ブックタイトル実装技術6月号2013年特別編集版

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概要

実装技術6月号2013年特別編集版

61 ボーイングB787の電気系統についてはボーイング社のHP1)に書かれていますが、以下にその概要を説明します。 B787 のバッテリーは28V(29.6V)、75Ahが8 個で28V、Aとなっているそうです。しかし、これではとても旅客機の使用する莫大な電力はまかなえません。 現代の旅客機は非常に大きな電力を使用します。たとえば、全座席に液晶モニタが設置され、全乗客がオン・デマンドで映画やゲーム、音楽が楽しめるようになっています。また機内照明も全体の照明と、個人個人のスポット照明が用意されています。 エアコンも必要です。 しかし、旅客機の電力の最大使用はギャーレイ(キッチン)です。全乗客に対してフライト中に数回出される食事や飲み物、氷などの冷蔵、加熱調理などに使う電力は膨大なものとなります。数百人分の食事を短時間で加熱調理するための電力は、家庭用に電子レンジなどとは比較になりません。 当然、その他にもレーダや通信機、操縦装置や飛行機の翼や胴体などに付けられたライトなどへの電力も必要です。特にB787ではこれまで油圧やエンジンの排気を利用していた部分の電気化を進め、燃費向上を図っています。このため、B787ではこれまでのボーイング社の旅客機の4倍の電力を使用し、1.5MW の電力を生成しています。これで、燃費を2?3%向上させています(ボーイング社資料より)。 これらの電力はジェットエンジンで発電機を回して115Vまたは200V、400Hzの交流電力を作ります(B787では235V)。これをDC28Vにしてバッテリに充電します(図3)。 航空機ではトラブルは大事故につながるため、絶対的な安全性が求められます。このため、電気系統に対しても2重以上の系統が求められ、バッテリは主にエンジンや発電機が停止した場合のバックアップとして用いられます。 大きな機体の中をいろいろな系統で接続されるハーネスは膨大なものとなり、B787のハーネスは全長112Kmにもなるといわれています。信号の高速化、ハーネスの軽量化を目的に銅線によるハーネスから、光ケーブルによる機内通信が検討されフライ・バイ・ワイヤからフライ・バイ・ライト(Fly-by-Light)への移行も考えられています。3.車載ハーネス 自動車も近年、電気化が急速に進みハーネスが多くなってきました。 自動車もやはり昔はメカや油圧ですべての制御を行っていました。自動車のハーネスはランプ類やオーディオなどに限られていました。1980年代半ばからエンジンの電子コントロールが研究され始め、1990 年代になり実用化が始まりました。特に排ガス規制などにより、燃料と空気の比率や発火タイミングのコントロールなどエンジンやギアの最適制御が必要でした。 このため多くのセンサやコントローラ(電子制御ユニット=ECU(Electronic ControlUnit))が必要となり、これらのインタフェイスも共通規格化されました(図4)。 その後、自動車のエレクトロニクス化は急速に普及化とその使用範囲を広げ、目的と適用範囲に応じていくつかの分野で各々規格化が行われました。前田真一の最新実装技術 あれこれ塾図3 ボーイング787 の電気システム(ボーイング社HPより)図4 カーエレクトロニクス(泉谷渉『図解 半導体ハンドブック』東洋経済新聞社より)