ブックタイトル実装技術6月号2013年特別編集版
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実装技術6月号2013年特別編集版
45合計2986 個が使用されている。自己チェック機能がついているため、リレーが誤作動を起こせばただちに停止し、自動的にリトライを行うので、簡単な障害を自ら復旧させることができる。 同社では、このFACOM138Aと静岡県沼津工場の1959年製FACOM128Bを今後も稼動維持させるための『延命化プロジェクト』を立ち上げ、現在3名しかいないリレー式計算機に携わってきたエンジニアOBが伝承者として、技術継承者として自ら名乗り出た若者に伝えている。 富士通のコンピュータを語る上で忘れてはならない人物が故・池田敏雄氏である(写真5)。池田氏の、明るくて大らかな人柄と豊かな発想や独創性が今日のコンピュータの歴史を作った、とされている。同氏は、コンピュータ開発にのめりこむと寝食も忘れ、新しいアイデアが浮かんで思考が集中すると出社することも忘れて、何日も自宅にこもったり、会社に泊まりこんだりなど研究に没頭した人物で、FACOM開発の初期を「震えるほどの感動と緊迫感と楽しさの時代」と語っている。残念ながら1974 年に51 歳という若さで逝去された。なお、同氏やスパコンを紹介する池田記念室が沼津工場にある。 1960 年代に入ると、電信、電話に継ぐ『第3 の通信方式』として、電子計算機を活用したデータ通信システムの開発が着目され、日興証券(株)(現・SMBC日興証券(株))との共同開発の末、1964 年、国内初(※)のデータ通信システム、全電子式電信交換システム『FACOM323』を完成させた。 1976 年に完成した国内初(※)のスパコン『FACOM230-75アレイプロセッサ』は、大規模な科学技術計算用の超高速性能コンピュータとして開発された。原子力工学や流体力学などは化学技術計算ではアレイ(ベクトルやマトリクス)の計算が中心となるが、同機ではアレイプロセッサを採用したため、当時の最上位機『FACOM230-75』最大30 倍の処理能力を誇った。 1980年には超高速半導体素子HEMTの開発に成功。HEMTは高速・雑音性にすぐれたトランジスタで処理速度が高速のため、連続してデータ処理が必要となる自動車レーダシステム、携帯の基地局、カーナビに使われている。 1981年にはPC『FM-8』を開発し、世界で始めてLSI64kbyteダイナミックRAMをメインメモリとして搭載した(※)。この頃のPCはゲームなどホビーユース中心で、フロッピーディスクも高額だったため、データ保存には音楽用カセットテープを使用していた。その後、オフィスでPCの使用が定着してくると、営業向けにポータブルなものが欲しいという要求から、1985年に国内初(※)のポータブルPC『FM 16π』が開発され、PCの利用用途が拡大されていった。このPCはA4サイズで2.9kgと当時としては画期的な軽量化を実現している。 携帯電話の原型は1979 年には登場している。1985 年にはショルダーホン、1988 年にアナログ電話、1993年にデジタル携帯電話が登場し、データ通信も1992 年から開始した。 1970 年代から海底通信システムの開発も行っている。最新の長距離光伝送技術を取り入れた海底通信システムは膨大な情報を正確に世界に送ることができ、音声だけでなく、動画配信を含むインターネットやテレビ中継の国際通信の大部分(95%以上)がこの海底通信システムを利用している。 1995 年には世界で初めて42インチプラズマディスプレイを商品化した(※)。初期は少ない色数しか表現できないものを1989年に多色表示開発に成功し、そして、この42インチプラズマディスプレイの技術は、今日のプラズマディスプレイ製品の基本技術で、業界標準となった。 最後に大型コンピュータのCPUの歴史が語られている(写真6)。 今回紹介できなかった『Now &Future Zone?新たな発想でよりよい社会を? 』は、携帯電話やPCをはじめ、社会の発展に貢献していく様々な分野の興味深い最新技術を展示している。 以前にもこの資料館を見学させていただいたことがあるが、訪れる度に内容が充実してきている。残念ながらこの資料館は一般公開はされていないので、ぜひ富士通の人にお願いして見学してみよう。(文責 ・ 太田 幸恵)(文中の※印はいずれも同社調べ)1)富士通テクノロジーホール (http://jp.fujitsu.com/facilities/kawasaki/ exhibition/)写真5 コンピュータ開発のパイオニア故・池田敏雄氏の写真と当時の図面など写真6 CPUの変遷