実装技術3月号2012年試読

実装技術3月号2012年試読 page 23/26

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51より、CPUチップの発熱量そのものをコントロールします。 放熱用ファンはもちろん、ヒートシンクの大きさにも大きな制約がある携帯機器では、CPU の稼働率のコントロールがよく使われます。3. 熱解析の位置付け ....

51より、CPUチップの発熱量そのものをコントロールします。 放熱用ファンはもちろん、ヒートシンクの大きさにも大きな制約がある携帯機器では、CPU の稼働率のコントロールがよく使われます。3. 熱解析の位置付け 熱解析の目的は、与えられた条件の中で最小のコストでICを最大のパフォーマンスで動作させることにあります。良い熱設計がおこなわれず、熱のため常にICが稼働率の低い状態での動作しかできない機器では、高性能なICを使う意味がありません。このような機器では、最高性能は多少、劣っても発熱量が少ないICを使った方が高性能なICを使うよりセットのパフォーマンスが高くなります(図3)。 当然、熱設計が適切で、高性能なICが充分な速度で稼働できる機器であれば、ICの能力に見合ったパフォーマンスが得られます。熱設計は機器のパフォーマンスを決定するのです。特に携帯電子機器ではバッテリの持続時間、機器の大きさ、コストが大きく熱設計に関わってきます。 このような機器では、IC の各動作モードによる消費電力の変化と稼働率を加味しながら、ダイナミックな熱解析を行う必要があります。ICは常に同じ熱量を発生しているわけではなく、動作モードや扱うデータにより、常に消費電力は変化しています。 熱設計は常に最大稼働での発熱量に対応するのではなく、どの程度のパフォーマンスまでの対応をするのかを見極めて最適設計をする必要があります。このような精度の高い設計をおこなうためには熱シミュレーションのためにICの精度の高い消費電流モデルが必要となります。4. 熱と電気特性 熱は単に機器を熱くさせて、低温やけどや、利用者に不快感を感じさせたり、IC の破壊や寿命の短縮を招くなど、直接の影響を及ぼすだけではありません。熱は、ICや基板の電気的な特性にも大きな影響を及ぼします。 銅を始めとする金属の抵抗値は温度に依存します。温度が高くなれば、抵抗率は高くなります(表1)。 IC の温度が高くなると、IC 内部配線の抵抗が上昇して、さらに消費電力と発熱が大きくなります。また、IC の発熱のため、基板配線の銅が高温になると配線の直流抵抗が高くなり、信号の損失が大きくなります。IC の電源供給ネットの抵抗が大きくなると、配線での電圧降下が大きくなり、IC の電源電圧が低下します。多くのCPUやASICではIC の電源電圧はセンサが監視しているので、電源の出力電圧を上げ、IC の電源電圧が変動しないようにしていますが、電源の出力が増大し、配線での発熱も増えます。最近では、熱解析ソフトと電源電圧ソフトが連動して、熱による銅の特性変化の影響を解析するソフトも出現しています。 また、高速信号に対しては、抵抗分による損失の増大だけではなく、基板材料が温度変化により誘電率と誘電損失が変化します(図4)。このため、高速信号では、波形が配線の局所的な温度変化により影響を受けます。前田真一の最新実装技術 あれこれ塾図4 誘電体特性の周波数依存性(Simbrien 社資料)表1 金属の抵抗率の温度依存性