実装技術5月号2012年特別編集版

実装技術5月号2012年特別編集版 page 22/40

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20『地球環境』を守るための施策を探るものづくりにおける環境対応の諸動向を探るNPO 法人 日本環境技術推進機構 横浜支部6決議した。つまり、原子力発電によって電気エネルギーを得るのではなく、別の道を歩むこ....

20『地球環境』を守るための施策を探るものづくりにおける環境対応の諸動向を探るNPO 法人 日本環境技術推進機構 横浜支部6決議した。つまり、原子力発電によって電気エネルギーを得るのではなく、別の道を歩むことになった。そのためデンマークは原子力発電機を1 基も保有していない国である。 1986年のチェルノブイリ事故の前年にデンマークは原子力発電ではなく、再生可能エネルギーによる道を選んだのだ。そこで登場したのが平地と長い海岸線を利用しての『風力発電』である。早くから風力発電に注力したためデンマークには風力発電の優秀な企業が育っている。 1981 年12 月、『エネルギー計画1981 年』ではエネルギーの効率的利用の促進、エネルギー源の分散化の促進などを発表するとともに、1982 年4 月には、北海油田の開発に力をいれることを決議し、15 カ所の採掘の許可を出すまでになった。1992年になると北海油田の開発に成功し、石油の純輸出国となったのである。 さらに1996 年に、『エネルギー21」では、 ① 2030 年までに海上風力発電所を合計400 万  キロワット建設 ② 2000 年の設備量170 万キロワットと合わせ  て電力消費量の50 %を風力発電で賄うといった計画を立てたのである。 2005 年8 月頃には、風力発電機の導入は5,325基にも達し、約7 割は市民が参加した組合方式で運営している風力発電機となっている。2008 年になるとデンマークのエネルギー自給率は130 %になり、電力はノルウェーやドイツに輸出するまでになった。 エネルギー自給率2 %であった国が、今や130 %の自給率となったのである。方針を決めて目標向けて努力してそれを見事に達成したのである。 デンマークは小さな国である。そのため、風力発電によって得た電力は不安定な電力であるという問題を抱えてはいるものの、陸続きという地の利を活かして、欧州の巨大電力市場に風力発電した電力を販売することによって相殺している。つまりデンマークは、海外に輸出した風力発電電力よりも多くの安定電力を海外から購入しているのである。国内は変動で処理できない約8 割程度の風力で得た電力を海外に廉価で販売し、その代わりに安定した電力を海外から購入して自国用に消費しているのである。それゆえ、風力発電を高めても、その変動を自国内で吸収するのではなく、欧州の全体の中で吸収するといった仕組みを活用している。 水力発電も保有できないハンディを持ちながら、原子力発電を保有していなくてもエネルギー自給率を130 %(2008 年)までなったその努力を見習わなければならない。もちろん、デンマークは555 万人の人口であり、日本と比較すると規模が小さいという点はあるものの、その実績には頭がさがる12)。2. デンマークに学んだクリーンエネルギーの町『葛巻』 このデンマークの取り組みを参考にしてエネルギー自給率を78 %までに高めた町が、日本にある。『北緯40 度 ミルクとワインとクリーンエネルギーの町』として知られる岩手県葛巻町である。 主な産業は酪農で、人口8,200 人で面積の9 割が山林で占める町である。人間よりも牛の数の方が多く、1.1 万頭の乳牛が飼育され、東北一の酪農郷である。葛巻町は、地域の資源を宝に、自然の恵みを生かした『ミルクとワインとクリーンエネルギー』に取り組み、地球規模での課題である『食料・環境・エネルギー』の問題解決に挑んだユニークな町である。 風力、太陽光、木質、メタンの4 つのエネルギーを活かしての活動の成果が、この町にある。葛巻にはデンマークを見習って15 基のデンマーク製の風力発電設備を導入し、さらに太陽光発電設備も導入している。また、間伐材の8 割は山に捨てられていたが、から松の間伐材を使った木質系バイオマスガス発電設備も導入して森林資源を有効に活用している。さらに、くずまき高原牧場では乳牛の糞尿があり、その糞尿を利用してのメタンを発生してのバイオガス発電設備なども導入されている。 その結果、電力自給率は180 %となり、余った電気は売電している。エネルギー全体の自給率はなんと78 %、食料自給率は200 %にもなっている町なのである。食料自給率は39 %となった日本の現状を見るにつけ葛巻の取り組みには大いに参考となる12)。    資源を活用して地球を守る エネルギー自給率がわずか2 %であったデンマークは、その努力によって今やエネルギー自給率は