実装技術6月号2012年特別編集版 page 33/54
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31ガラスエポキシ銅張積層板(FR-4)の再区分化を考える高品質なプリント配線板製造を実現する34 CSDSでの攻防 最終製品の安全性を維持しつつ分割案もNONANSI化も避けたい業界としては、 ①まずはNON-ANSI化....
31ガラスエポキシ銅張積層板(FR-4)の再区分化を考える高品質なプリント配線板製造を実現する34 CSDSでの攻防 最終製品の安全性を維持しつつ分割案もNONANSI化も避けたい業界としては、 ①まずはNON-ANSI化の根拠となっているUL74 6E の2001 年改訂版を、現在行われている手続 きでこれまで通りFR-4 ANSI が取得できるよ うに明文化した ②あわせて登録済みの赤外線吸収スペクトル(IR) チャートそのもの自体が古い材料であり、高性能 FR-4の製造にはほぼ用いることができないこと から、IR 登録そのものを廃止(ただし『伝統的な FR-4』についてはこれまで通りの製造が可能で あるという迂回路は残した)するという2つの改 正点を骨子とした改正案を2011年2月のSTP 会議で提案し、その案を電子投票システムの CSDS に上程することで、国際投票の道を選ん だ。日本票だけでは成立が難しいため、アジア地 域を中心に賛同票を呼び掛けた(図1) 一方、UL は同じSTP 会議の場でFR-4 の5 分割を提示し、これら2 つの相反する提案が同時にCSDS上で投票されることとなった。混乱を避けるため、まずは日本提案が最初に投票にかけられ、UL 案はその後の投票となった。 両陣営が懸命の多数派工作をつくし、まず日本提案の投票が2011 年の後半から開始され、投票期間の延長の後、13 対15 で否決された。 なお、あらかじめ断わっておくと、STP、CSDS とも、UL によって用意されたもので、人員構成などもUL 自身で決められるというきわめて私的な仕組みであり、いわば絶対強大で、ホームの存在しないアウェイ勝負である。 次いでUL の分割案が2012 年2 月からスタートした。これも投票期限の延長を経て、2012 年4 月上旬に決着し、15対15同数『否決』となった。この間、いろいろなことがあったが、本誌ではあえて言及しない。この2 回の投票の間、『NON-ANSI』を突き付けられた状況下にあっても日本、韓国、台湾の3 カ国は一糸乱れず、UL 案への反対票を投じたことは特筆に値する。また、UL 発足以来、UL 案が『否決』されたことは初めての経験ではなかろうか。UL の衝撃は測りしえないものがあったと想像する。 結果として日本案、UL 案両方とも否決されたが、これはつまり、FR-4問題がいまだに解決しておらず、安全問題に関して両者での考え方の相違が今も続いているということである。 FR-4問題を考える そもそもFR-4問題とは何であるかを考えてみたい。 1968 年にグレードが制定されたFR-4 であるが、この間に多くの材料的開発が行われ、現在、実に多くの種類の『FR-4』が市場に存在することは事実である。国際規格であるIEC や米国団体規格であるIPCにもFR-4 に相当する規格があり、各製品の性能差をスラッシュシートという形式や類似形式で分類しているが、どちらも種類が増え続け、混迷をきたしているのが実態である。では、UL の唱える分割案が正しいのであろうか。 UL が提唱したものの世界から否決された分割案というのは、最終的には化学組成を基とした分類であり、単なる分割ではなく、実質的な新グレードの創設であることは前に指摘したとおりである。古くはFR-5(高ガラス転移温度(Tg)型)、今後はGPY(ポリイミド系)など、本来はFR-4の後を継いで高性能グレードへと発展していくという過去の動きは、現在の市場ではまったく違う動きになっている。実際、これらの上位グレードは、一般基板市場ではすでにほとんど採用されておらず、FR-4 だけがいろいろな特性を付加され、大きく市場を伸ばしている。このことは、合成樹脂工業協会(JTPIA)図1 STPに先立つIAGでFR-4は一つで運用すべきと主張している(筆者)