ブックタイトル実装技術3月号2014年特別編集版

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概要

実装技術3月号2014年特別編集版

13電子回路の品質 ? 適正品質とは電子機器の進展を支える配線板技術 本稿ではまず、ユーザーと品質の関係について、基本的なところを確認しておきたい。 「品質」は非常に広い概念であり、使う人によっても、またTPOによっても使われ方が同じではない。JIS規格では「本来備わっている特性の集まりが、要求事項を満たす程度」となっているが、これはISO規格の直訳であってわかりにくい。ここでの要求事項とはお客、ユーザーの要求である。従って、品質とはお客が欲しいと思う事項が満たされている程度、ということになる。つまり、ものと品質はメーカーが作り出すが、その品質はユーザーが評価するのである。ユーザーが評価する品質を市場品質と呼ぶ。 では、ユーザーは何をもってモノの品質を評価するのか。いろいろな説明があるが、その一つを図1 で説明する。 市場品質は、①魅力的品質要素、②一元的品質要素、③あたりまえ品質要素の3 つからなる。 ①の魅力的品質要素は、充たされれば満足するが、充たされなくても仕方がないとされる要素。②の一元的品質要素は、充たされれば満足するが、充たされなければ不満を引き起こす要素。そして、③のあたりまえ品質要素とは、充たされてあたりまえ、充たされなければ不満を引き起こす要素(絶対に譲れない特性やパフォーマンス)、である。 そして、市場競争力をもつ製品は、ごく少数の魅力的品質・一元的品質と、多くのあたりまえ品質からなる2)。 これは、われわれが何か新しい製品を買うときの行動と合致している。あたりまえ品質が充たされているだけでは物足りない。何か他製品にないその製品固有の魅力が欲しい。 このような市場品質を受けて、メーカーはどういうものを開発するか。ここでは、開発する製品が市場に受け入れられる品質であるだけでなく、リーズナブルなコストでつくれるものでなくてはならない。それがメーカーの設計品質(ねらいの品質)である。製造部門はこれににもとづいて製造するが、材料、工程などのばらつきにより、製品は設計品質どおりには仕上がらない。仕上がる製品の品質が製造品質(できばえの品質)である。 ものづくりに携わるわれわれはここでとまどう。製品の信頼性は市場品質のどの品質要素に入るのか、製品にあたり外れがないのは品質でないのか、と。それらはみな、あたりまえの品質要素に入るのである。その一方、これらのあたりまえ品質が決してあたりまえには実現できるものでないこと、また、市場にある製品の、あたりまえ品質のレベルが、製品ごとに、またメーカーごとに同じでないことを、メーカーも、「賢明な」ユーザーも、わかっているのである。日本の電気製品は、こわれない、あたり外れがないというあたりまえ品質で優れているものの、魅力的品質と価格を含めた市場品質で後れをとったといえよう。 ユーザーが求める品質は製品、用途、ユーザーによって異なるから、あたりまえ品質の品質を保証するレベルも一様ではない。必要以上に品質保証レベルを高めるのはコスト高をまねき、競争力低下につながる。 図2 は、電子機器を要求される信頼度と生産数量によってゾーン分けした図である3)。 Aゾーンは、大量生産されるスマホ、タブレットなどの携帯機器や家電であり、信頼度より魅力的な機能や価格が優先するゾーンである。 Bゾーンは、大量生産品であっても欠陥があれば人命にかかわる自動車や医療関連機器などで、特に高い信頼度が要求される。 Cゾーンは、基本的に多品種少量生産であるがやはり高い信頼度が要求される分野で、交通、通信などの社会インフラ基幹システムがここに入る。 以下、電子回路の品質項目とその管理方法が、製品ゾーンによりどう異なるかをプリント配線板、実装基板別に概観する。小林技術事務所図2 電子機器の信頼度と生産数量によるゾーン分け