ブックタイトル実装技術3月号2017年特別編集版
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実装技術3月号2017年特別編集版
47 わたって安定な放出電流が得られるため、微小領域の分析 に有利である。3. レンズ系 電子ビームの軌道を曲げて、集束や発散させるには、磁界や電界を用いることになる。磁界の場合は、フレミングの左手の法則で知られているように、磁界と電子の運動方向との直角方向に力が働くことを利用する。図2のように、コイルの電流によって発生する磁界により電子線を曲げる。コイルへの電流を変えると発生する磁界が変わり、焦点距離や倍率を変えることができる。 図1 の対物レンズは、試料を出射した電子が結像するための初段のレンズで、このレンズの性能が像の質( 分解能、コントラストなど)をほぼ決める。球面収差係数と色収差係数を小さくする工夫が重要である。一般には磁界型レンズが結像に用いられるが、静電界により電子線を集束させるレンズもある。ただし、磁界型レンズより収差が大きいので結像には用いられず、電子線の加速や減速に用いられる。4. 真空系 電子顕微鏡は、原子オーダーの微細な試料を観察するので、わずかな残留ガスなどが試料表面に吸着すると正しい観察ができない。そこで、装置内は残留ガスの少ない極めて清浄な超高真空に保つ必要があり、用途に応じた真空ポンプが用いられる。表1は電子顕微鏡に用いられる主なポンプである。5. 得られた画像の例 電子顕微鏡で得られた試料の内、典型的な例を2つ取り上げる。 図3はグラフェンの結晶構造の写真である。グラフェンはグラファイトの1層で、多くの面白い物性により注目されており、LSIの材料なども、いずれシリコンからグラフェンになると言う意見すらある。完全な六角格子になっているが、写真では一部に欠陥が見られる。図4は、半導体のn-MOSFETの断面で、ソースとドレイン側に欠陥が発生しているのが見える。表1 電子顕微鏡に用いられる主な真空ポンプ図4 半導体素子(n-MOSFET)の断面薄膜試料のSTEM像TaやWなど重い元素の存在する部分が明るく観察されている。格子欠陥もクリアに観察されている図3 加速電圧80kVで取得された単層グラフェンの高分解能TEM像図2 磁界により電子ビームが集束する様子グラフェンが六角格子を組んでいる。太い実線で囲んだ領域は格子欠陥で、破線で囲んだ領域ではアモルファス状態になっている