ブックタイトル実装技術6月号2013年特別編集版
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実装技術6月号2013年特別編集版
60これあれ塾前田真一の最新実装技術連 載第27回 B787とハーネス1.注目を集めるボストン 今年に入って、筆者の本拠地であるボストンが、特に日本で(それも悪いほうで)注目を集めています。 まず最大のユースはボストンマラソンを狙った圧力釜爆弾によるテロと、そのあとに続く犯人と警官隊の銃撃戦です。筆者の家はボストンから高速道路で30分以上あるニューハンプシャー州なのですが、犯人が自動車で逃走した場合銃撃戦に巻き込まれる恐れがあるということで、この地域の公立学校は休校になりました。 これまでのボストンはハーバード大学やMIT(マサチューセッツ工科大学)など一流校が集まるアメリカ東部の学園都市で、古くて落ち着いた美しい町というイメージがあり、またニューヨークやロサンジェルスに比べればマイナーなイメージでした。 日本とボストンを結ぶ直行便もありませんでした。今年になってやっと、成田?ボストンの直行定期便が日本航空によって開設されるようになりましたが、それに使用する機体がボーイングB787(図1)であり、定期便が就航する前、1月にJAL のB787がボストン空港で出火事故を起こしました(図2)。 これが、その後半年に及ぶB787 のバッテリ問題が公のニュースになる初めでした。その後、ANA のB787が飛行中にバッテリから発煙し大問題になったのはごぞんじのとおりです。 結局、バッテリが発火した故障メカニズムはまだ不明ですが、可能性のあるトラブルへの対策をすべて施したということで飛行が再開されることになりました。 これは知見のある専門家が集まり、B787のバッテリがトラブルを起こす可能性を洗い出す、という作業を行い、現実的にはありえないと考えられるものまでを含め、80 項目を考え出しました。そして、これらの項目への対処や、考えられなかった原因によるバッテリトラブルに対しても事故にならないような対策など、17 項目の改修を施すというものです。 このようなアプローチによる製品の安全性確保の手法や安全性の評価についても興味がありますが、ここでは航空機の電気系統について考えて見ましょう。2.航空機の電気系統 第2次世界大戦の頃までは、航空機には電気は使われていませんでした。 第2次世界大戦中に、通信機とレーダの発達により、やっと航空機にも電気が必要となりました。 その後、マイクロプロセッサの進歩により、飛行機の操縦補助としてコンピュータ制御が取り入れられるようになり、一気に航空機のエレクトロニクス化が進みました。 このようなコンピュータ制御による操縦の補助を『フライ・バイ・ワイヤ=Fly-by-Wire』と呼びます。 特に、操縦の感性を大事にする戦闘機に取って、操縦桿の微妙なコントロールや操縦桿の重さの変化などそれまでの操縦感覚をいかに保ったままコンピュータ制御に移行するか、マン・マシン・インターフェイスの開発が大変であったといわれています。 現在、航空機では操縦の電子制御は当たり前ですが、多くの乗客に快適な空の旅を提供する旅客機では電気は特に重要となっています。 航空機の居住性の良し悪しは民間航空にとっては経済性と並び、最大の要素です。 B787は、この経済性と乗客の居住性が両立してすぐれていることから航空各社が導入に積極的であった航空機です。 B787 の経済性と乗客の居住性がすぐれている理由の大きな要素が電気化にありました。図1 ボーイング787(ボーイング社HPより)図2 ボストン空港で発火したJAL のB787バッテリ(NSTB公開資料)