ブックタイトル実装技術5月号2016年特別編集版
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実装技術5月号2016年特別編集版
26環境関連技術 1 はじめに -水系と油系のイメージは?- 「洗浄」という分野では「方式」と、「液」のファクターが非常に大きい。 今回のテーマとしては洗浄液の使用実情と、今後の展望について触れていく。 まずは永遠のテーマともいえることではあるが、ここで改めて一般的な水系洗浄と油系洗浄の甲乙を比較してみる(表1)。 おそらく多くの方々がこのような概念に賛同して下さるはずである。有機溶剤は危険性があるものの、「洗浄液」としての性能は実際に優れている。いっぽう、水系洗浄剤では特に乾燥性に関して敬遠されており、水の特性上難しい課題となっている。唯一の利点はその安全性であるところが大きい。 しかし、この状況は年々変化しつつあり、水系洗浄剤であってもその性能は向上している。水系洗浄剤の改善点 各メーカーは軒並み開発に注力しており、一昔前までは考えられなった状況になりつつある。 身近な例では家庭用洗浄剤を考えていただきたい。家庭用洗浄剤の多くは水系洗浄剤でありながら、大半の汚れは問題なく落とせているはずである。しかもその使用量は以前と比較し明らかに少なっている。 同様な技術開発が工業的にも行われてきているのである。また追い風としては洗浄機器の性能向上により印加物理力の効率がアップしたこと、「マイクロバブル」といった新しい洗浄方式の登場なども水系洗浄分野の革新を手助けしている。 水系洗浄剤といえば安全性や環境に良いだけの理由が目立ってしまいがちで、コストや項数の観点から導入に難しい側面があるのではと敬遠されがちである。しかし、昨今の状況はその性能差は小さくなり、場合によっては逆転している部分もあることを読者の皆様方に理解いただきたい(表2)。 日本と海外 ― 方向性の相違 ― プリント基板をはじめとする電子デバイス製造では、「洗浄」によりフラックス残渣などを除去することが欧米においては技術のひとつとして浸透しており、今後も大きな変化はないと考えられる。その際に使用されている洗浄液としては水系洗浄剤も多く採用されている。 いっぽうで日本は独自の技術路線を歩み、洗浄をそもそも必要としない「無洗浄技術」の確立を目指している。 また仮に洗浄が必要な場合であっても炭化水素・アルコールといった有機溶剤での洗浄が一般的である。 メタルマスクやリフロー洗浄といった工程に関してもアプローチはまったく異なり、欧米ではアルコールなどの有機溶剤の使用を控える傾向にあり、水系洗浄を採用している企業もあるなかで、日本ではIPA・グリコールエーテルを中心とした有機溶剤を多く使用している。 こうした背景には各国の法令も大きく関係しており、欧米の方が有機溶剤の使用条件が厳しいことが挙げられる。ピックアップすると洗浄施設に関してのVOC排出規制であっても大きな違いがみられる(表3)。 このような法令と産業における使用資材の関係は無視できないものがあり、日本では一定の規則にしたがえば、有機溶剤洗浄液の適切な選択― 環境保全だけでなくランニングコスト・健康リスクを低減させる ―ゼストロンジャパン(株) / 加納 裕也2表1 水系洗浄と油系洗浄の甲乙比較