ブックタイトル実装技術2月号2014年特別編集版
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実装技術2月号2014年特別編集版
12検査技術12 非球面レンズの利用の概論開発過程の概略 非球面形状は、英語でasphericと書かれるとおり、元来は「擬似球面」の意味をもつものと解される。すなわち、球面レンズを使用すると、レンズの縁に近い近軸光線から外れた部分では入射光線に対する曲率が強いため、光束は極端に屈折するか、全反射を起こす事が考えられる。 このような高角度で入射する光束に対しては、たとえば双曲面のように周辺が直線漸近線に近い弱い曲率に変えてやることにより、屈折角を弱くすることが可能となる。したがって、球面レンズを数枚使って徐々に周辺光束を収束する光学系を、たとえばたった1 枚の双曲面形状の非球面レンズにより集光する、すぐれた光学特性にもたらすことが可能になる。 当社がすぐれた非球面レンズ開発するにいたったのには、以下のような経緯がある。 筆者はそれまで、薄膜光学、結晶物理学、物性物理学などの研究分野及び機械工学、機構設計、重機械などの多岐の分野で製品開発を進めてきたのだが、医療機器メーカーでのアルバイトをした時に早稲田大学の修士論文の学生を指導し、計算機片手にまったくの独学でレンズ設計に立ち向かうことになった。これは当時としてはまったく新しい分野で、内視鏡で肺がんの細胞を見ながら、同時にYAGレーザ光線を石英光ファイバ導光して肺がんを焼き切る、というテーマであった。この時、球面レンズを用いてレーザ光を集光すると効率よくファイバ内に導光することができず、石英ファイバを水冷して発熱を防ぐ方法を採用していた。著者が設計した非球面石英レンズを用いると、一昼夜以上、冷却なしにYAGレーザ光を導光することが可能になった。1980年の『Applied Optics』の特集号に掲載された論文は、世界にさきがけ卓上旋盤で非球面レンズを研削したもので、その形状は人間の眼と同様な形の回転双曲面をしており、レンズ一枚で視野角が180°の広角特性をもっている。 このレンズは、医療用マイクロレンズ、CCDカメラ用レンズ用に高被写界深度特性をもつものとして開発してきたが、すべてわずか1、2枚のレンズ構成からなる、すぐれた光学的性能をもつものである。これらは、りそな財団、日刊工業新聞社、市村財団の賞を受賞をはじめ、5 件のベンチャー賞を受賞してきた。 CCDカメラ用レンズの特色は、概して、以下のようなものである。 ①高光学特性:解像度(10 ~2 μ m)、歪曲収差約1%以 下 ②明るいF値により通常の室内照明で高倍率撮影が可能 ③通常の球面レンズを用いた市販のレンズ系に比して、 特に被写界深度が深い ④軽量、小型化:レンズ外径をφ5mm程度に押さえ、レン ズホルダはレンズを含め1~2g ⑤倍率の広範囲な可変:対物レンズを変えずに、レンズと CCD間の拡張筒の長さの変更により、広範囲に倍率を 買えることができる コンパクトデジタルカメラによる マクロ撮影 15年ほど前に、幕張で開催された展示会において、当時市販されたばかりの某社のデジタルカメラを試し撮りすることができた。そこで、当社製の非球面レンズを1枚、そのデジタルカメラに貼り付け、草むらで、すすきの穂を撮影したところ、穂の中に潜り込んでいる非常に小さい虫を撮影することができた。 その後、私の趣味もあって、環境、水質汚染をテーマに据えて、汚れた河川の状況を超高倍率撮影し、湘南工科大学の卒論研究のテーマとして発表してきた。この際、当社が開発したライトで照射したところ、微生物の写真を、デジタルカメラによって超高倍率撮影でき、最大解像度は1~2μmに達した。デジタルカメラによる高倍率、高精細画像撮影システム(株)オプトハイテック・早稲田大学 / 石附 英昭