ブックタイトル実装技術10月2015年特別編集版
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実装技術10月2015年特別編集版
352. ラマン分光法と赤外分光法 試料にレーザ光を照射すると、光と物質の相互作用により反射、屈折、吸収の他に散乱が起こる。散乱光の中には入射光と同じ波長のレイリー散乱(弾性散乱)と、分子運動によって入射光と異なる波長のラマン散乱(非弾性散乱)がある(図3参照)。ラマン散乱のエネルギーシフトは格子振動に対応しており、そのスぺクトルにより分子の構造を解析することが可能となる。これをラマン分光法(Raman Spectroscopy)と呼んでいる。 赤外分光法(IR:Infrared Spectroscopy)は、赤外光を試料に照射すると、ある波長域が吸収され、吸収された赤外光の波長と吸収される程度(吸光度、または透過率)が物質によって異なることを利用して、官能基の定性分析や化学構造の情報を得る手法である。吸光度は濃度に比例するため、定量分析も可能である。 ラマン散乱では、S-SやC-C結合のような分子振動の対称性の良い振動モードが強く検出されるのに対して、赤外分光法ではC=OやO-Hのような双極子モーメント(電荷の偏り)が大きい振動モードが強く検出される。このためので、両者を併用して分子構造を解析するのが有効である。3. 蛍光X線分析法 ( XRF:X-Ray Fluorescence Spectrometry) 試料にX線を照射し、励起されて発生する2次X線(蛍光X線)を検出して、元素の定性、定量分析を行う。図4の例では、K殻の電子エネルギーより高いエネルギーのX線を与えることで、K殻の電子が飛び出して空孔ができる。この空孔を埋めるため外殻から電子が遷移する際、エネルギー準位の差に応じた固有X線が発生する。一般的に、B(ホウ素)からU(ウラン)までを、ppmオーダーから%オーダーで測定できる。4. 電子ビームを照射して得られる情報1. 透過型電子顕微鏡 ( TEM:Transmission Electron Microscope) 薄片化した試料に電子線を数十kVから数百kVに加速して照射し、透過した電子を磁界型電子レンズで拡大して観察する。サブナノメートルの解像度が得られるが、電子を透過させるために試料は100nmオーダーまで薄くしなければならない。TEM試料作成法には、超薄切片法、イオンミリング法、FIB 法などがあり、材料の種類など必要に応じて使い分ける。電子ビームを細く絞り、収差を極力なくして、ついには原子の粒々を検出することも可能になってきている。ただし、この場合は試料の厚さは10nm 以下に薄くする必要があり、簡単ではない。試料をGaイオンでエッチングするFIB(FocusedIon Beam)が用いられている。その他、いろいろな試料作成方法があり、TEMの使用には試料作成がもっとも重要といわれている。 TEMの一種で、走査型透過電子顕微鏡(STEM:ScanningTEM)も面白い技術である。図5のように非常に収束した電子ビームを走査して試料に当て、透過してきた電子の中でも高角に散乱してきた電子を環状検出器で集めると、原子の位置が常に像の輝点となり、重い原子ほど明るい輝点となる(HAADF:High-angle AnnularDark Field)。また、透過電子像の観察に限らず、電子ビーム照射で発生する特性X線など各種の信号を検出することが可能であり、微少領域の元素分析図4 固有X線の発生 など用途が広い。図3 ラマン散乱光とレイリー散乱光図5 STEMの原理図