ブックタイトル実装技術6月号2016年特別編集版
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実装技術6月号2016年特別編集版
481. はじめに シリコン(Si)、ガリウム砒素(GaAs)、サファイアなどに代表される単結晶素材は、今日のオプト・エレクトロニクスデバイス技術を支えるキーマテリアルである。量産用として4インチ以上、大きいものでは12インチなどの大口径基板が使用されている。比較的最近の素材である炭化ケイ素(SiC)や窒化ガリウム(GaN)についても大口径化が進んでいる。ダイヤモンド基板に代表される新規素材においても、同様に大口径化が予想される。しかしながら、新規素材が半導体デバイスの量産工程において、使用可能なサイズにまで大口径化するには、ある程度の時間を要する。そのため新規素材を用いた研究開発は、小径基板を積極的に活用し、加工技術開発やデバイス応用技術開発を行う必要がある。一般的に半導体デバイス用基板には、原子レベルまでの平坦性と高度な表面清浄性が求められる。このような原子レベルの平坦性と高度な表面清浄性は、開発初期の小径基板であっても大口径基板と同様であるべきである。 小径基板の高品質な結晶成長技術や、切る・削る・磨くといった加工技術の開発は、専用装置を用いて実施するケースが多い。いっぽう、表面清浄性についてはおざなりにされる場合が少なくない。小径基板は手洗いおよびエアブローによる乾燥が多く、比較的大きな表面付着物の残留やウォーターマークが確認される場合がある。このような状態のままでのデバイス開発は、不十分な表面清浄性に起因したデバイスの性能低下をまねく。また、2インチ以上の基板でも、装置サイズや限られた予算内での研究開発と言った事由から、あえて小径に切断し使用される場合が多く見受けられる。切断後の小径基板は表面清浄度が低く、多数の付着物が残留することが多い。 このような問題を解決するため、研究開発現場でも設置が容易な小径基板洗浄乾燥装置「エクリア(Ecclear)」を開発した1)2)。本稿では、小型の装置という制約の中で、ブラシスクラブ洗浄、リンス、スピン乾燥という一連の洗浄乾燥プロセスの実現を可能にした「エクリア(Ecclear)」の特徴的な単軸自動偏心機構について概説する。また、「エクリア(Ecclear)」の優れた洗浄・乾燥効果について、幾つかの事例とともに紹介する。2. エクリア(Ecclear)開発の経緯 当社は1939年の創業以来、工業用のサファイアやダイヤモンドを加工し、販売しているメーカーである。近年では、人造サファイアの結晶成長も手がけている。主な用途はLED用のサファイア基板である。サファイア結晶成長手法として採用するのはEFG(Edge-defined Film-fed Growth)法である。得られる結晶は板形状をしており、容易にウエハ形状を得ることができる。基板用の結晶成長プロセスとして最適な手法である。板形状のブランク材料は、次に基板外径および厚みの整形、研磨による表面仕上げ、酸・アルカリなどの薬液を用いたディップ洗浄、ブラシスクラブ洗浄工程を経て完成基板となる。得られたサファイア基板は、GaNをベースとした青色LED 製造のための下地基板として用いられる。青色LEDは近年爆発的な普及を見せている。2014 年に日本人科学者3名が青色LEDに関してノーベル物理学賞を受賞したことは、読者の記憶にも新しいことであろう。上記のようなサファイア基板の製造に加え、当社では次世代結晶素材の加工技術開発にも常にタイムリーに携わってきた。一例をあげれば、難加工材料として知られるGaN 基板の研磨技術開発である。当社で開発した高速でダメージレスな化学機械研磨技術は、GaN 基板の高品質表面仕上げに貢献している。 上記のサファイア製造やGaNなど新素材の加工技術開発が、本稿で紹介する小型洗浄乾燥装置開発の足がかりとなった。一見するとわかりにくいが、その関連性は極めて深い。GaN 基板は開発当初は貴重な基板のため、一部を小径に切断し加工開発に使用していた。その際、常に問題となったのが、基板の洗浄であった。加工そのものは小径基板でも問題がなかったのだが、小径基板を洗浄し乾燥する専用装置がなく、手作業に頼らざるを得なかった。小径基板の洗浄には、以下のようなプロセスが一般的に行われている。まず、薬液洗浄として酸・アルカリ・純水リンスを用いた浸漬(ディップ式)並木精密宝石(株) / 坂本昌隆、青田奈津子、石田悠宗、會田英雄単軸自動偏心機構を搭載した小径基板洗浄乾燥装置の開発