ブックタイトル実装技術8月号2015年特別編集版

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概要

実装技術8月号2015年特別編集版

35改善が行われてきたが、最近SiCやGaN のワイドギャップ半導体のトランジスタが実用化されてON抵抗が1/10ぐらいに改善され、今後コストが下がれば大量に用いられる機運にある。ただし、単結晶の製造はSiのような溶液からの成長法が使えずSiC 粉末を昇華させており、結晶欠陥が多く各社とも苦労しているが、ロームは独自で技術を開発するとともに、ドイツのグループ会社SiCrystal 社の技術を導入してこの問題を解決している。その他にも、材料が硬くて加工が困難、イオン注入を高温で行う必要があるなど、Siとは異なった技術が必要なため商品化が遅れていたが、ロームは2010 年に世界に先がけて商品化した。図3にIGBTより損失が少ないSiC MOSと、さらに改善されたトレンチMOS の比較を示す。ロームでは、最近、図4 のようなダブルトレンチ型を開発され、電界集中が緩和されるため長期信頼性の性能が上がった。ダブルトレンチはかなり手の込んだ製法のようで、他社はなかなか真似できないかも知れない。これらのSiCパワートランジスタとSiC-SBD(Schottky Barrier Diode ※注1)をモジュール化し、たとえば、1200V、180A のような大型電源用モジュールも商品化されて、インバータ回路の小型・高能率化を行い、車載や産業用に活用されている。今後の注目すべき用途として、放射線による癌治療に中性子線照射が注目されているが、電源にSiCを用いれば、加速器が小型になり、実用化の可能性があるといわれている。 なお、SiCと並んでワイドギャップ半導体のGaNについても開発されており、高耐圧の高周波アプリケーション用として期待される。(※注1):SBDとは、金属と半導体の接合によって生じるショットキー障壁を利用したダイオードで、PN 接合に比べると順方向の電圧降下が低く、スイッチング動作が速いため、SiCトランジスタと組み合わせて電源回路の効率向上に用いられる3. 他社にない独特のIC ロームは、微細化の点では決して最先端のICを生産している訳でなく、顧客の要求を先取りした企画力があり、またBiCDMOS のような独特のデバイス構造で、特徴あるICを生産している。BiCDMOSは、Bipolar、CMOS、DMOS(Double Diffused MOS)の略で、非常に面白い構造をしている。その構造を図5に示す。高耐圧15V のCMOS、NPNとPNP のBipolar、120Vまでの高耐圧DMOSを、同一チップに実現しており、製造プロセスもかなり手の込んだ複雑なものとなっている。用途として高耐圧が必要なモータ制図5 BiCDMOSの構造。これだけの種類のデバイスを同一チップに載せる図3 SiC Trench MOSは、IGBTやPlanar MOSに比べて大幅にスイッチング損失を軽減した図4 従来のトレンチ型とダブルトレンチ型の比較。ダブルトレンチ型は、ゲート酸化膜に高圧が掛からず破壊されない