く誕生している。また航空・軍事関係の製品群は信頼性確保のために、洗浄工程が必須化されている現状がある。このような分野においては、これまで開発されてきた高性能な無洗浄はんだを使用していながらも信頼性確保の観点からさらに洗浄を求めるという、相反する動きが見られる(図5)。 加えて近年は製品の多層化・薄層化・搭載部品の微細化も著しく進んでおり、2016 年12月号で寄稿させていただいたように洗浄は非常に厳しくなっている。   「無洗浄はんだ」の   洗浄が難しいのはなぜか? 本章では、無洗浄はんだを洗浄することはなぜ難しいのかを含有成分から考察していく。無洗浄はんだに使用されるフラックスは基本的に脂肪酸系の有機物となるので、適切な有機溶剤や界面活性剤をはじめとする水系洗浄剤で除去することが可能である。しかし、洗浄する上で大きな障壁が立ちはだかる。 1つは金属塩などの溶解洗浄が困難な成分の残留である。下記に一般的なPbフリーはんだに使用されているSn・Ag・Cuと代表するその一般的な金属塩を記載させていただく。多くの有機溶剤は極性の大きい溶剤(NMPなど)でないとイオンや塩化合物を始めとする水溶性残渣の除去は困難であると同時に、その溶解度は限られたものとなる。また仮に水をベースとする洗浄剤を使用したとしても条件によって残渣は生成してしまい、溶解洗浄をする上での大きな課題となる(図6)。実際の金属残渣は多岐の形状をもちうることが考えられ、図7以外の無機塩だけに限らず、金属原子を含有した「有機金属化合物」となって存在している(図8)。代表的なものの一例としては金属原子を基軸としたエステル化合物があげられる。また近年ではSn・Ag・Cu以外の金属も併用されることが多く見受けられ、インジウム・ゲルマニウムといった金属含有はんだは洗浄が困難となる傾向にあることが確認されている。 2つ目として挙げられるのは添加される「チキソ剤」「ポリマ」の変化である。ソルダペーストの印刷性能を大きく左右するチキソ剤は、印刷だれの防止、ペースト印刷後の粘度を回復、メタルマスクとの摩擦を低減する。またポリマもフラックス弾性を調整するなどの役割を担っており、ペーストの安定性図5図6 金属塩残渣の例図7 水に対する溶解性