ブックタイトル実装技術5月号2014年特別編集版

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概要

実装技術5月号2014年特別編集版

12環境対応の諸動向123   はじめに フラックス洗浄においては、日本の市場ではいまだ溶剤系の洗浄剤が圧倒的なシェアを占めている。しかし溶剤系には引火性・環境性・毒性などの面での不安があり、特にVOC(揮発性有機化合物)の規制強化が懸念される。本稿では、現行VOC規制の問題点と、溶剤系に代わる水系洗浄について記す。   溶剤系洗浄 「溶剤」とは、教科書的な定義では「もの(固体、液体、気体)を溶かす物質」という意味であり、その意味では水も溶剤である。しかし一般には「溶剤」といえば「非極性の物質を溶解させるために用いる有機溶剤」を指すため、本稿でも同様の意味で用いる。 溶剤系洗浄剤は(※ 1)図1 に示すように様々な種類があるが、いずれにせよ健康・安全・環境に対し懸念があるものということができる。 洗浄剤に関わる法規制は大きく表1 の通りである。このうち有機則や消防法については比較的理解が進んでいるものの、VOC規制については国内の法整備が遅れていることもあり、対策が欧州などと比べて十分とはいえない。   日本におけるVOCの規制は? VOCとは、Volatile Organic Compounds(揮発性有機化合物)の略語で、浮遊粒子状物質や光化学オキシダントの原因となる。前者は昨今、PM2.5 の問題がマスメディアを賑わせており、後者は健康被害に加えて地球温暖化の原因の一つとされている。 日本におけるVOCの法律上の定義は、表2に示すとおり非常に曖昧である。欧州では成分の性質(20℃での蒸気圧が0.01Kpa以上)によって使用量の制限があり、特にこの点において日本の規制とは大きく異なっている。日本では排ガス中の炭素濃度の排出量と使用する設備のみの規制となっており、使用する洗浄液成分自体については何の規制も存在しない。また対象となる施設の規模が大きく、「洗浄剤が空気に接する面の面積が5m2以上のもの」となっている。これは、VOCの年間消費量として50t程度の施設を想定しており、欧州の規制が同0.5~25tを想定して作られていることを考えると非常に緩いものであることが分かる。 このため、「ゼストロンの洗浄剤にはどれくらいVOCが含まれているのか?」という質問は大変答えにくい。ヨーロッパでは「20℃において0.01Kpa以上の蒸気圧を有す水系フラックス洗浄技術とVOC規制の動向ゼストロンジャパン(株) / 八尋 大輔図1 溶剤系洗浄剤の分類※1【洗浄剤=溶剤?】 洗浄に携わっていると、時折洗浄剤を「溶剤」と呼ぶのを聞くことがある。溶剤は「溶かす」ことが目的であり、「溶かす」方式で洗浄する溶剤系の洗浄剤を指していう場合は「溶剤」「洗浄剤」どちらも間違いではない。しかし本来は、「溶剤」と「洗浄剤」は異なる概念である。たとえば「溶剤」は、広義では水を指すこともあるが、狭義では溶解させる目的で用いる有機化合物を指し、飲用のエチルアルコールは溶剤とはいわない。ゼストロンの水系洗浄剤は溶剤を含むのか?という質問がされることもあるが、質問者が溶剤をどのように理解しているかでその答えはイエスでもあり、ノーでもある。