ブックタイトル実装技術12月号2016年特別編集版

ページ
34/40

このページは 実装技術12月号2016年特別編集版 の電子ブックに掲載されている34ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

ActiBookアプリアイコンActiBookアプリをダウンロード(無償)

  • Available on the Appstore
  • Available on the Google play

概要

実装技術12月号2016年特別編集版

これあれ塾前田真一の最新実装技術連 載第69回 IoT装置の基板1. 東電の送電線火災 今年10月12日、埼玉県新座市の東電の地下ケーブルが出火し、東京都の11の区で、35万戸とも58万戸ともいわれる大規模な停電が発生しました(図1)。 この停電で、エレベータに人が閉じ込められたり、信号機が止まったり、西武池袋線と新宿線が全線で運転停止したりで大きな混乱が発生しました。 出火場所が地下ケーブル専用のトンネル内であったため、煙がトンネルに充満し、トンネル内の温度も300℃にもなったといわれ、さらに高圧送電線ということで、漏電の危険性から、消火放水もできず、鎮火には時間がかかりました。 さいわい、東電では、電力の送電経路を切り替え、停電は数時間以内で、すべて回復しました。 この事故で、首都圏のインフラの脆弱性が再認識されましたが、ここで重要なことは、停電の原因です。 報道によると、出火したケーブルは35 年以上も昔に施設されたOFケーブルです(図2)。 OFケーブルは絶縁体として、油侵紙を使っています。 油侵紙は薄い紙を幾重にも巻いて、厚くし、油と紙の絶縁抵抗を高めています。 温度変化による銅線の膨張、収縮により、油侵紙のまきに緩みが出て、空気の層や気泡が生じると、絶縁抵抗が低下してしまいます。 このため、気泡が生じないように、銅線の中心部か、油侵紙と金属被覆の間に絶縁油を圧力をかけて注入し、気泡ができないようにしています(※ 1)。 しかし、長年の経年変化により、雷などによる過電流や、地震、車による道路の振動などによるわずかな形状の歪みなどの原因から、絶縁抵抗が低下する場合があることが知られています。 実際、過去にも横浜で、ケーブルの絶縁不良による火災が発生しています。 参考文献の1)では、絶縁不良に対しては、絶縁油中のガスを分析し、絶縁不良で発生する部分放電で発生するアセチレンやその他のガスを検出する検査が一般的に実施されているとのことです。 しかし、報道によると、東電では、火災が発生した地下ケーブルに対して、年に一度の目視検査しかしていないとのことでした。 目視検査は、ケーブルの絶縁不良検査に特化したものではなく、その他の項目も含めた一般検査ではないかと思われます。2. 社会インフラの  劣化と検査図1 東電、地下ケーブル火災(NHK News Web)図3 中央自動車道笹子トンネル事故(国土交通省)図2 地下ケーブル(NHK News Web、注は筆者)50