ブックタイトル実装技術11月号2017年特別編集版
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実装技術11月号2017年特別編集版
43い? ここからはこの質問に対して説明を行っていく。 デミング博士の原則に、「成功の共通分母は、強く、心をかき立て、導き、啓発し、精神を高揚きせる『目的』である。『目的』が明快に頭にセットきれたならば、『目的』を意識してスタートするならば、その『目的』がすべてを導く。『目的』が創造力を解放する。潜在意識を引き出し、記憶や内容を引き出す。そして、記憶からではなく『イマジネーション』をもとにして働くようになる。過去に縛り付けられ限定されることなく、将来何が可能かをかぎわける嗅覚・センスを獲得することができる」というものがある(ちょっと長い…)。 エドワード・デミング博士の経営哲学によると、生産はひとつの完全な組織と見なされる。この組織では、もっとも優れた(必ずしももっとも多くではない)製品を生産するために、企業内の全社員の完全な協力(競争ではない)が必要とされる。 デミング博士は、企業方針は最高経営者の見解ではなく、顧客が何を望んでいるかを出発点に考えるべきだといった。そして顧客が望むものとは、信頼できる品質につきるとデミング博士は確信していた(図3)。 1950 年に日本にデミング博士を招聘した日本の科学者および技術者の組合は、彼の主張が、いかに重要かを理解していた。 デミング博士の8日間にわたる第一回目のセミナーには、企業の役員を含め200人以上の日本人技術者が参加したようである。デミング博士は、市場から長期的に利益を生むには、品質の高い製品が必要だと強調した(ちなみに1951年から、日本は優れた製品を作り出した企業に、栄誉あるデミング賞を授与しはじめた)。 日本企業を相手に闘う米国企業が、日本の高度成長を見て彼の話に耳を傾けざるを得なくなる1970 年以降までは、デ図3 TQMの原則ミング博士は本国米国ではほとんど無名であった。 1900年にアイオワ州で生まれ、ワイオミング州で育ったデミング博士は、開拓時代末期の経験から、協力によってもたらされる、誰にとっても有利な状況(彼が好んで使ったWin-Winの状況)の重要性を学んだ。 しかし、米国企業が強調したのは競争理論であった。米国企業が世界の頂点に立てるのも、熾烈な競争という米国の伝統があるからこそだと彼らは信じた。当時、戦時中に閉鎖されていた累積需要と冷戦時の軍事調達の急増によって、米国企業には無限の市場が保証されているかに思われたからである。その需要を満たすために、米国の経営者たちは、1900年代初期のフレデリック・テーラーによる時間と作業能率との相関調査に基づく大量生産を強調した。それは生産過程を無情にもバラバラにし、個々の生産部門を強調して圧力をかけるものであったそうである。デミング博士は、テーラーのこうしたやり方を非難した。 テーラーの科学的経営管理は品質よりも生産量を重視し、また個々人が全生産体系の重要な要素であることを見落としているとデミング博士は信じていたのである。また、社員同士を対抗させるとして能力主義をけなした(今の日本の経営者に聞かせたい…)。デミング博士が、なかでも特に重視したのは長期的展望であり、1 年後、5 年後、10 年後はどうなるのかを見据えることが大切だと主張した。 このアプローチをすぐさま採り入れたのが日本企業だったのである。これに反して米国企業のほとんどは、四半期ごと、あるいは半期ごとの損益報告に固執した。 加えて日本企業は、工場長を経営の意思決定に参画させることを提唱した、オハイオ州クリーブランドの経営専門家ローウェル・メランの考え方を採用し、デミングの理論を実践に移した。さらに終身雇用、年功序列賃金、労使協調といった新しい制度の導入によって、日本の生産性は急増したのである。 日本は安定を約束する終身雇用、労働者の確保につながる企業内労働組合、破壊的な労働者間の対立を終わらせる年功序列賃金、そしてデミング博士の手法が要求した最大の協力を重視した。また、年度末の賞与制度によって、社員に企業の利益に関心をもたせると同時に、リスクを所有者だけでなく社員へも分散させることにしたのである。 1970年代に入り、その統計的手法を基礎とした品質管理を、経営全般に採用すべく、全社的品質管理として、TQMという言葉が用いられ、デミング博士の下、はじめられた。 日本のこの世界に誇れるTQMについて、1970~80 年代にかけて、アメリカでは日本に学べとばかり、続々と見学に押し寄せた。TQMとは、総合的品質管理(Total Quality